しみじみとした家族愛と人間の絆が謳われた、すがすがしい作品。
舞台は島根県隠岐の島。島に伝わる伝統相撲にかけた男の物語だが、それが女性の視点から描かれるので、汗臭さより爽やかさが香ってくる。
子連れの再婚であるらしい男には、今まさに伝統相撲の取組の一番が迫っている、という幕開けである。
そこに至るまでの過去と進行形の現在がカットバックで描かれる。結果が分かっている再婚までのじれったいまでの告白劇も好もしい。
「ロッキー」張りの絶対勝てそうにない相手との取組も、どうなる?のミステリーで大いに引っ張ってくれる。
「伝統」は、勝者が力を尽くして敗ぶれた者に対して見せる心の広さにある。そこで敵役には、憎々しげでありながらさすがに土俵に上がる者だけのことはある度量をバランスよく体現していることが求められる。主人公とのぶつかり合いは見ものである。
負けたものが実は勝っていることがある、という日本の美徳を再認識できる。
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