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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「スパイダーウィックの謎」

2008年04月18日 | 映画(サ行)
 「ネバーランド」「チャーリーとチョコレート工場 」の子役フレディ・ハイモアが主演するファンタジー作品。しかも今回は双子の二役だからファンには倍の楽しみがある。

 妖精世界の進入を阻む結界をめぐる攻防の物語なので、妖精やらモンスターやらがウジャウジャと出てくる。実写との合成やまったく違和感の無い双子の描写などSFXは素晴らしい。

 ただ天才子役の呼び声が高い逸材フレディ・ハイモアを得ながら、物語自体がやや低年齢層向きの印象だ。この手のファンタジーは主人公が家庭的な問題を抱えているケースが多いが、本作もその例に漏れない。

 その心理的な葛藤とスパイダーウィック家の過去の事情が、もう少し大人向けに書き込まれたら素晴らしい作品になっただろうなと思える。

 悪い妖精はゴブリンと呼ばれているが、「スパイダーマン」で悪役ウィレム・デフォーはグリーン・ゴブリンという怪人に変身していた。このゴブリンがまことに騒々しい。一方で花の妖精は限りなく美しく、優雅で可愛いのだが物語には絡んでこない。

映画 「スウィニー・トッド」 ~ 映画の後に何食べる?

2008年02月26日 | 映画(サ行)
 血と惨劇のミュージカル。

 予告編では歌のシーンがほとんど無く、途中でミュージカルなんだと分かるくらいだったが、本編はいきなり陰鬱な画面に歌がかぶさってくる。

 やっぱりミュージカルは楽しく夢のある話がいいな、と言うのが正直な感想。せいぜい「オペラ座の怪人」あたりが限界かなとは思うものの、でも名作と言われる「ウエストサイド物語」も「サウンド・オブ・ミュージック」も「屋根の上のバイオリン弾き」も路線としてはシリアスだ。

 ティム・バートンの怪奇路線は「シザーハンズ」にしろ「コープス・ブライド」にしろ、底辺に物悲しさが漂うところに支持を集める要因があったと思うのだが、本作の場合はひたすら一直線に復讐の鬼となった男の末路が描かれ、描写もショッキングだ。

 ジョニー・デップもヘレナ・ボナム・カーターも白塗りに隈取の骸骨メイクで死相が濃厚に漂っている。ヘレナ女史は「フランケンシュタイン」以来の怪演だ。

 ジョニー・デップが切り裂きジャックを追う危ない警部を演じた「フロム・ヘル」も同じような時代設定のようだ。こちらには「エレファントマン」も登場していた。
 まさに何でもありの世紀末ロンドン。バートン監督の色調にピッタリと一致する時代だ。

映画 「ジェシー・ジェームズの暗殺」

2008年02月22日 | 映画(サ行)
 西部劇というがその要素はゼロ。文学的な香気が漂う、かつてのアメリカの物語だ。

 タイトルロールのジェシー・ジェームズはブラッド・ピットが演じているが、主人公はむしろ彼を暗殺するロバート・フォード(演ずるケイシー・アフレックはアカデミー助演候補)で、その彼の方も暗殺されてしまうまでの映画、と言った方が良いかもしれない。

 ジェシー・ジェームズがアメリカでいかにポピュラーな存在かを知らないと、少し分かりにくい。

 ロバート・フォードはなぜジェシー・ジェームズにあこがれるのか?
 ロバートはジェシー・ジェームズの本を持っているが、なぜまだ生きている悪党が本になるのか?
 悪党を退治したはずの暗殺者の方がなぜ卑怯者と呼ばれ、自身が暗殺されるにいたるのか?

 これらの疑問はすべて、ジェシー・ジェームズに対する、当時のアメリカ大衆が抱いていたイメージを理解していないと解決しない。それを知らない日本の観客はこの作品を見て、ジェシー・ジェームズが単なる列車強盗のリーダーではないらしいと言うことが、それとなく分かってくるといった按配だ。

 随所に挿入される雄大に流れる雲の画像や、逆光に浮かぶ木立など心理劇を文学的なタッチで描いた映像は美しい。ただ少し長いのと、紹介も無く新たな人物が現れるので、どこで出てきた人だったかなと考え出すと映画の流れについていけずに、途方に暮れる。

