ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

佐久市の佐久荒船高原は春から初夏に衣替え中です

2011年05月31日 | 佐久荒船高原便り
 長野県佐久市の東側にある佐久荒船高原は5月の連休前の初春からスミレなどが咲く春に移り、現在は初夏に向かって急速に季節を変えています。

 関東の梅雨の影響のためか、快晴の日々がなく、周囲の山々は霞んでいます。



 山道を行くと、これまで気が付かなかった小さな白い花が群生している個所に出会いました。





 野草の図鑑を調べてみると、タチカメバソウ(立亀葉草)ではないかと思いました。山地の渓流沿いに咲くと説明されており、この場所の環境はその通りです。葉がカメの甲羅に似ていることからの命名と書かれています。以前は、ニリンソウの咲き始めと誤解していたようです。

 このタチカメバソウの存在に気が付いた辺りを見渡すと、タチカメバソウの群生地が渓流沿いに多いことを知りました。まだ知らない野草があることに改めて気が付きました。

 6月ごろに佐久荒船高原を飾るズミ(コナシ)の花も、日当たりがいい場所では咲き始めています。



 ズミの木が多い山道沿いでズミの花が満開になると、バラ科のサクラの花と同様に枝を覆い隠すように多くの花が咲きます。荒船高原のもう一つの花見時です。ズミの花はぱっと咲いてぱっと散ります。この点もサクラの花に似ています。

 ズミの花が終わると、次はレンゲツツジの花の季節になります。佐久荒船高原では主役の花が次々と出番を待っています。

「技術と知財で勝る日本がなぜ他国に勝てないのか」という講演を拝聴しました

2011年05月30日 | イノベーション
 東京大学の小川紘一特任教授の講演「技術と知財で勝る日本がなぜ他国に勝てないのか」を拝聴しました。社団法人の日本ファインセラミックス協会が開いた通常総会の後に開催された特別講演会でのお話です。

 小川特任教授は東京大学に設けられた知的資産経営・総括寄付講座の教員スタッフのお一人です。


 
 (小川さんの背景にあるガラスに貼り付けられた、赤い三角が邪魔です。予想外の写真です)

 日本の製造業が直面している事業不振が増えている難問の原因を解析された講演のお話は、欧米などの先進国がオープン型の国際分業による製造業の態勢をつくり始めた結果だ」と指摘されました。



 日本の製造業は、いくつかの製品で国際市場でのシュアを大幅に低下させ、国際競争力を失っています。例えば、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)と呼ばれる半導体メモリーは1987年にはシェア70%強もあったのに、95年ごろには50%を割り、2001年には20%を割り、2005年には10%を割るという下落ぶりでした。

 液晶パネル、DVDプレーターというキーデバイスやキー製品も、同様の下落曲線をたどりました。どのキーデバイス・製品は、日本企業が研究開発で成果を上げ、有力な特許を出願しました。例えば、「液晶パネルの場合、日本企業は“必須特許”と呼ばれる根幹特許を90%以上持っているのに、韓国や台湾の企業に国際市場でのシェアを奪われた」と説きます。デバイス・製品を支える技術やノウハウのブラックボックス化ができていなかった結果だと指摘されました。

 今回驚いたのは「自動車のカーナビゲーション製品でも、日本企業は国際市場でのシェアを急激に落としている」という小川特任教授の指摘でした。カーナビゲーション分野は、まだ日本企業の独壇場と思っていたからです。

 1990年代~2000年代当時のアジアの新興国だった韓国や台湾、シンガポール、中国などのアジア諸国は「先進国が研究開発した技術を自国の企業などに伝播させる促進策として、減税や免税などの税法や減価償却などの促進制度を設けた」と分析されます。

 小川特任教授は日本の部品や材料は国際市場でまだ支配力を持っていると分析されます。その証拠は、あの不幸な東日本大震災によって被災した、日本の部品メーカーや材料メーカーの独自の部品や材料が供給されなくて困った“サプライチェーン”問題だったと指摘されます。

 今後、日本の部品メーカーや材料メーカーが国際市場で競争力を維持し続けるには、「部品や材料のコア技術を完全ブラックボックス化し、その利用技術などの“外部インターフェース”はオープン化する制度設計を事前にできるかどうかだ」と鼓舞します。この研究開発・事業での制度設計を担当する人材を“アーキテクト型”人材と呼ぶそうす。アーキテキクト型人材は天才一人が担うのではなく、プロジェクトチームで担うことで可能になるそうです。

 講演後に、木村特任教授にお時間をいただき、質問を少しさせていただきました。「現在の日本の大学・大学院には、アーキテキクト型人材を育成する教育コースはありますか」と尋ねると、「まだほとんどない」とのお答えでした。日本では研究開発人材を育成するだけではなく、新規事業起こしを企画・実践するプロデューサー人材を育成する教育が重要になっていると感じました。この“プロデューサー人材”は“アーキテキクト型人材”と同じだと思います。事業全体を鳥瞰し、どうやって事業利益をつくり出すかなどの事業設計することだからです。

