この「札幌誕生」は率直に面白かった!遅読の私が557頁の長編を一気に読み終えることができた。札幌創成期に関わった5人の偉人について著者の視点から綴ったものである。札幌誕生の秘話をまた一つ私の中に加えることができた。


門井慶喜著「札幌誕生」は、北海道新聞に連載として2023年から今年1月かけて掲載されたものです。北海道新聞の購読者である私は当初こそ読んでいたのですが、新聞小説を読む習慣のない私にはいつしか離れてしまいました。
その「札幌誕生」が、4月4日に発売と知って、発売日にさっそく買い求めたのです。
「札幌誕生」には、札幌創成期に関わった次の5人が取り上げられていました。 (掲載順)
◆開拓判官---島義勇
◆ビー・アンビシャス---内村鑑三
◆人の世の星---バチラー八重子
◆流行作家---有島武郎
◆ショートカット---岡崎文吉
なぜ面白かったか?というとまず第一に作者の門井慶喜氏の筆致がとても分かり易かったことがあります。これまで読んでいた「徳川家康」の作者:山岡荘八氏は大正、昭和前期に活躍した作家のため、どうしても私にはどこか違和感を感じながら読み進めた感じがありましたが、門井氏の文章はスーッと私の中に入ってきたように思います。
さらには、各登場人物を語る時にこれまで知られていなかったエピソードが随所に登場し、それがとても興味深かったことがあります。
例えば島義勇の場合、彼は佐賀藩に生まれ、体格の良く、頭脳も優秀で藩校の弘道館を通常より2年早く卒業するほどの秀才でした。ところが藩には義勇と同年代に枝吉神陽という義勇でも全く歯が立たないほどの天才がいたことで義勇は自分に対して自信が持てなかったということです。
その義勇が明治政府から開拓判官として蝦夷開拓を任されたことから、初めて自分の居所、働き甲斐を覚えて、全身全霊で開拓にあたることとなる遠因であったことを知ることができました。
また、義勇は蝦夷開拓にあたって部下に命令するだけでなく、自らも率先して肉体労働の先頭に立って、周りを励まし開拓にあたったということも、この「札幌誕生」で初めて知ることができたことでした。
続いて内村鑑三は、日本のキリスト教思想家として名を成した人ですが、札幌農学校の二期生ととして入学し、周りがクラーク氏の教えに従い、次々とキリスト教に入信する傍ら、内村は最後まで入信に抵抗し続け、半ば同級生たちから強制的に入信の署名をさせられたという逸話もこの本で知ることができました。
さらに岡崎文吉は、湾曲が連続していた石狩川をショートカット(捷水路)方式によって川の周辺地域を洪水被害から救ったことで有名な技師ですが、文吉は当初、自然を大胆に改変するショーツカット方式に反対し、自然をそのまま残し放水路方式によって洪水調節を図ろうと主張し続けました。そして放水路方式の工事を開始したものの、予想を超える難工事と財政難もあり、大局的見地に立ってショートカット方式に主張を変えたことで、今日のような石狩川が出来たそうです。周辺は穀倉地帯に変わり、洪水被害も激減したといいます。
このショートカット方式により石狩川の総延長が当初は364kmあったものが約100kmも短縮され、現在は268kmだそうです。
その他にも、表層的にしか北海道、札幌の歴史について理解していなかった私に、数々のエピソードを紹介してくれた「札幌誕生」は期待していた以上に興味深い一冊となりました。
その「札幌誕生」の作者:門井慶喜氏が明日4月22日(火)に来札し、秋元札幌市長と対談することになっていて、私も会場に駆け付ける予定にしています。
購入した「札幌誕生」を持参し、サインをいただいたこようと思っています。ミーハーですなぁ~。
https://narkejp.hatenablog.com/entry/2025/07/20/060000
札幌在住であれば、格別の読後感だったことと思います。良い機会をいただき、感謝です。
私の投稿で「札幌誕生」を知り、お読みいただいたとのこと、ありがとうございます。
narkejp さんの読後評も読ませていただきました。
私などより、はるかに深くお読みになっていることを伺わせていただきました。
私のような道産子にとっては、取り上げられたいずれの方々も、北海道に非常にかかわりの深い方ばかりで、彼らをさらに深く知るうえで「札幌誕生」は興味深く読むことができた一冊でした。
私は、その後も門井慶喜にどっぷりとはまってしまい、いまだに彼の著書を追い続けています。
近いうちに、彼についての第3弾の投稿をすることにしています。
お読みいただけると幸いです。
今後ともよろしくお願いします。