ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

「早大・産総研ベンチャーフォーラム」でベンチャー企業の事業報告を拝聴しました

2012年06月29日 | イノベーション
 2012年6月29日に「早大・産総研ベンチャーフォーラム」というシンポジウムが早稲田大学で開催されました。タイトルは「明日に羽ばたくベンチャー企業を目指して」です。

 早稲田大と産業技術総合研究所の研究成果やアイデアなどを基に創業したベンチャー企業がそれぞれ2社ずつ、現在の事業の成長ぶりや今後の事業計画などを報告しました。



 早稲田大と産総研は、2008年にベンチャー企業の起業によるイノベーション創出支援を連携事業の一つとしている包括協定を締結した間柄です。これが今回の早大・産総研ベンチャーフォーラムを開催する根拠になっています。

 産総研から産まれた「産総研技術移転ベンチャー」の代表格の1社である知能システム(富山県南砺知市)は、事業化しているアザラシ型ロボット「Paro」が欧州などで順調に事業展開していると報告しました。同社は2004年9月に創業しました。



 アザラシ型ロボット「Paro」と接することで、高年齢者の統合失調症やアルツハイマーの患者が“セラピー”効果で症状が良くなることが、デンマークなどで認められたと説明します。2006年~2008年にデンマークでParoのセラピー効果が評価され、自治体を中心に200体以上が導入されているそうです。オランダやドイツでも販売が始まっています。

 Paroの販売計画は2012年には日本で500体、欧州と米国でそれぞれ300体、その他の地域で50体の合計1150体だそうです。2014年には1万体を販売する計画です。

 二番目に登場したのは、2006年5月に創業したNSマテリアルズ(福岡県筑紫野市)です。マイクロ空間化学技術によって精密化学合成したナノマテリアルの事業を展開しています。いろいろなナノマテリアルを合成し、現在はLED用のナノ蛍光体粒子の製品化を図っているとのことです。開発したナノサイズの蛍光粒子はレアアース元素を含んでいないなどの利点を持っているそうです。

 三番目には、2D(2次元)画像を3D(3次元)画像をつくり出す制作技術を事業化しているQXD(東京都新宿区)が登場しました。早稲田大の研究成果である映像コンテンツ制作技術とヒューマンファクター技術を技術導入し、3D画像をつくり出す制作技術に仕上げている。2011年に公開された映画「怪物くん」の3D映像作製を担当した実績を持ち、映像制作プロダクションとして順調に事業が育っていると報告しました。

 四番目には、2011年6月に創業したエーテル(東京都新宿区)の学生社長の礒辺洋平さんが登場しました。同社はソーシャルスケージュリング・サービスを事業化しようとしています。早稲田大学インキュベーションセンターに入居し、事業計画を練っています。

 産総研発のベンチャー企業は創業時に事業計画などを練り上げ、起業の準備してから創業しています。これに対して、早稲田大発のベンチャー企業は創業し、事業計画を考えながら事業を練り上げています。ベンチャーキャピタル的な視点では、産総研発ベンチャー企業の方が成功確率が高そうです。しかし、早稲田大発ベンチャー企業の経営陣の方が意気込みを強く感じさせるるという不思議な印象を持ちました。

米ボーイング社など企業4社は、東大生産技術研究所と共同開発を始めます

2012年06月28日 | イノベーション
 2012年6月28日に、米ボーイング社と三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の4社は、東京大学生産技術研究所と、飛行機機体などの製造技術を、5年間規模で共同研究を始めると発表しました。

 この共同研究を基に「将来、産学連携の枠組みとなるコンソーシアム設立に向けて協議を始めることで合意し、覚え書きを締結した」と説明しました。「企業4社がそれぞれ負担する共同研究費は未公表」とのことでした。

 将来、コンソーシアムを設立する場合は「行政系の研究開発プロジェクトの公募に応募することによって、公的な研究開発資金を調達することも検討する」と説明します。同コンソーシアムが目指す先行指標は、英国シェフィールド大学工学部とボーイング社が共同で設立した先進製造研究センター(Advanced Manufacturing Research Centre=AMRC)です。 当センターはシェフィールド大学工学部とボーイング社のパートナーシップによって、4500万ポンド(約95億円)を投入した製造技術の研究センターです。川崎重工は「シェフィールド大学のAMRCは飛行機の製造技術を対象とした産学連携の成功例」と説明します。