秩父市の花見の里では、可憐なソバの花が咲き始めています

2011年05月28日 | 季節の移ろい
 埼玉県秩父市の荒川にある「花見の里」では、ソバの花が咲き始めています。一面のソバ畑では可憐な白い花がそろそろ咲くころですが、開花がいくらか遅れている感じです。

 秩父市の市街地を抜けて、奥秩父側の南西方向に向かうと、山里らしい風景が広がり始めます。秩父市の荒川地区は、以前は「荒川村」と呼ばれたところです。この荒川辺りは、国道140号線の両側にソバ畑が点々と広がります。その一つが「花見の里」です。

 一面に広がるソバ畑では小さい可憐な白い花が咲き始めたところでした。





 ここでは、ソバの花は6月と11月の1年間に2回咲きます。新ソバの季節が1年間に2回あるわけです。ソバどころの荒川地区には、ソバの生産農家が60軒以上あるそうです。「昔は、養蚕用のクワ畑だったところがソバ畑に変わった」と、以前に聞いたことがあります。

 ソバの花を眺めていると、ソバ畑の上に広がる曇天の空でヒバリがよく鳴いています。その内に1羽のヒバリがソバ畑の端に舞い降りました。



 ソバどころの荒川地区は、ソバの生産農家が60軒以上あります。このため、ここで採れるソバの実を用いる蕎麦屋が約30店と、蕎麦切りの激戦地です。素朴な味の手打ち蕎麦を巡って、蕎麦打ちの腕前を競っています。「挽きたて、打ちたて、茹でたて」をうたい文句にする腕前です。職人芸の競争は、どんな分野でも激しいものです。

 奥秩父の山里には、赤色のヤマボウシ(山法師)の花が咲いていました。



 ヤマボウシの木は白色の花が普通ですが、赤色のヤマボウシの花も時々あります。日本版“アメリカハナミズキ”だと感じました。

 秩父市の隣町である小鹿野町はヤマボウシの並木道が多く、山々に囲まれた秩父盆地らしさを、ヤマボウシの花に見いだしました。

「微小電気機械システム」と翻訳されるMEMSという高機能デバイスの話を拝聴しました

2011年05月26日 | イノベーション
 茨城県つくば市の公的研究機関である産業技術総合研究所で5月25日に開催された「CNT-NMEMS-TIA共同シンポジウム」に参加しました。このシンポジウムは二部構成でした。その一方のテーマが、日本の製造業、特に電機産業が国際市場で競争力を高めるには「MEMS」という高機能デバイスの実用化で先行することが重要ですというメッセージでした。

 「MEMS」は「Micro Electro Mechanical Systems」の略称です。実用化されているMENSには、自動車やゲーム機の加速度センサー部分や、ディスプレーの光学表示素子などがあります。大まかにいえば、センサー部分に機械的に稼働する部分を融合した高機能デバイスです。

 シンポジウムの表題にある「N-MEMS」の「N」とは「ナノ」と「ネットワーク」の両方を意味するそうです。含蓄を持たせたところがミソのようです。
 


 このN-MENSの研究開発を牽引しているのは、産業技術総合研究所の集積マイクロシステム研究センターです。この研究センターを率いる前田龍太郎センター長は「3月11日の東日本大震災以降、高機能センサーネットワークのシステムによる低環境負荷社会の実現が一層重要になった」と説明します。この高機能センサーネットワークとは、NMENSでつくった高機能センサーデバイスによって、消費エネルギーや温度、圧力、風量、異物粒子などの環境因子を計測し、無線で計測値を伝えるものです。低環境負荷社会の実現に欠かせない高機能デバイスをN-MEMSとして実用化するとします。ある種のスマートセンサーのネットワークといえます。

 N-MEMSを生産する装置群として、産業技術総合研究所の構内に8インチ(一部は12インチ)シリコンウエハー向けの最先端の半導体製造ラインを設置しています。



 ところが、3月11日の東日本大震災によって、この最先端の半導体試作ラインは被災し、現在、賢明の修復中だそうです。この最先端の半導体試作ラインを基に、日本の産学官連携組織はN-MEMSという高機能デバイスの実用化を精力的に進める構えのようです。

 MEMS分野での日本の第一人者である、東北大学の江刺正喜教授は、今回のシンポジウムの基調講演の中で、「半導体の共同研究ではベルギーのIMECは成功したが、電子デバイスと機械的可動部の擦り合わせによって実用化されるMEMS分野では、日本は欧米に対して先行できる可能性を持っている」と説きます。半導体の共同研究では後塵を配している日本の企業群だが、MEMS分野では競合でき、先行できる可能性が出てきた」と解説します。

