ヒトリシズカのつぶやき特論

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金属材料の常識を覆す変形メカニズムを探索する研究計画話を伺いました

2012年07月25日 | 汗をかく実務者
 先日のヒッグス粒子の発見話ほどではありませんが、金属材料系の従来の常識を覆す可能性を探索するという、とても挑戦的な話を伺いました。

 いくらか小難しいのですが。鋼やアルミニウム合金などの金属材料がプレス成形や鍛造成形できるのは、転位という線状の欠陥が連動して動くからと考えられ、金属材料などの塑性変形学は発展してきました。

 これを覆す可能性がある研究計画を伺ったのは、文部科学省が2012年7月23日に東京都千代田区の学士会館で開催した「第1回 元素戦略シンポジウム」を拝聴した時です。このシンポジウムは、文科省が6月29日に「レアアースやレアメタルなどの希少元素を用いない、革新的な希少元素代替材料の創製を目指す元素戦略プロジェクト 研究拠点形成型の研究拠点4カ所を採択した」と発表したことを受けた“キックオフ・ミーティング”として開催されまたものです。

 磁石材料領域などの4つの研究拠点は10年間かけて、日本の産業基盤を革新する新材料を研究開発します。4拠点は、基礎科学によって材料科学の原理解明に基づく新材料開発を実施します。

 研究拠点4カ所の一つである京都大学に新設された構造材料元素戦略研究拠点の代表研究者を務める田中功さんは「強さとねばさを両立させた究極の構造材料を開発するために、材料の新しい変形メカニズムとして変形子plaston(プラストン)を探索する」と説明されました。



 京都大大学院工学研究科教授の田中さんは、構造材料領域の拠点として、安心・安全な社会基盤を支える革新的な構造材料を研究開発する構造材料元素戦略研究拠点のプロジェクトリーダーを務めます。

 現在、使われてる鉄鋼材料などの金属系構造材料は「転位論に基づく合金設計による合金元素の添加によって、高強度化あるいは高靱性(じんせい)化して利用してる」と説明します。 これに対して、田中さんは「金属を構成する結晶構造の線状欠陥(転位や回位など)の集団がつくる原子の集団励起として、原子が協調的に集団運動する、新しい変形メカニズムを起こす変形子plastonの探索を研究開発する」と説明されました。

 従来の金属の変形メカニズムを知っている方には、すぐには理解できないまったく新しい考え方です。信じない方も多いと思います。

 田中さんは、変形子のplastonを着想した手がかりとして、「京大大学院工学研究科教授の辻伸泰さんの研究グループが発見した、バルクナノメタルというナノ結晶材料のアルミニウム合金試料が強さとねばさを両立させた実験結果などを挙げます。

構造材料元素戦略研究拠点は、電子論グループと解析・評価グループ、材料創成グループの3グループで構成されます。電子論グループを率いる田中さんは、「10年間の最初の3年間の2012~2014年度は電子論グループによる変形子plastonの探索を追究し、実験研究の脚場を築く。4年目以降の新構造材料創製を確実にする、新しい材料科学のパラダイムを創出する」と説明します。

 真に挑戦的な研究計画です。こうした中から、独創的な研究成果が産まれると感じました。でも、とても驚きました。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
材料設計 (ケイ)
2012-07-25 23:18:37
「材料屋が現象を説明できなかった事はないが、材料を設計して産み出した事はない。」
昔から言われた材料屋の自虐的評価でした。東工大では以前からこれに挑戦する動きがありましたが、京都でも始まっていたんですね。応援します。参加したくなるほどの柔軟さは残念ながら…
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トライボシステム展望 (インフライノベーションウォッチャー)
2017-04-24 20:48:12
 日立金属は機械構造材料の現在の問題点は、摩擦にあるとして、境界潤滑の開発モードに移行している。つまり今までと違う異次元の理論(CCSCモデル)を開発し、自動車、産業機械の高性能化のための鉄づくりををしているわけだ。つまり強度だけではないという。
 ハイテンは軽量化だけだが、これは軽量化、摩擦損失低減、耐久性能向上の3つが同時向上するという。
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マルテンサイト千年グローバル (鉄の道サムライリスペクト)
2024-10-18 01:59:07
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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