仇討ち

車で帰宅中。
歩道もないような道をスイスイ進んでいっていると、前方に中学生らしき少年がいた。

その中学生。
竹刀を持って振りかぶってんの！
両手をあげて竹刀を体の後ろにスタンバイし、いつでも打ち込める姿勢だ。

こわっ！

なにしろ狭い道路だから、もしその竹刀が振り下ろされればボクの車を直撃すること
になってしまう。

狙いは何だ？

通り魔的なものだろうか？
あたり構わず道行く車を竹刀でぶった切っていく新手の通り魔かもしれない。
それともボク個人を狙ってるのだろうか？
父の仇とか？
仇討ちされる覚えはないが、何かしらこの少年に恨みをかうようなことをしでかして
しまったのかもしれない。

あっ！
そういえば３日前。
車でトンネルを走っていたら、車体が右に傾いたことがある。
グンニョって何かを踏んづけてしまったようで、バックミラーを見るとどうやらそれ
は犬だったようだ。
申し訳ないことをしてしまった…。
車はひっきりなしに通っていたので、どうみてもボクが跳ねたりしたわけではないの
だが、やっぱり物凄く罪の意識に苛まれた。
あのグンニョって感触がしばらく忘れられなかったもんね。

もしかすると…

あの犬の子供か？

父犬の仇をとるため人間の姿に化け、あの時ひいていった車を一台一台斬りつけてい
っているのかもしれない。

許してくれ！！
わざとじゃなかったんだ！
勘弁してくれ！！

と、切られる覚悟でその中学生の前を恐る恐る走行していったら…

なんのことはない。

竹刀を構えてると思ったら、ガムテープを長く伸ばして遊んでるだけでしたわ。

なんじゃそら。
つまんないオチ。

めでたしめでたし。