SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「シルク」

2008年02月20日 | 映画(サ行)
 詩的な作品。

 絹を唯一の産業とするフランスのある町が日本から蚕の卵を調達する、当時としては命がけの旅が描かれる。

 旅の描写は簡潔ながら経由する各地のロケだけでもかなり手がかけられている事が分かる。主人公はその旅を3回もこなすのだが、船と動物と徒歩しか移動手段の無い時代に、天候の影響もあるだろうに良く無事で往復できたものだ。
 が、そこに主眼があるわけではないので、その苦労はほとんど語られない。 

 では、何がテーマかというと、主人公が日本で出会うミステリアスな女性に対する「思い」の映画なのだ。

 その思い焦がれる女の肌が「シルク」と重なるのだろう。「だろう」というのはそこのところがあまりうまく描かれていないからなのだ。

 日本のパートは良い役者を揃えながら、「ミステリアスな異国」の描写に留まる。悪いことには、それがミステリアスというよりは不可解極まりない描き方なのだ。そもそも、主人公が忘れられない日本女性がどういう立場の人間であるかも分からないのだ。

 日本人の目から見るからそうなので、外国人が見れば、例えば我々がジプシーの生活描写を見るのとそう変わらないような見方で見ることが出来るのか?

 詩的なと言ったが、物語のキーとなるのは作中に出てくるある手紙だ。一種のラブレターなのだが、実際ここまでまわりくどいやり方で思いを相手に届ける必要があったのだろうか、というのが見終わっての感想である。

 坂本龍一の音楽はさすがに美しく、文芸作品のムードを味わうには良いのだが・・・。


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