今日の続々編日記は、松竹映画『男はつらいよ第25作 寅次郎ハイビスカスの花』(1980年製作 山田洋次監督 渥美清 倍賞千恵子 浅丘ルリ子主演)のことです。
この映画では、故郷の柴又に帰った寅次郎にクラブ歌手リリーからの手紙が届きます。彼女は、沖縄のクラブで歌っていたが、急病で倒れ、入院中で「ひと目寅さんに逢いたい」と知らせてきたのです。そして、飛行機嫌いの寅次郎が、何とか沖縄に辿り着き、五年振りにリリーと再会します。添付した写真は、沖縄の病院で再会した二人です。
この映画での二人の関係を、山田洋次監督は著書『男はつらいよ 寅さん読本』(寅さん倶楽部編 1992年PHP研究所刊)で次のように興味深く語っています。
『ほかの女優さんたちのマドンナも素敵だったけど、浅丘さんの「リリー」が際立っていたのは、寅さんと近い境遇にいたからだと思うのです。定住する家を持たない。年中旅をしている。もしどこか旅先で病気になっても、そのまま死んでしまうかもしれないという不安と寂しさをいつも持っている。そういう点で、彼女は寅さんとピタリと合っているような気がします。そして、そのことが逆に寅さんを苦しめることにもなるのです。もともと定住することを拒否した二人が一緒になることで、定住する気持ちが生まれてしまう。それで二人はいったい幸せなのかと言えば、自信がない。そういう微妙な気持ちの揺れ動きみたいなものを、この「寅次郎ハイビスカスの花」では描きたかったのです。』
この山田監督が語った言葉の通り、映画終盤で寅は唐突にリリーへ『どうだ、リリー、俺と所帯持つか?』とプロポーズをしてみせます。でも、きょとんとしたリリーは、プッと吹き出しながら、『いやねえ、寅さん変な冗談言って、みんな真に受けるわと!』と言葉を返します。寅も無理して笑いながら『そうか、この家は堅気の家だったな!』と相槌を打ちます。この場面の寅とリリーを観ていると、私はとても悲しく切なくなります。
そして、この二人の関係は、シリーズ最終作になると覚悟したリリー役の浅丘ルリ子が山田監督に映画で「リリーと寅を結婚させてほしい」と懇願しても変わらず、最終作品『寅次郎 紅の花』まで同じように続くのです。でも、この山田監督の二人の関係への強い拘りが、車寅次郎を皆に愛され続ける「永遠の風来坊」にまで昇華させたのです。
この映画では、故郷の柴又に帰った寅次郎にクラブ歌手リリーからの手紙が届きます。彼女は、沖縄のクラブで歌っていたが、急病で倒れ、入院中で「ひと目寅さんに逢いたい」と知らせてきたのです。そして、飛行機嫌いの寅次郎が、何とか沖縄に辿り着き、五年振りにリリーと再会します。添付した写真は、沖縄の病院で再会した二人です。
この映画での二人の関係を、山田洋次監督は著書『男はつらいよ 寅さん読本』(寅さん倶楽部編 1992年PHP研究所刊)で次のように興味深く語っています。
『ほかの女優さんたちのマドンナも素敵だったけど、浅丘さんの「リリー」が際立っていたのは、寅さんと近い境遇にいたからだと思うのです。定住する家を持たない。年中旅をしている。もしどこか旅先で病気になっても、そのまま死んでしまうかもしれないという不安と寂しさをいつも持っている。そういう点で、彼女は寅さんとピタリと合っているような気がします。そして、そのことが逆に寅さんを苦しめることにもなるのです。もともと定住することを拒否した二人が一緒になることで、定住する気持ちが生まれてしまう。それで二人はいったい幸せなのかと言えば、自信がない。そういう微妙な気持ちの揺れ動きみたいなものを、この「寅次郎ハイビスカスの花」では描きたかったのです。』
この山田監督が語った言葉の通り、映画終盤で寅は唐突にリリーへ『どうだ、リリー、俺と所帯持つか?』とプロポーズをしてみせます。でも、きょとんとしたリリーは、プッと吹き出しながら、『いやねえ、寅さん変な冗談言って、みんな真に受けるわと!』と言葉を返します。寅も無理して笑いながら『そうか、この家は堅気の家だったな!』と相槌を打ちます。この場面の寅とリリーを観ていると、私はとても悲しく切なくなります。
そして、この二人の関係は、シリーズ最終作になると覚悟したリリー役の浅丘ルリ子が山田監督に映画で「リリーと寅を結婚させてほしい」と懇願しても変わらず、最終作品『寅次郎 紅の花』まで同じように続くのです。でも、この山田監督の二人の関係への強い拘りが、車寅次郎を皆に愛され続ける「永遠の風来坊」にまで昇華させたのです。