 短期の上映でヒットもせずに姿を消すが、じっくり見直してみたい作品だ。

 制作にはブラッド・ピットのほかリドリー・スコットなども名前を連ねている。ジェシーの兄役の重鎮サム・シェパード、ロバートの兄役サム・ロックウェルもなかなか良い。

映画 「シルク」

2008年02月20日 | 映画(サ行)
 詩的な作品。

 絹を唯一の産業とするフランスのある町が日本から蚕の卵を調達する、当時としては命がけの旅が描かれる。

 旅の描写は簡潔ながら経由する各地のロケだけでもかなり手がかけられている事が分かる。主人公はその旅を3回もこなすのだが、船と動物と徒歩しか移動手段の無い時代に、天候の影響もあるだろうに良く無事で往復できたものだ。
 が、そこに主眼があるわけではないので、その苦労はほとんど語られない。 

 では、何がテーマかというと、主人公が日本で出会うミステリアスな女性に対する「思い」の映画なのだ。

 その思い焦がれる女の肌が「シルク」と重なるのだろう。「だろう」というのはそこのところがあまりうまく描かれていないからなのだ。

 日本のパートは良い役者を揃えながら、「ミステリアスな異国」の描写に留まる。悪いことには、それがミステリアスというよりは不可解極まりない描き方なのだ。そもそも、主人公が忘れられない日本女性がどういう立場の人間であるかも分からないのだ。

 日本人の目から見るからそうなので、外国人が見れば、例えば我々がジプシーの生活描写を見るのとそう変わらないような見方で見ることが出来るのか?

 詩的なと言ったが、物語のキーとなるのは作中に出てくるある手紙だ。一種のラブレターなのだが、実際ここまでまわりくどいやり方で思いを相手に届ける必要があったのだろうか、というのが見終わっての感想である。

 坂本龍一の音楽はさすがに美しく、文芸作品のムードを味わうには良いのだが・・・。

映画 「絶対の愛」

2008年01月07日 | 映画(サ行)
 キム・ギドク監督作品。いつもの寡黙な作風とは正反対。

「整形」がテーマだが、姿かたちが変わることによって自己のアイデンティティーが揺らぎ始める。

 相手に対して「いつも同じ顔ですまない」という女の感情が、まず、理解できない。整形で別人になった女性の物語は一人の男を中心軸にしたメロドラマとして成立する。しかし、男の姿かたちまで変わってしまうと軸をなくしたドラマは混沌とした迷宮のようで、観客は自分の居場所としての軸をどこに定めて良いか分からなくなる。

 その酩酊感が登場人物の人格の揺らぎと共鳴してくるかのようだ。これまでのギドク作品に期待して足を運んだら困惑するかもしれない。

 劇中に彫刻公園が登場するが、このロケ地は芽島(モド)という島だそうだ。

映画 「幸せのレシピ」

2007年11月07日 | 映画(サ行)
 話を聞いてタイトルも内容も似ている、と思ったら以前公開されたドイツ映画「マーサの幸せレシピ」のリメイクだった。はっきりした記憶は無いものの、なかなか良く出来た映画だと思ったことは確かだ。

 だからこのハリウッド版はパスしてもいいかな、と思いながらも見に行ったのはキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、アーロン・エッカート、アビゲイル・ブレスリンという配役の良さと監督が「シャイン」のスコット・ヒックスだったから。

 その期待は大きすぎたとしか言えないが、楽しめるハートウォーミング作品にはなっていた。

 ニューヨークが舞台なので、その人気レストランの看板シェフという位置付けが前作よりはイメージしやすいものになっている。ヒロインがセラピストの元に通っているのもアメリカらしい変更点の一つだが、あえて言えば、この役がもう少し魅力的にストーリーに絡んで欲しかった。

映画 「サン・ジャックへの道」

2007年10月11日 | 映画(サ行)
 ロードムービーにして群像劇。作る側としてはかなりの難題だ。さらにキャストは知らない役者さんばかり、かつ最近は公開本数が少ないフランス映画。したがって日本での興行的な条件は極めて悪い。

 でも良く出来ている。

 フランスからスペインの聖地を目指して1500kmを2ヶ月かけて徒歩で歩く、ガイドを入れて9人の「巡礼団」の物語だ。
 家族間の事件が多い最近の日本だが、本作でも犬猿の仲の3兄妹を含む他人同士がどうまとまっていくかをカメラが追っていく。