 記者会見では、企業4社の代表者4人と東大生産技術研究所の担当者2人が、互いに強力に協調するという仲がいいことことを示す、セレモニーが行われました。



 そのセレモニーの写真撮影に群がる記者の方々です。



 今回の共同研究の内容は、大型旅客機などの機体を構成するCFRP(炭素繊維強化プラスチック)複合材料やチタン合金、アルミニウム合金などの機体構成材料などの切削加工技術の高性能化などです。例えば、ボルト締め用の穴開け切削加工の加工精度を高め、加工歪みを減らし、シール性能を高めるなどを目指している。また、今後機体向けの新材料として期待されているリチウム・アルミ(LiAl)合金の切削加工技術も研究開発の対象になる見通しです。

 東大生産技術研究所の教授陣が研究開発を主導して進める。切削加工の共同開発は、生産加工学が専門の帯川利之教授が担当します。画像の一番左の方が帯川教授です。真ん中はボーイング・リサーチ&テクノロジー社の副社長兼本部長のマシュー・ガンツさんです。



 「研究開発は東大生産技術研究所の技術スタッフが担当し、各企業が支援する枠組みを考えている」と説明します。切削加工の研究開発成果は、「特許出願することが難しいために、ノウハウとして蓄積する見通し」とのことです。ただし、ノウハウとして管理する具体的なやり方は、これから検討するそうです。

 今回、東大生産技術研究所と三菱重工など機体3社が共同研究態勢を組んだ背景は、「韓国の飛行機機体メーカーの製造技術面での追い上げに脅威を感じているため」といいます。例えば、三菱重工など機体3社は、「ボーイング社の最新鋭機B787では、機体の35%の製造を任された」実績を持っているが、「韓国の機体企業も実力を高めているために、さらに機体製造の技術力向上を目指す」と説明します。

 韓国企業以外にも、「台湾やマレーシア、インドネシアの機体メーカーも技術力を高めている」ために、日本の機体3社はさらに先進的な製造技術を確立して、ライバル企業に先行する計画とします。

 将来、コンソーシアムを設立した場合は、工作機械メーカーや工具メーカーなどにも参加を呼びかけ、「日本の製造業の活性化につなげたい」とコメントします。 最近の日本の電機メーカーの事業の低迷を考えると、日本の重工業メーカーが「大型旅客機などの機体製造技術での競争力を高め、ライバルメーカーの追従を許さない」戦略も、早めの対策として重要と感じました。

ソニーとパナソニックが有機ELパネルを共同開発などのニュースを読みました

2012年06月27日 | 日記
 「社会保障と税の一体改革関連法案」を国会の衆議院特別委員会と本会議で採決される2012年6月26日の日本経済新聞紙朝刊などの新聞には、「ソニーとパナソニックが有機ELパネルを共同開発する」などの、今後の日本産業界の動向に大きな影響を与えそうなニュースが掲載されていました。

 ソニーとパナソニックは6月25日に、テレビや大型ディスプレイ向けの有機ELパネル/モジュールを共同で開発する契約を締結したと、それぞれニュース・リリースによって発表しました。両社がそれぞれが保有する技術を持ち寄ることによって、有機ELパネル/モジュールの開発効率を高め、2013年内の量産技術の確立を目指す計画です。



 両社は、次世代の有機ELパネルを共同開発する際に、有機ELの基本技術や印刷技術を活用して大型・高精細な有機ELパネルを、低コストで量産できると説明しています。共同開発と並行し、「量産フェーズでの協業の可能性についても検討する」と説明しています。韓国のサムソン電子とLGディスプレーという巨大なライバル企業に、共同開発によって立ち向かう構えです。

 同様に、トヨダ自動車とドイツのBMWは、次世代のエコカー開発で提携関係を強化することを、6月29日に発表する見通しだとの記事が掲載されています。水素ガスを燃料として利用する燃料電池車の低コスト化を図るために提携を拡大するとのです。

 現在、燃料電池車は1台当たり1億円近い原価がかかっているといわれています。これを1台当たり500万円程度まで価格を下げたいようですが、冷静に考えれば至難の業です。でも、本格的な量産(実際にはセミ量産)を目指した事業化もまだ検討中のようです。

 そして、6月26日に家電量販店大手のビックカメラは、コジマを子会社化しました。このM&A(合併・買収)には3年間の協議が必要だったそうです。家電製品や携帯電話機、パソコンなどでヒット商品が生まれなくなり、家電量販店の合併も加速しています。共同仕入れによって、電機メーカーとの商談を有利に運ぶ構えです。事業の赤字に苦しんでいる、日本の電機メーカーによっては怖い話ですが。

 産業界では生き残りをかけて、いろいろな動きが加速しています。政界では、どんな動きが加速するのでしょうか。3年前に政権交代という新ステージに進み、この3年間で、日本の民主主義は想像以上に成熟していないことを学びました。しかし、どう成長するかを学ぶのはこれからです。大正デモクラシーからの反動の歴史から、学ぶことが多々あります。

