ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

埼玉県川島町のコハクチョウは人見知りしない感じでした

2010年12月31日 | 季節の移ろい
 埼玉県川島町を流れる越辺川(おっぺがわ)河川敷の白鳥飛来地に行ってきました。約40羽のコハクチョウが数種類のカモと一緒に川面の上に漂っていました。比較的流れが遅くなった感じのよどんだ穏やかな川面にコハクチョウは浮かんでいました。




 平和を感じさせる雰囲気でした。

 ここに到着した時間帯が夕方で、少し経つと夕暮れになったせいか、白鳥が川面の真ん中から岸辺に向かって泳ぎだし、河川敷に上がり始めました。




 曇り空の中での部分的な夕焼けが湖面に映っていました。なかなか美しい風景です。

 夜は、コハクチョウたちは河川敷の上で過ごすようです。この時に、見学者は5~6人いたのですが、コハクチョウは人をあまり怖がりません。以前の餌付けのせいか、人に慣れている感じでした。

 この白鳥飛来地には2003年から毎年、コハクチョウが飛来するようになったそうです。比較的新しい白鳥の飛来地です。ここでも2009年から鳥インフルエンザ対策で餌付けを止めているとのことです。川島町と坂戸市の境を流れる越辺川も入間川を経て、荒川に注ぎこむ支流の一つです。埼玉県南部は荒川の支流がいくつもありますが、コハクチョウがなぜ、この川島町八幡の河川敷を飛来地に選んでいるのかは、見た目では理由が分かりませんでした。この河川敷が他の河川敷に比べて、住みやすいのかどうかは分かりません。サギなどの水鳥は周囲にはいませんでした。コハクチョウに、ここを選んだ理由をたずねてみたいと思いました。
 
 白鳥は遠いシベリアから越冬しに日本まで飛来し、体力をつけて春にはシベリアに戻っていきます。種としては、毎年この繰り返しです。多くの生き物が種としては繰り返しを続けています。日本では新年を迎えると、再び新たな時の始まりとなり、時は輪廻状に過ぎていきます。四季の変化の中で、不変なものと変わるものが混在する曼荼羅の世界です。人類は、変わるものとして来年、何を手に入れるのでしょうか。

佐久市のご当地味噌ラーメン「安養寺らーめん」を食べました

2010年12月30日 | グルメ
 長野県佐久市の地域振興の重責を担う「安養寺(あんよううじ)らーめん」を食べました。佐久市の所々に、「安養寺らーめん」ののぼりがはためき、地元の素材を使った地産地消の味噌ラーメンによる地域振興をアピールしています。


 「安養寺らーめん」を食べさせるお店は、佐久市内に現在、16店あります。その内の2店に、2日間にわたって行きました。1軒目は、七代目助屋の安養寺らーめんです。ラーメン専門店のメニューの一つでした。


 太い麺が喉ごしのいい、印象的な味噌ラーメンでした。味噌味も少し濃厚で美味しいかったです。トッピングはごく普通のものです。特に、「安養寺らーめん」とうたわなくても人気のあるお店のようです。大通りに面しているせいか、開店と同時に10数人が次々と来店する人気店でした。
 
 2軒目は美峰の安養寺らーめんです。すり鉢の容器が売り物です。


 ゴマ味噌味のスープは濃厚で好きな味です。麺は普通です。トッピングも野菜なのですが、少し冷たく載せただけの感じでした。野菜は自家栽培しているそうです。このお店は、いろいろな料理を提供する中で、味噌ラーメンを提供している様子でした。街道から外れた地の利のせいか、お客は私一人でした。

 安養寺は佐久市にある臨済宗のお寺です。信州味噌の発祥の地と伝えられるお寺です。鎌倉時代に、覚心(かくしん)という僧の遺志で設けられたお寺だそうです。覚心は修行僧の時に、中国に渡って大豆ベースの味噌づくりの技術を学んで帰国し、会得した技術を日本各地に伝えました。この技術移転によって、大豆製の味噌が日本に普及しました。

 素朴な味の安養寺味噌を、佐久市内で江戸時代から味噌屋を営む和泉屋が復活させました。安養寺の住職と檀家有志が育てた大豆と佐久平で採れたお米、天然塩を素材に安養寺味噌を復活させました。安養寺らーめんは、この安養寺味噌を用いるというルール以外は各お店の好みに任されているようです。地元のラーメン店と佐久商工会議所などの有志が、「ラーメンによる元気な街おこし」を合い言葉に、安養寺味噌を用いた味噌ラーメンを試作し研究を続けたとのことです。2008年に安養寺らーめんを試作し、議論を重ねて工夫を加え、当初は6軒のお店で提供し始めました。そして、現在の16軒まで拡大しました。

 地元に伝わる素材を用いて、地元の野菜や豚肉などを地産地消するコンセプトだそうです。地元の名物をB級グルメとして盛り上げて、地域振興を図る流れと同じです。さて、その成果は数年後に出ると思います。実際には紆余曲折(うよきょくせつ)があると思いますが、さらに工夫を凝らすなどの対応によって、新規事業は花開くものです。16軒同士で競い合い、お客が人気店かどうかを判定します。努力すれば、女神がほほえみます。

