まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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スウェーデン女王 クリスティーナ

2011-08-22 01:18:26 | スウェーデン王妃
名君と言われつつ…謎が多い女王
スウェーデン女王 クリスティーナ


1626~1689/在位 1632~1654

たぶんスウェーデン王室の中で最も名高い女性の一人であるクリスティーナについては
たくさんの本が出ているし、研究者もたくさんいます。
なにもかも書いていたらとんでもないことになりますんで
謎とされているあたりをかいつまんで紹介します。 詳しくは伝記を読んで下さいな。

        
クリスティーナは、30年戦争の英雄グスタフ2世アドルフの唯一の子供です。
生まれた時は毛深くて、てっきり王子が生まれたと大喜びされました。
王女が生まれたと聞いた王妃マリア・エレオノーラは落胆しましたが
グスタフは「我々皆を騙したのだから賢い子になるだろう」と歓んだそうです。

なんでも赤ちゃんの時に目の前で大砲を打たれても泣かなかったとか
グスタフの最後の出兵の時、滅多に泣かないのに3日間泣き止まなかったとか
「さすが!」なエピソードが多数残ってますが割愛します。

グスタフは王妃マリアにうんざりしてまして、もう子供はつくる気が無かったみたい…
早々にクリスティーナを後継者に指名し、古典や神学に加え帝王学を学ばせて
騎馬・剣術・狩猟をさせるなど、まるで王子のように育てました。
また、王妃マリアがクリスティーナに悪影響を及ぼしては大変!と
なるべく遠ざけるようにしていました。

クリスティーナもきれいなドレスやおリボンなど女の子っぽいものに全く興味はなくて
誰かが止めるまで勉強に没頭したそうです。
洋服にインクがついていたりほつれていたりして注意されると
「そういうことは他にすることが無い人に言えばいい」と頓着しませんでした。

グスタフが戦死して、女王に即位した6歳のクリスティーナは
男装で堂々と議会に現れ、議員たちから喝采を浴びました。

5人の元老で構成された摂政たちが幼いクリスティーナを補佐することになります。
中でも有名なのは、グスタフから絶大な信頼を得ていたオクセンシェルナです。
オクセンシェルナはクリスティーナが18歳になるまで側でサポートしましたが
女王にも反抗期は訪れたようで、彼のことをうるさく思い始めました。

クリスティーナといえば30年戦争を終わらせた君主として有名ですが
実はオクセンシェルナが止めるのも聞かず、敵国にかなり譲歩して
有利に運んでいた戦争を打ち切ったようです。
国の財政や庶民たちの暮らしを思ってのことでしょうが
一部では戦争を続ける限り、軍事に長けたオクセンシェルナが自分より目立つので
それを嫌って無理矢理終わらせた、という意見もあります。

クリスティーナは、突然冷酷になったりする面はありましたが
知的で快活で話術に優れていて評価の高い女性でした。
スウェーデンを文化的に向上させようとフランスから芸術家や文学者を招いたり
学校制度を充実させました。
女王自身の生活は質素なものでしたが、宮廷作法にはフランス式を取り入れました。

大国の仲間入りを果たした重要拠点の女王とくれば縁談もいくつかありましたが
従兄弟にあたるカール・グスタフ以外の縁談には関心を示しませんでした。
エバ・スパーレという女性に熱を上げたというエピソードもありますけど
男性との噂もいくつかありました。

そんなクリスティーナは、即位から24年目の1650年に戴冠式を行ったのですが
翌年退位したいと言い出しました。
スウェーデン議会はびっくり  さらに驚いたことには
いつのまにかカトリック信者になっていました。

説得を重ね思いとどまらせていた女王の退位でしたが、1654年、
クリスティーナが27歳の時、とうとう退位することになりました。

理由は不明です。
前年に罹った病のせい、財政問題、宗教問題、倦怠感、ただの虚栄心などなど
いろいろな説はあるんですけど、どれも決定打ではないみたいです。

その後ローマに渡ったクリスティーナは、教会での態度が悪すぎて叱られたり
枢機卿と恋愛問題を起こしたりといろいろ問題を起こします。

しばらくはヨーロッパ各国になんだかんだと首をつっこんでいましたが
そのうち変わり者の元女王にどの国もうんざりして相手にしなくなりました。

1660年には急に女王に復位したいと言い出していますが無視されて
とうとう(やんわりと)国外退去させられてしまいました。
ローマに戻ったものの時の流れとともに忘れられ
お金も心許なくなってひっそり晩年を送ったみたいです。

62歳で亡くなり、サン=ピエトロ寺院に葬られました。

(当時の君主なら)多少性格に問題があっても、真面目に政治をしていたら
マリア・テレジアエカチェリーナ2世並に賢女王と言われたかもしれないですよね。
もちろん、賛否両論はありましょうが…

とにかく、謎が多くて興味深い… 新たな研究結果を待ちたいですね。

(参考文献 下村寅太郎氏『スウェーデン女王クリスチナ』 M.ニコラス『世界の悪女たち』
      武田龍夫氏『物語北欧の歴史』『物語スウェーデン史』
      三浦一郎氏『世界史の中の女性たち』 Wikipedia英語版)
コメント (4)
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