理化学研究所が開催したバイオ系ベンチャー企業の講演会を拝聴しました

2012年06月26日 | イノベーション
 理化学研究所和光研究所(埼玉県和光市)が開催した第2回社会知創成記念講演会「株式会社カイオム・バイオサイエンス バイオベンチャー企業上場への道のり」を拝聴しました。

 カイオム・バイオサイエンス(東京都千代田区)は、理研の研究成果を基に抗体医薬という“薬”の事業化を図っているベンチャー企業です。理研の研究成果を事業化しようとしているために、「理研ベンチャー」という呼称を名のることが認められています。



 カイオム・バイオサイエンスの代表取締役社長の藤原正明さんは、「創業間もないころは、日本社会では名もないベンチャー企業に対して厳しい対応をする企業や組織もあったのですが、“理研ベンチャー”との呼称は社会的な信用を得るのに大いに役に立った」と説明します。

 このバイオ系ベンチャー企業のカイオム・バイオサイエンスは、2011年12月20日に東京証券取引所マザーズ市場に上場しました。同社の取締役でベンチャーキャピタルのファストトラックイニシアティブの取締役・パートナーである芦田耕一さんは、「同社の上場時に、株価を下げずに上場できたために、同社に投資していたベンチャーキャピタルは利益を得ることができ、投資リターンを得ることができた」と、説明します。

 このことが重要な点は、日本では最近のベンチャー企業の上場時に株価が下がるケースもあり、ベンチャーキャピタルなどの投資家が利益を得ることができず、別の未上場のベンチャー企業への投資をする資金を確保できないという事態に陥っているからです。

 カイオム・バイオサイエンスは当時、理研の研究者だった太田邦史さん(現在は東京大学大学院教授)が発見した「ADLibシステム」という独創的な研究成果を技術化したものです。このADLibシステムは抗体作成法ですが、中身がとても難しいので説明は省略します。

 代表取締役社長の藤原正明さんによると、「従来の抗体作製法は、7~16週間かかるのに対して、ADLibシステムは約10日で作製できる」そうです。この独自の技術は、基本特許として出願され、現在は同社と理研が権利を50%ずつ持っているそうです。

 その後、事業化の方向付けでは紆余曲折(うよきょくせつ)がありながら、抗体医薬をつくる事業などを前面に出すことで、中外製薬やオリンパス、富士フイルムなどの大手企業と共同研究契約を結び、前渡し金などを獲得し、事業開発費をまかなっているそうです。

 今後は、インフルエンザのパンデミック感染症対策向けの抗体医薬などを2018年までに事業化する計画です。日本でも、独自技術を持つバイオ系ベンチャー企業が育ち始めているということを、この講演会では学びました。技術の中身はかなり難解なので、勉強する必要性を感じました。

埼玉県川島町の平成の森公園では、ハナショウブの花は見ごろを過ぎました

2012年06月25日 | 季節の移ろい
 埼玉県川島町の平成の森公園の特徴は、バラ園とハナショウブ園を中心とした構成の公園である点です。あの「ふるさと創生事業」の一環として、平成8年度に開園された公園です(1988年から1989年にかけて、日本の各市区町村の地方自治体に地域振興策として資金1億円を交付した政策です)。

 ハナショウブは、川島町の「町の花」になっています。川島町は、北側に市野川、東側に荒川、南側に入間川、西側に越辺川と大きな川に囲まれた町であり、その川辺に咲くハナショウブの花に親近感を持っているからのようです。

 平成の森公園に設けられたハナショウブ園のハナショウブの花は、残念ながら開花期を少し過ぎた感じでした。





 いくつかの花が萎んでいるからです。ハナショウブが植えてある“沼地”の水面は、小さな水草のようもので覆われています。ちょうど、今ごろの水田の水面のようです。

 現在、開花しているハナショウブの花はなかなか華やかです。





 ハナショウブ園の隣にある大きな沼の岸辺では、ハスの花が咲き始めています。





 周囲から水が流れ込むように見える、この沼の中には、コイやモツゴ(通称、クチボソ)、金魚などがいるそうです。シオカラトンボなどのトンボのオスとメスが産卵してします。

 広大な平成の森公園の周回コースは、健康維持のために歩く人やジョギングをする人などが、パラパラといます。その周回コースを自転車で走るためでしょうか、“自転車のクラブ”の方々が自分の自転車(ロードバイク)を調整していました。その内に、自転車で走り始める感じでした(あるいは公園近くの外部の道路を走るのかもしれません)。

 広々とした公園では、軽く運動をする方や、ハナショウブ園の隣にある大きな沼でのんびりと釣りをする方など、公園を楽しむ方々がいます。自分の時間を大切に使っている感じです。日本での平和な時の流れを感じました。