ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日本経済新聞紙のコラム「ニュース解説」の「トヨタ AIに托す未来」を拝読しました

2016年06月11日 | 日記
 2016年6月9日に発行された日本経済新聞紙の朝刊中面に掲載されたコラム「ニュース解説」の記事「トヨタ AIに托す未来」を拝読しました。

 サブ見出しは「華麗な人脈 グーグルに対抗」です。

 トヨタ自動車が人工知能(AI=Artificial Intelligence)研究に本格的に乗り出すために、2015年11月に米国カリフォルニア州の“シリコンバレー”にトヨタ・リサーチ・インスティチュート(TRI)を設立しました。そのトヨタ・リサーチ・インスティチュートのCOE(最高経営責任者)に、ギル・ブラットさんを採用しています。

 日本経済新聞紙のWeb版である日本経済新聞紙 電子版でも、見出し「トヨタ AIに托す未来 華麗な人脈 グーグルに対抗」として報じています。



 今回、トヨタ自動車が人工知能(AI)研究を本格化するために、その研究拠点トヨタ・リサーチ・インスティチュートを米国カリフォルニア州に設立しました。5年間に約10億ドル(1000億円、1ドル=100円で換算)します。事故を起さない車などの研究開発を担います。

 そのトヨタ・リサーチ・インスティチュートを率いるギル・ブラッドCOEは米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)出身で、米国国防省(DOD)の国防高等研究計画(DARPA)のプログラム・マネージャーなどの経歴の持ち主です。

 ギル・ブラッドCOEが持つ華麗な人脈による優秀な研究・開発者を引きつける事例として、記事の冒頭は、ジェームス・カフナーさんのコメントから始まります。

 「ここトヨタ・リサーチ・インスティチュートで働くことができて興奮しているよ」と語ります。ジェームス・カフナーさんは、元々は米カーネギー・メロン大学の准教授であり、米グーグル(Goggle)のロボット部門長だった有名人です。

 トヨタ・リサーチ・インスティチュート社内を歩くと、人工知能やロボットの一流研究者に次々と遭遇すると説明します。

 トヨタ自動車は、米国グーグル社が公開した自動運転車の試作車の仕様を知って驚きます。この試作車は、運転用のハンドル(ステアリングホイール)、アクセル、ブレーキがなく、ボタンを押すと目的地に向かうものでした。

 自動車メーカーが想定する自動運転車とはまったく異なる発想です。自動車の運転をすべて機械側に委ねることには、トヨタ自動車は慎重な姿勢です。しかし、グーグル社の開発実績や、最近の人工知能の研究科発の進展ぶりから、トヨタ自動車社内で危機感が広がったそうです。

 2014年1月から、トヨタ自動車は人工知能の研究開発の体制整備に着手します。しかし、「米国や欧州などで人工知能の研究開発に携わる人には、トヨタはまったく魅力敵には映っていない」という現実を知ります。

 このため、この人工知能の研究開発分野で有名なギル・ブラッドさんをCOEとして招きます。2015年11月に開催したトヨタ・リサーチ・インスティチュートの設立を発表した記者会見で、トヨタ自動車の豊田章男社長は「大きな財産になる」と、ギル・ブラッドCOEを獲得した成果を語りました。

 ギル・ブラッドさんは、トヨタ・リサーチ・インスティチュートでは、「事故を起さない車の開発」「高齢者をサポートするロボットの開発」「新材料の探索・生産管理システムへの応用」の3テーマを掲げます。

 このため、トヨタ・リサーチ・インスティチュートでは、約200人の研究開発者が働いています。同時に、同社から車で数分離れた所にある、スタンフォード大学とは、教授だけで15人も共同研究を進めている態勢を築いています。

 日本の大学・大学院は、元々、人工知能の研究開発の基盤を研究する理学研究科の物理や数学の専攻の学生数が少なく、また米国の大学・大学院に多数設けられているコンピューター・サイエンス専攻があまりありません。日本では情報科学などといわれている専攻です。

 独断的な解釈ですが、元々、理学研究科の物理や数学の専攻を優秀な成績で出ても、日本企業では普通のソフトウエア開発者として採用されることが多く、日本企業はあまり魅力的な就職対象ではありませんでした。

 この結果、日本では人工知能の研究開発の基盤を担う人材はかなり不足していると判断されています。

 このため、日本を代表する日立製作所も人工知能の研究開発の基盤は、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)などと共同研究に乗り出しました。逆にいえば、日本の大学・大学院には頼めないということです。

 日本での人工知能の研究開発の基盤態勢については、国内ではかなりの危機感が高まっています。