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天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

『男はつらいよ寅次郎相合い傘』寅は相合傘の仲リリーを頭が良く気性強いしっかり女、俺とくっついたら不幸

2011-03-20 08:44:09 | 日記
今日の日記は、お茶の間鑑賞している松竹映画『男はつらいよ第15作 寅次郎相合い傘』(1975年製作 山田洋次監督 渥美清 倍賞千恵子 浅丘ルリ子主演)のことです。
この映画は、第11作『寅次郎忘れな草』の2年後に封切りされたリリー篇の第2作目です。寅次郎(渥美清)は北海道の函館の屋台ラーメン屋でリリー(浅丘ルリ子)と再会します。そして、二人は、一緒にいた中年サラリーマン(船越英二)と北海道の各地(長万部・札幌・小樽)を転々と旅をします。
でも、中年サラリーマンの初恋の人を巡り、二人は仲たがいをしてしまいます。その二人の会話を引用・掲載します。
・リリー『幸せにしてやる?大きなお世話だよ。女が幸せになるには男の力を借りなきゃいけないとでも思ってんのかい。笑わせないでよ!』
・寅『でもさ、女の幸せは男次第じゃねえのか?』
・リリー『へーえ、初耳だねえ。私今までに一度だってそんなふうに思った事ないね。もしあんた方がそう思ってんだとしたら、それは男の思い上りってもんだよ!」
・寅『可愛げがないねえ、お前って女は』
・リリー『女がどうして可愛くなくちゃいけないんだい。寅さんね、あんたそんなふうだから、年がら年中女に振られてばかりいるんだよ!』・・
・寅『じゃ、こっちも言うけどな、お前何だ!寿司屋の亭主(私注:第11作で毒蝮三太夫扮する)と別れてやった、なんて体裁のいいこと言いやがって、本当のとこは捨てられたんだろう!』
・リリー『(寅を睨み、大粒の涙を流しながら)寅さん、あんたまでがそんな口をーあんただけはそんなふうに考えないと思ってたんだけどなあ・・』
その後、怒ったリリーは寅と中年サラリーマンをその場に残して立ち去ってしまいます。このシーンで、私はリリーの男から自立しようと、必死にもがく悲しい女性の姿に強く胸を打ちました。
でも、葛飾柴又に戻った失意の寅が、とらやで再びリリーと出会います。『もうお前には一生赦してもらえねえと思った』と寅は謝り、リリーは『馬鹿ねえ、私そんな女じゃないわよ!』と答えて、二人はお互いに仲直りをします。そして、二人はすっかり恋人同士のようになり、とらや2階に下宿したリリーを仕事場まで送る為、一緒に出かけるまでになります。そんな様子を、ある日、寅は博に次のように語ります。
『今、リリーを送ってキャバレーの楽屋口まで行って来たんだけどな、驚いたよ博、「ゴールデン歌麿」なんていうから、どんな立派なとこかと思ってたら、この店ぐれえの建物で、ホステスはみんな婆ァよ。ひでえな、あれじゃあんまりリリーが可哀相だ、俺、涙が出ちゃったよ』
そんな想いを持つ寅は、ある夜突然降り始めた雨で、柴又駅でリリーの帰りを待ちます。そして、柴又駅から出て来たリリーが夜空を見上げ困った表情を浮かべますが、ふと駅前の片隅に眼をやり、嬉しそうな表情を見せます。とらやの傘を手に、寅がソッポを向いて立っていたからです。リリーは駆け出して、寅の傘の中に入ります。添付した写真は、その映画のシーンです。二人は、相合い傘で仲良く肩を並べてとらやに帰ります。寅さんシリーズでも屈指の名場面です。
リリーのようなキャバレー歌手や一緒に出演しているヌードダンサーの女性たちには、仕事場へ送迎する男(彼女らのヒモみたいな存在)がいます。そして、その男の中で、寅ほどその女性を心から想っている人間はいないと、この場面を観て私は確信しました。そして、少なくとも寅はリリーのヒモではなく、妹さくらに『頭がよくて気性の強いしっかりした女よ。俺みてえな馬鹿とくっついて幸せなわけがねえじゃねえか!』と語り自ら身を引く自分の性根を弁えた潔い男です。
だから、この映画は、寅さんシリーズの中でも、とても感動的な作品です。

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