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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北方領土問題をなお追って

2016-10-07 20:25:22 | 講演・講義・フォーラム等
 北大の岩下教授の言説はいつも刺激的であり、なかなか興味深い。前夜の道新フォーラムに登壇したモスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ氏と岩下明裕氏が互いの見解を述べ合うセミナーに参加し、両者の言に耳を傾けた。 

                    

 10月5日(水)夜に開催された道新セミナーの会場で、「北方領土問題 日露の認識と関係を問い直す」ドミトリー・ストレリツォフ VS 岩下明裕会場は北大スラブ・ユーラシア研究センター(通称:スラブ研)で、というパンフが配布された。
 開催は翌6日(木)の16時30分からだった。私はこの日、18時30分開始の別の講座の受講を予定していたが、前半部分だけでもと受講を決めた。
 というのも、岩下明裕北大教授は、北方領土問題をはじめ、ボーダー(国境)研究を専門とされ、積極的な発言を続ける研究者として注目される存在の方で、氏がどのような発言をされるのか興味があったからである。

            

 セミナーはまず、ドミトリー氏がロシア側から見た北方領土問題について語った。
 それによると、ロシアにおいては昨年暮れまで日露関係の発展や変転はない、という悲観的な見方が大勢を占めていたという。ところがロシアのアジア政策におけるパートナー的立場だった中国との関係にひびが入り始めたことから、ロシアにおける日本の地位が飛躍的に高まったということだ。それに伴い、ロシア世論の北方領土問題に対する見方にも少しずつ変化がみられるようになってきたそうだ。

 そうした背景の中で、ドミトリー氏が12月の安倍・プーチン会談で、ロシア側から見て考えられる結末には次の3点が考えられるとした。
 ①56宣言を受け入れて平和条約を締結する。(この受け入れということについては、ロシア側は2島返還で最終合意とし、日本側は残る2島は継続交渉という曖昧な合意)
 ②継続交渉の確認(現状維持)
 ③交渉決裂

            

 さて、注目の岩下氏の発言であるが、岩下氏はある意味センセーショナルに次のように冒頭に発言した。
 それは、今般の安倍首相の動きは、個人の意思が見え見えであると喝破した。つまり、安倍首相にとって祖父である岸元首相が日米安保体制を確立し、叔父である佐藤元首相が沖縄返還を成し遂げたことが意識下に相当強くあり、自分の代で北方領土問題を解決したいとの思いが相当に強いのではないか、と発言された。

 そうした首相の意欲があったとしても岩下氏はこの問題については悲観的な見方のようだ。つまり、日本の世論ともなっていない(日本は四島一括返還論が主流?)二島返還でも、ロシアがイエスというだろうかと疑問を呈した。例え、二島返還容認論にロシアが転じたとしても、プーチンは条件付き二島返還を持ち出すのではないか?しかし、日本にとって残る二島を諦めるという選択肢(現状では難しいと言う)がないかぎり平和条約締結は難しいのではないか、と述べた。

 そして岩下氏は、根拠のない(というようなニュアンスで述べられた)予想として、安倍・プーチン会談の結末を次のように予想した。
 ①平和条約締結に向けた加速度的協議を継続するという合意
 ②国後・択捉は継続へ、歯舞・色丹はもうすぐ返還というムードを醸し出す
 ③他のさまざまな協力関係を築く

            
            ※ 北方領土問題が俄かに関心を呼んでいる問題と見えて、テレビ局が2社も入って取材をしていた。

 領土問題というのは、私が言うまでもなく国の根幹をなす問題である。簡単に事が運ぶとは思われないが、日ソ共同宣言後60年を経て、未だ正式に四島の帰属が決まらないというのも異常な状態である。
 果たして異常な状態を脱して、平和的な解決策が見つかるのだろうか?北海道民の一人として、すぐ近くにある北方領土問題の行く末を注視していきたいと思う。