ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

ミステリー作家の北村薫さんの「うた合わせ 北村薫の百人一首」を再読してます

2016年06月24日 | 
 人気ミステリー作家の北村薫さんの単行本「うた合わせ 北村薫の百人一首」を何回も読み返しています。

 この単行本は新潮社が2016年4月22日に発行したものです。



 この単行本を、東京都内の大手書店に買いに行き、最初は日本のミステリー作家の棚を探し、見つからなかったので、日本の小説家の棚を探しました。

 結局見つかりませんでしたが、後日、同じ大型書店の別のお店の日本のミステリー作家の棚で見つけました。

 早稲田大学文学部を卒業し、埼玉県立春日部高校で国語の教師として勤務されている時に、覆面作家としてデビューした方です。

 文章が上手な点に好感が感じられ、そして読書が大好きというベテラン作家です。

 本書は、2つの現代短歌を冒頭に並べ、その2つの現代短歌をネタにいろいろと、短歌による表現の奥深さを語ります。人間の業の深さを語ります。

 まず、一番驚いた短歌は、

 「夕暮れのゼブラゾーンをビートルズみたいに歩くたったひとりで」 木下龍也

 です。すぐに、ビートルズのLPレコード「アビーロード」のジャケット写真を題材に、ビートルズ4人が横断歩道を渡っていることから唱った短歌だと感じました。

 この解説では、すぐにはこの短歌の解説に入らず木下龍也さんが唱った

 「つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる」という短歌の解説から始まります。

 北村さんは、菓子パンの透明な袋の中に、渦巻き状の菓子パンが入っていて、そのパンの正体は“つむじ風の王子”だと独自に読み取ります。

 とても奇妙な解釈です。一般の方は、ビル風などに菓子パンの開き袋がくるくると回って、つむじ風を具体的に見せてくれていると読み取ります。

 自分の独自の解釈に北村さんは固執し、作者は短歌によって自分の存在を、この世に示そうとしているという説を唱えます。

 ビートルズが4人で渡った横断歩道に似た横断歩道をたった一人で渡る者の胸中の中に、“夕暮れ”が見えると解釈します。

 こんなことも短歌で唱う人がいるのかと、驚いた短歌は

 「サブマリン山田久志のあおぎみる球のゆくへも大阪の空」 吉岡生夫

 です。

 北村さんは、この短歌をきっかけに、若き江夏豊論を展開します。下手投げの投手の山田久志さんが王貞治選手にホームランを打たれたエピソードはほとんど解説しません。

 ほとんど、阪神タイガースの江夏投手の話になります。

 以上の二つの短歌は、歌人はこんなことも題材にするのかと興味を持ち、北村さんはこんな風に奇妙に解釈するにかと感じた短歌です。

 北村さんが選んだ大部分の現代短歌は、愛しい恋の歌や自分の父や母を思う歌です。

 多くの歌人が恋している時の自分の気持ちを素直に吐露しています。

 「はつなつの、うすむらさきの逢瀬なり満開までの日を数へをり」 横山未来子

 「義母義兄義妹義弟があつまりて花野に穴を掘り始めたり」 寺山修司

 この寺山修司の短歌はまったくの想像の世界で、自分の死を賛美しています。

 この北村薫さんの単行本「うた合わせ 北村薫の百人一首」は、4ページ読みきりで、二つの現代短歌を解説します。

 電車などで手持ち無沙汰の時に、4ページ読み切りを数編読むと、人間の生きる業の深さなどを感じて、気分転換(?)になります。

 多くの現代歌人が自分の気持ちを惑わす、複雑な感情に揺れ動かされ、多彩に表現されています。