ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日本経済新聞紙の「中小企業 2030年に消滅?社長の年齢、80歳前後に」を拝読しました。

2016年06月07日 | 日記
 2016年6月6日に発行された日本経済新聞紙の朝刊の総合・経済面に掲載された見出し「中小企業 2030年に消滅? 社長の年齢、14年後 80歳前後に」を拝読しました。

 最初は、中身が想像できない見出しだと感じましたが、その記事の中身は衝撃的なものでした。日本の企業数の99パーセント強を占める中小企業を経営する社長の平均年齢は、毎年ほぼ1歳ずつ上がっており、14年後の2030年には約80歳に達するという解説記事です。

 要は、多くの中小企業の社長などの経営者は世代交代がうまくいってなく、次世代の社長候補もあまり出てこないという中身です。現在の日本の“元気の無さ”を示す中身です。

 日本経済新聞紙のWeb版である日本経済新聞 電子版でも、見出し「「中小企業 2030年に消滅? 社長の年齢、14年後 80歳前後に」と伝えてきます。



 この記事では、中小企業の中で従業員数が20人以下の事業者は、2014年までの2年間で廃業が開業を17万社も上回ったそうです。規模が小さい企業が減少傾向を強めています。

 民間機関の調査によると、休業や廃業、解散をした企業の中で、約半数が経営者の年齢が70歳台で、経営者が70歳を超えると、企業の存続に見切りをつける可能性が高まるそうです。

 以前でしたら、自分の子供が男子ならば、跡継ぎにできたのですが、経営環境が厳しい現在は、経営者としての能力・適正がない場合は後継に指名できません。無理矢理に指名しても、数年後に当該企業を畳むことになります。

 以前でしたら、自分の子供が女子ならば、仕事ができる男性社員と結婚させて、この男性を跡継ぎに指名する“番頭経営”が日本流でした。

 しかし、少子高齢化が進む、かつ人生のリスクをとることを躊躇(ちゅうちょ)する若い男性が増え、経営者能力を持つ男性は大手企業などに向かう傾向が高いようです。

 日本の中小企業の売上高は、2008年9月に起こったリーマンショック以降は、下がり続けています。この点が、現在は緩やかに回復している大企業とは異なっています。

 しかも、中小企業の経営者は“個人保証”という慣行が一部に残り、経営者はリスクをとることが求められています。

 こうしたことから、若い世代は中小企業の経営者になることへの“リスクとリターン”の両面から二の足を踏むと分析しています。

 既存の中小企業は今後はM&A(合併・買収)などによって、経営陣の若返りを図り、かつ事業利益率を高める構造改革を実現するしか未来はありません。

 もちろん、若者が新規のベンチャー企業を開業することも大切です。

 記事の中で、気になるのは、既存の中小企業の廃業時に、実際には韓国や中国の企業に事業を売却する話です。現実に、有力な事業を持つ中小企業が中国企業に買収されたケースも増えています。

 こうしたことは、単純には善し悪しがつけられない問題です。若い世代にやる気になってもらう工夫が重要になっています。

人気作家の坂木司さんの新作「アンと青春」をやっと読み終えました

2016年06月07日 | 
 人気作家の坂木司さんの新作「アンと青春」をやっと読み終えました。実は、最初に読み終えたのは2週間以上前なのですが、何回か読み返してみると、話の奧が深く、その度に考えることが多かった作品です。

 この単行本「アンと青春」は、光文社が2016年3月20日に発売した作品です。



 この単行本の帯には、「50万部突破のベストセラー『和菓子のアン』の待望の続篇です」と書かれています。「和菓子のアン」は2010年4月に発売されています。



 この単行本の主人公は、梅本杏子(通称アンちゃん)です。やや小太りの体形です。高校を卒業後に、デパートの地下街にある和菓子屋「みつ屋」でアルバイト店員として働いています。

 単行本「和菓子のアン」では、高校卒業後の18歳でしたが、続篇「アンと青春」では2年経ち20歳になっています。この梅本杏子が和菓子店のアルバイト店員の“気配りができる店員”として、店長や先輩たちに支えられて成長し続けていく話です。

 まず、和菓子について店員として知っておくべき“常識”が散りばめられています。

 例えば、和菓子の上生菓子(じょうなまかし)の素材である「こなし」とは、主に関西で使われる、白あんに粉などを加えて蒸したものだと説明しています。一方、主に関東で使う「ねりきり」(練り切り)は、白あんに求肥(ぎゅうひ)や水飴などの食材を加えて調整し練った練り切りあん(白あん)で、蒸していないものだと説明します。

 また、和菓子を収めた箱の上にかける熨斗を閉じる水引(みずひき)の結び方の「蝶結び」と「結び切り」の使い分け方などが説明されています。

 さて、このアンちゃんが主人公の各編は、人間の気持ちや機微などの謎を解き明かす軽いミステリーです。例えば、「女子の節句」編では、ある上品な服装の年配の女性客は、ある特殊な注文和菓子である「蓬莱山」(ほうらいさん)を事前に注文します(後日、取りにきます)。

 この上品な服装の年配の女性客は、息子の奥さんの快気祝い向けに用いる和菓子だと説明します。

 「蓬莱山」は、大きな饅頭の中に小さな饅頭が詰められている和菓子です。小さな饅頭の中のあんこは赤や緑や黄などの色づけされていて、大きな饅頭を切ると、様々な色のあんの断面が見える華やかな和菓子です。

 基本はお祝いごとに使う和菓子ですが、息子の奥さんの快気祝い向けであることから「赤ちゃんを産んでほしい」とのメッセージが実は込められていると推理します。

 子供がまだいない息子夫婦に、子供をつくってほしいとの願掛けした快気祝いなのでした。梅本杏子たち、和菓子店の店員は隠くされたメッセージを知って、興ざめします。

 この「アンと青春」の各編は、表面的には軽い文体で話は進みます。しかし、いろいろな考え持った人間たちが登場し、その人物たちが考えていることに中には、簡単は賛成できないものも潜んでいます。

 どちらかというと、話は表面的には東京下町的な人情ものの中身ですが、立場によっては複雑な考え方・感情が描かれています。

 前作、「和菓子のアン」は和菓子店での仕事を通して、若い人間の梅本杏子が社会人として成長していく話でした。その基本路線は同じです。人情もの風で、実は奥が深い話が続きます。

 なお、作家の坂木司さんは「1969年、東京生まれ」だけが公表されています。男性か女性かは公表されていません。ここを推理するのも、本書を読む楽しみです。