 江刺教授の講演の中で記憶に残ったのは「東北大のMENS研究開発では、企業からの委託研究は受けない」との説明でした。企業の担当者が自分たちのMEMS製品開発のアイデアを実現するために、各製造装置を使って、自分たちの手で自分たちがほしいMEMSをつくらないと、一連のMEMS製造の工程を会得できず、国際競争力のある高性能MEMSは事業化できないからだ」と説明します。前後の工程を深く知らず、自分の受け持つ工程だけに詳しい技術者は、「実用化の創意工夫ができず、事業化の際の擦り合わせによる難問解決が図れない」という。

 江刺教授は「日本でイノベーションを起こすには、自分たちで考え、解決法を見いだす事業起こし事業者という人材育成が必要になる」と説きます。新規事業起こしで、システム開発に役立つ人材は、自分の手を動かしてモノをつくり出す研修が重要と考えているようです。江刺教授は毎年、「MEMSセミナー」を各地で開催し、人材育成に力を入れています。

産総研などが研究開発中のカーボンナノチューブ量産実証プラントの話を伺いました

2011年05月25日 | イノベーション
 茨城県つくば市の公的研究機関の産業技術総合研究所つくばセンターで開催されたカーボンナノチューブ(CNT)とMEMS(微小電気機械システム)の研究開発プロジェクトのシンポジウムを拝聴しました。同時に、3月11日の東北・関東大震災の被害を受けた地域の一つである、つくば市の研究開発施設の被災状況なども伺いました。

 昨年6月17日に、経済産業省などの行政府の主導によって欧米に匹敵するナノテクノロジー研究開発拠点として「つくばイノベーションアリーナ」(TIA)という組織ができました。「ナノエレクトロニクス」などの6研究領域で、産学官連携による研究開発プロジェクトが進められています。これからの新規事業起こしでカギになる「ナノテク」要素技術を、日本として確保し、日本企業が国際競争力を持つ事業展開を図る基盤技術を確保するのが狙いです。

 その6研究領域の中の「カーボンナノチューブ」と「N-MEMS」の研究開発状況を発表する「CNT-NMEMS-TIA共同シンポジウム」が産業技術総合研究所で開催されました。

 最初の「カーボンナノチューブ」領域は、日本で発見された新材料として、その応用製品を事業化する目的で、研究開発が進められています。



 カーボンナノチューブは炭素原子が網目状に並んだ、細長い“筒”です。



 筒が1巻の単層のものは一般的に、直径が2~3ナノメートル、長さが数ミクロンメートル以上です。表面積が大きいことも特徴なので“触媒”などにも使える可能性が高いのです。 

 炭素原子だけでできていながら、丈夫で、電気を通しやすい、熱を通しやすい、半導体になる、などの優れた性質を持っている“夢の新材料”です。例えば、アルミニウム合金に混ぜると、熱伝導性に優れた冷却器に適した合金ができたり、合成ゴムに混ぜると、電気を通しやすく丈夫な複合ゴムができたりします。また、最近話題のイオンキャパシターという電池を大幅に高性能化する可能性が高いとも考えられています。トランジスタに適用する考えも有力です。

 現在、高純度で高品質な単層カーボンナノチューブは1グラム当たり数万~数10万円と非常に高価です(ダイアモンドより高いようです?)。このため、高品質な単層カーボンナノチューブを量産し、1グラム当たり数1000円に低価格化し、かつ高品質な単層カーボンナノチューブを安定的に供給することによって、日本企業に量産品の製品に採用してもらうことで、日本企業に国際競争力のある製品開発をしてもらうことを目指しています。

 カーボンナノチューブ領域で現在、話題を集めているのは、昨年12月末に完成した単層カーボンナノチューブの量産実証プラントです。産総研と日本ゼオンは共同で、スーパーグロース合成法を基にした単層カーボンナノチューブの量産実証プラントを2011年2月から稼働させ、「2011年4月から単層カーボンナノチューブの量産品をサンプル供給する」計画を進めていました。

 ところが、3月11日の東北・関東大震災によって、この量産実証プラントは被災しました。5月連休まで修復していたそうです。この結果「2011年4月から単層カーボンナノチューブの量産品をサンプル供給する」という計画は延期されていました。5月連休には、量産実証プラントが稼働できるようになり、これまでの遅れを取り戻すために、午前5時から1直・5人態勢で、1日に2直・10人態勢でフル生産してるそうです。というのも、この夏に予想される計画停電を考えると、単層カーボンナノチューブの量産実証プラントを途中で止める事態を避けるため、現在どんどんつくり込んでいるようです。



 今回のシンポジウムでは、量産実証プラントでつくった「単層カーボンナノチューブのサンプル配布」を始めると発表しました。配布対象は企業と大学です。開発用途を伺って、品質も考慮し、提供費用を決めるそうです。

 大震災の被害をどのように修理したかは、具体的には伺えませんでしたが、かなり苦労した感じです。日本が優れた研究開発成果によって、国際競争力を持つ製品開発に成功するために苦心したようです。最近、液晶パネルや有機ELパネルなどのキー部品などで、国際市場での支配力を失っている日本企業が元気になるきっかけになればいいと考えています。