夜が明けると、佐久荒船高原は一面の雪景色でした

2010年12月29日 | 佐久荒船高原便り
 佐久市の佐久荒船高原は夜中に雪が降り始め、夜が明けると一面の白銀の世界になっていました。昨日は、群馬県と長野県の県境の内山峠は残雪がなく、落ち葉が地表を覆う晩秋の景色だったのですが、一晩で雪景色に様変わりしました。

 朝方はかなり冷え込んでいます。雪のため、森の中は静かです。モミの木の林はうっすらと雪が積もっています。



 積もった雪景色の中には、歩道に小さな足跡がついています。鹿の群れが通ったようです。

 草むらの中で、野鳥がたまに鳴きます。ホウジロかカシラダカの群れのようです。低木の木立の中に、シジュウカラの群れがいました。



 シジュウカラの白と黒の羽根と、枝に少し積もった雪は区別がつきにくい感じです。野鳥は何種類かいますが、なかなか近くまで寄ることができず、撮影はできませんでした。

 南側にそびえて立つ荒船山も少し冠雪しています。山頂近くを雲が流れ、時々吹雪きます。



 昨日、群馬県藤岡市付近から見えた浅間山はだいぶ冠雪していました。今日は山頂付近に雲がかかり、冠雪と雲の区別がはっきりしません。もう、冬景色の浅間山になりつつあります。



 長野県佐久市の東にある標高約1100メートルの佐久荒船高原はもうすぐ冬景色に染まり、長い眠りにつきます。来年の4月までは冬景色のままです。 

レアメタルのディスプロシウムの使用量を減らす技術が開発されました

2010年12月28日 | イノベーション
 高性能な永久磁石として使われているネオジム磁石の弱点を解消する技術のメドが立ったようです。パソコンのハードディスク装置(HDD)を動かす精密モーター向けの高性能磁石としてネオジム・鉄・ホウ素磁石が使われています。このネオジム系高性能磁石の弱点は高温に弱いことです。ある温度以上になると、磁石でなくなります。

 電気自動車やハイブリッド自動車を動かす電気モーターには、当然、ネオジム系永久磁石を用いています。自動車は電気モーターが150度(摂氏)以上になる可能性もあるため、ネオジム・鉄・ホウ素磁石にディスプロシウム(Dy)というレアメタル元素を添加し、高温になっても磁石性能を保つように工夫されています。

 一般の方は、ディスプロシウムという元素はあまり馴染みがないと思います。たぶん、ネオジム系磁石が登場するまでは、あまり使われなかった元素だと思います。高温に強いネオジム・鉄・ホウ素磁石にするには、ディスプロシウムを10質量%も添加する必要があります。ディスプロシウムが問題なのは、ディスプロシウムを多く含む鉱石(といっても酸化物で8%程度ですが)は中国しか輸出していないことです。中国は日本へのレアアース・レアメタル鉱石などの輸出規制を強化しているために、ディスプロシウム不足が心配されています。一方、ネオジムも輸出は中国が中心ですが、オーストラリアも輸出元の一つなので、いざとなればオーストラリアから輸入できます。

 ディスプロシウム不足が懸念されているため、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は平成19年度(2007年度)から5年計画で「希土類磁石向けジスプロシウム使用量低減技術開発」プロジェクトを始めました(Dyのカタカナ表記が少し違います)。このプロジェクトのテーマ-リーダーは東北大学の未来科学技術共同研究センター教授の杉本諭さんです。


 このプロジェクトには、山形大学、物質・材料研究機構、日本原子力研究開発機構、三徳、インターメタリックス、TDK、トヨタ自動車が参加しています。今回、ディスプロシウムの使用量を約40%減らす要素技術を開発したのは、インターメラリックスというベンチャー企業(京都市)です。この会社は、ネオジム系磁石を開発した佐川真人さんが代表取締役を務めています。


 佐川さんは、住友特殊金属の研究員だった1982年に、ネオジム系磁石を開発した方です。この当時は、高性能永久磁石といえば、サマリウム・コバルト系永久磁石が全盛の時代だったために、大きなインパクトを与えました。その後、佐川さんは住友特殊金属を退社し、磁石材料の研究開発系ベンチャー企業のインターメタリックスを創業します。

 今回、ネオジム磁石のディスプロシウム使用量を大幅低減できたのは、磁石の原料粉末を従来の5ミクロン(マイクロメーター)から1ミクロン強まで微細粒化したことが基本原理になっています。従来は原料粉末を窒素ガス流に乗せて、壁に激突させ粉砕していた。これに対して、原料粉末をヘリウムガス流に乗せて粉砕すると、ガス流の速さが約3倍速いことから壁に激突すると、細かく粉砕されます。この原料粉末を混合し、充填工程で加圧しないで薄板形状に成形し、焼結炉に送って焼結すると、ネオジム磁石が完成するという、一連の磁石製造工程を持つ試作装置を実用化し、ネオジム磁石の試作品を作製できるようにしています。
 