 兄妹は死んだ母親の遺言で、この巡礼を達成することが遺産相続の条件になっている。
 冒頭のタイトルバックは郵便局の作業室で、機械化された郵便物の仕分けから配達人の手によって3人の手元へその知らせが届けられるまでの様子を丁寧に描写している。
 最後にこの「郵便局」が意外な複線にもなっていた事が分かり可笑しい。

 延々と歩き続ける「旅」を映画としてメリハリを持って成立させるために、各エピソード、旅の途中で出会う人々、そして随所に挿入される、登場人物が眠りについたときに見る夢の映像(これがまたシュールなアクセントになっている)が心地よいリズムで絡み合う。
 いがみ合いで始まった険悪な旅はいつしか癒しの旅へと変容している。

 見終わった時この旅の友の面々がなんともいとおしく感じられ、こんな仲間と旅をしてみたいと思わせてくれる。

 問題は2ヶ月の休暇が取れるか?だ・・・・。

映画 「ステップ・アップ」

2007年08月28日 | 映画(サ行)
 シンデレラ・ストーリーに「ロミオとジュリエット」型の身分差恋愛をプラスしたような、よくある、しかし爽やかな青春映画。

 すべてはラストのダンスシーンのためにある。

 登場人物の設定もエピソードの展開も定石どおり、こうなるのではという予想をまったく裏切らない。そういう意味で安心して気楽に見ることの出来る映画だ。だから物足りないかというと、音楽やダンスのシーンになると素晴らしい輝きを見せる。

 冒頭のタイトルで、アップテンポの音楽に乗せてクラシックバレーとストリート・ダンスを交互に見せていくが、ここにアン・フレッチャー監督の資質が凝縮されているようだ。もともとは振付師の監督デビュー作と聞けば納得、本作でももちろん振付けを担当している。

 役者は知らない顔ぶればかりだが、芸術学部学生の卒業公演というクライマックスにむけて、夢を実現する若者たちが主役の映画には、むしろそのほうが良いだろう。

映画 「シュレック3」

2007年07月27日 | 映画(サ行)
 このシリーズを初めて見た。新宿のミラノ3で鑑賞。ミラノ1では「ハリポタ5」、ミラノ2では「パイレーツ3」といずれもシリーズ物。このラインアップ中では一番弱い。でも料金は同じだ。同じ金を払うならどれを見る?という話だ。

 アーサー王からシンデレラ、白雪姫まであらゆる登場人物が出てくる。

 今回はそれら物語に出て来る悪役たちの反乱がテーマだ。だけどそれを力で制圧するのではないところが良い。
 そう深刻ではないので気楽にキャラクターを楽しみ、CGの進化に目を見張り、子供用ではない楽曲の選曲センスにアメリカ文化を知ることが出来た。

 今回は吹き替え版だったが字幕版は声の出演がまことに豪華。王妃役・ジュリー・アンドリュースの声が聞きたかったなぁ。

映画 「300」

2007年06月15日 | 映画(サ行)
 ケレン味たっぷりに描かれる古代西洋版の残虐歌舞伎のような印象だ。

 飾り立てられた動物やモンスター並みの異形の人間、仮面の軍団などヴィジュアルの限りを尽くした100万のペルシャ軍団が、まるで道路を練り歩く踊りの連のように、次から次へと繰り出してくる。

 迎え撃つスパルタの300人は肉体美を誇る裸の軍団。盾や兜で身を守ろうというのだから何か着ろよ、と言いたいところだが、それを見せるのがこの映画の肝なのだ。

 主眼は戦闘場面にあり、映像の様式美を強調したつくりで、全編が絵になっている。そのため腕や首が飛び、血しぶきが舞うが不思議と陰惨な印象はない。

 ドラマ的には分かりやすく、心理的な深い描写はなく心の葛藤もさらりと描かれる。したがって主役級を除けば演技よりも肉体の動きが重視されるわけで、配役は腹筋が割れているかどうかで選ばれたのではないかと思わせるほどだ。

 「ロード・オブ・ザ・リング」やジェット・リーの「英雄 HERO」を思わせる場面がある、こってり濃いソース味の作品。

 ラストのクレジットが単なるシルエットではなく3Dで処理されているのも注目。