まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『ふくろう女の美容室』静かに警告を発する一冊

2011-08-19 01:50:15 | アメリカの作家
AT THE OWL WOMAN SALON 
1997年 テス・ギャラガー

なんでしょう?
好きか嫌いかがはっきりしない本でした。

「その気持よくわかる」と入り込んでいってたら
唐突に突き放されたり、取り残されたりしたような感じになりました。

難解なわけではないです。
前衛的なところも実験的なところはありません。
舞台はごく一般の家庭で、日常を淡々と、極めて普通の言葉で書いてあります。

現代特有の問題をいろいろと孕んでいながらも、薄いベールで覆い隠した感じは
どことなく旦那さんのレイモンド・カーヴァーに似ているんですかね?

10篇の短篇と2篇のエッセイが収められています。
私が一番おいてけぼりにされた気がしたのは、実はエッセイの部分だったかもしれません。

好きだった物語をいくつかあげてみます。

『むかし、そんな奴がいた(I Got a Guy Once)』
ダニーから言いくるめられ、ずっとただ働きをさせられたせいで、母屋を人に貸し
自分は離れで暮らす始末です。
ある日ダニーが破産して賃金を払えないと言いました。
しかし、その3日後、ダニーが他の木こりを雇ったと人づてに聞きました。

ダニーという人は良い人ではないんです。 こんな上司も友達も嫌ですね。
でもなぜか、最後にダニーがすごく可哀想に思えます。 自業自得なのに…
“ 憎めない人 ” について考えさせられる、というと大げさですが心にひっかかります。

『石の箱(A Box of Rocks)』
子供ができないとわかった後、妻の妹が娘を預けたいと言ったので3年間育てました。
娘が5歳になった時、再婚した妹が一方的に引き取ると言って泣き叫ぶ娘を連れて行きました。
その後妹から娘の服を送れと言ってきます。 妻は石を詰めた箱を送ってやりました。

あまりにも一方的な妹が悪人のように思える前半と、夫が頑なすぎる妻を不安に思う後半、
どちらをどう思えばいいのかわからなくなってきます。
板挟みになった旦那さんの気苦労を考えると「仲直りしたら?」と言いたくなりますが…

『祈る女(The Woman Who Prayed)』
ずっと幸せな結婚生活を送ってきたドッティは
ある日ガレージでヒルダから夫に宛てたラブレターの束を見つけました。
ヒルダとは学生時代にも男の子をめぐって一悶着ありました。
ドッティはその夜ラブレターを燃やし、祈るようになりました。

主人公の女性は、祈っている間だけは夫と相手の女のことを忘れることができます。
不信心な私ですが、こんな時には神様がいてくれて良かった…と思うかもしれません。
彼女の祈りが通じればいいんですけどね。

どの物語も登場人物が少なくて寡黙です。
誰にでも言い分がありそうなのに誰も何も言わない、という感じでしょうか。

どの物語でも、語り手、あるいは主人公を不愉快にさせる相手が登場しますが
そこに悪意があるのかどうかは明瞭ではないんですよね。
他人から見ればあまり気持のよいものではない行動にも
なんらかのわけがあるのかもと、少しは理解できたような気がします。

人の分別なんて、時と場合によっては立場が完全に入れ替わってしまうかもしれません。
そんな警告を発しているようね…と、読み終わってしばらくしてから思いました。

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