 ネオジム永久磁石の薄板形状品をつくるPLP(プレシャーレスプロセス)用のモールド(成形型)などに工夫を凝らしているようです。将来は、「ディスプロシウム使用量をゼロにするという野心的な意向を持っている」との説明です。

 今回の記者発表は、話題のレアメタル使用量削減のケースなので、ニュース性が高いために、テレビ局の取材クルーが2組来ていました。


 中国はレアアース・レアメタル鉱石などの輸出規制をどんどん強化しています。このため、各種のレアメタル使用量を低減するプロジェクトが実際に成果を上げることしか解決策はないだろうと思います。数年間で各種のレアメタル元素の使用量低減が実用化されることを祈念しています。
(注)住友特殊金属は2004年4月にNEOMAXと社名を変更し、同年10月に日立金属に買収され、日立金属傘下の子会社になっています。

大学が企業と共同研究する際の本音を語った単行本の話です

2010年12月27日 | イノベーション
 昨日ご説明した単行本「企業研究資金の獲得法」が伝える内容の続きです。この本の執筆者である東京農工大学の教員の方々が伝えるように、大学教員の研究室の多くは研究資金が不足しています。この不足している研究資金を得る手段の一つとして、大学の教員(研究者)は企業との共同研究に活路を見出し、お互いに満足する仕組みをつくろうとしています。企業に研究費を出してもらうためには、教員が真の“対価”をどう考えればいいのかを、教員に助言しています。

 本書を執筆した方々は、東京農工大の産学官連携・知的財産センターのセンター長をはじめとする教員たちです(後で詳細は説明しますが、執筆者として名前が挙がっている方々は編者でもあるようです)。東京農工大は工学部と農学部で構成される理工系大学です。東京にある国立大学の中では中規模の大学ですが、共同研究の実績面では日本のトップの座を占める大学として有名です。 

 例えば、教員1人当たりの企業との共同研究の件数では、東京農工大は0.53件と日本で一番多い実績を持っています(文部科学省の「平成21年度 大学等における産学連携等実施状況について」より)。


 (昨日ご説明した共同研究費の平均値が220万円であるという数字は、共同研究1件当たりで、教員数が1人とは限らない場合のようです)。
 上位に並ぶ大学は、理工系の専門大学が多いのが特徴です。逆にいえば、企業との共同研究が少ない文系学部を持たない大学群が上位に名を連ねています。その中で東京農工大がトップの位置を占める理由は、同大の教員の研究テーマが企業にとって魅力的なものが多いからだと思います。新規事業を始めたいと思う企業で、自社の中にその分野に強い研究者が少なく、適した実験設備も持っていない場合は、その分野に精通した大学教員に相談する可能性が高いです。自社が不慣れな分野の共同研究を親しい教員に相談すると、東京農工大は優れた共同研究計画を提案する教員が多いようです。企業が解決を求める課題に対して、その解決方法を的確に提案できる教員が多いのではないかと思います。

 教員1人当たりの企業との共同研究費の面でも、東京農工大は約104万円と第一位の座を占めます。


 第二位が東京工業大学、第三位が名古屋工業大学と続きます。その後に、旧帝大系の有名大学が続きます。この順位からも、東京農工大の教員の研究テーマが企業にとって魅力的なものが多いと推定できます。そして、相談すると、企業が知りたい課題に的確に答えてくれる教員が多いようです。

 本書によると、東京農工大は企業出身の教員も多く、また企業がどんな理由で共同研究を申し込み、何を期待しているかをよく理解している教員が多いようです。あるいは、先輩教員や産学官連携・知的財産センターの担当者が若い教員に、企業が共同研究を実施する際に求めるものは何かを教えてくれるようです。この結果、企業の下請けとしてではなく、自分にとっても役に立つ共同研究計画を提案する能力が高い教員が多いようです。

 同大学のWebサイトの「研究・産官学連携」ボタンをクリックすると、「研究者紹介(研究者総覧)」ボタンが出てきて、専門分野別に教員を探せたり、「研究シーズ集」などのボタンが出てきて、同校の教員の研究テーマを探しやすくなっています。また、「共同研究を申し込みたい」というボタンもあり、具体的にどうすれば、共同研究を申し込めるかが示されています。

 本書は若い教員が、企業の担当者から課題解決の相談を受けた時に、共同研究をどう提案すればお互いに信頼感をはぐくめるかを分かりやすく、具体的に説明されています。

 表紙には教員3人の名前が著者として表示されています。ところが、実際に中身を読むと、章の最後に署名があったりして、この3人以外の方が書いた部分がかなりあるように推定できます。どの部分を誰が書いたのかがよく分からない構成になっています。その一方でかなり個人的な見解を述べている部分もあります。誰がどの部分を書いたのか、文責は誰が持っているのか、本書全体の統一見解はあるのかないないのか、よく分からない構成になっています。オムニバスな構成になっているようです。

 最後に、本書の類書を見つけたので、ご紹介します。