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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「スラムドッグ$ミリオネア」

2009年05月11日 | 映画(サ行)

 波乱万丈のサクセスストーリー。それだけでも成立するストーリーを、クイズ番組のあまりの正解率に対する嫌疑への証言、という知的な語り口で構成している。

 自分の人生がそっくり出題されるような、そんな偶然があるだろうか?と疑問を呈する向きもあろうが、それが運命だったのだとこの映画は言っている訳だ。納得してもらうしかない。

 ほとんど拷問に近い取調べを受けておきながら、何事もなかったかのように平然と翌日の生収録の続きに顔を出せることに驚く。黙って耐えるしかない、それがインドの現実であり、日本とは違う日常がベースにあるということだ。
 みのもんたがコマーシャルの間にあんなことをやっているわけではない。ですよね?

 最終問題は簡単すぎるが、物語の構成上、主人公の人生に於けるもっとも大切な場面が出題されると言う展開ならば・・・やむを得ない?

 エンドクレジットのダンスはとてもハッピーな気分にさせられて楽しい。オスカー作品にしては公開規模が小振りなのはスターが出ないから?

映画 「ストレンジャーズ 戦慄の訪問者」

2009年04月07日 | 映画(サ行)

 映画に描かれた陰惨な事件はいまだに解決しておらず、事実に基いたものだ、と最初に字幕で示される。救いは無いという事を観客はその時点で知らされてしまう。

 一軒の別荘を舞台にした、謎の侵入者による理不尽な暴力の一部始終を目撃するのが観客に与えられた使命、というわけだ。

 何か怨みがあるわけでもない愉快犯の粗暴な攻撃が、なぜだか分からないから怖い。

 味わいというか、後味の悪さはミヒャエル・ハネケ監督の「ファニー・ゲーム」に近い。その意味で人に勧める気にはならないが面白くないわけではない。

映画 「少年メリケンサック」

2009年02月23日 | 映画(サ行)

 「クドカン」こと宮藤官九郎監督作品。

 なかなかパワーのある怪作コメディに仕上がっている。

 どういう年代の人が見に行くのだろう。音楽的には若者世代、宮崎あおいが出ているというので篤姫ファンだった人たち、は可能性があるかもしれない。だけどその昔パンクだった中年のおっさんたちは来るのだろうか?是非来て欲しいのだが。

 佐藤浩一は他の劇場で「誰も守ってくれいない」が上映中だ。何でもこなし、何をやってもさすがのうまさだ。だけど本作の怪演はすごい。しかし、それに輪をかけて田口トモロヲがまたすごい。

 現代の若者の清潔感から言ったら許しがたい「対極の不潔」が、パンクバンドの全国ツァーで同居しているこの奇跡。何とかなるもんだ。宮崎あおいは何度放り出したいと思ったことかわからないが。

 結局パンクとはこの映画の精神構造そのものではないのかと思えてきた。必見(ただし、見たい人のみ??)。

映画 「図鑑に載ってない虫」

2009年01月15日 | 映画(サ行)

 食わず嫌いで劇場公開時は未見の三木聡 監督作品。しかし、面白かった。たぶん見ていない人もこれからも見ない人も多いだろう。もったいない。

 「死ニモドキ」という臨死体験をもたらす虫を探して、その体験をルポするよう命じられたライターのロードムービー。その道中に様々な人が関わって来るが、皆、どこか変わっている。その変わり方が尋常でないというか異常というか、ぶっ飛び具合もここまで来れば見事という人たちのオンパレードで抱腹絶倒だ。

 やがて5人になる旅の仲間もトンデモナイ人たちだが、なんだか楽しい。

  伊勢谷友介・松尾スズキ・菊地凛子を中心に、水野美紀・高橋恵子・片桐はいりなど脇も含めて豪華だったり、個性的だったりの顔ぶれが並ぶ。

 松尾スズキはペ・ヨンジュンに似ている、と言っていた人がいるが確かにそうかもしれない。もし、韓国でリメイクしてこの役をペ・ヨンジュンがやったらそれは見ものだろうな。

映画 「1408号室」

2008年12月04日 | 映画(サ行)

 スティーブン・キング原作のホラー作品。ジョン・キューザックが心霊スポット探訪記を得意とする作家役でほとんど一人舞台の主演。


 舞台は繁盛しているニューヨークのホテルのある一室。これまでに「邪悪な家」は映画になっているが、この場合、周囲はまったく普通のホテルでその中の限定された「邪悪な部屋」の話になっている。

 主人公は、1408号室に入るな!と一言書かれたハガキを受け取って興味を抱くが、誰がそれを書いたのか、またどういう理由でその部屋がそうなったのか何の説明も無い。

 サミュエル・L・ジャクソンが支配人役で、さすがの重厚な存在感を示すものの、ひたすら宿泊を拒否するのみで、何か重要な関わりがありそうでいながら最後までそれも描かれてはいない。

 部屋は結局、人の心の闇を暴き、精神の均衡を破ってくるらしいのだが、映画はその異常な精神を持ち始めた主人公の視点で描かれるので、時間の感覚も、空間の感覚も、意識も混濁してリアルなストーリーというよりは悪夢のような感覚を再現している。
 したがって冒頭に海で溺れかけた主人公の夢であったかのように思わせながら、それが覚めてもまだ部屋の仕掛けたトラップから抜け出てはいない。複雑な迷路の中の出口のない悪夢のようだ。

 ではすべては混濁した意識の中の妄想だったのかというと、そうではなかったことが分かるラストが怖い。

 テイストは「シャイニング」に近いかも知れない。

映画 「その木戸を通って」

2008年11月18日 | 映画(サ行)
 故・市川崑監督の旧作にして劇場初公開作品。なぜ15年もの間公開されなかったのかが不思議なくらいの名作である。

 お部屋番と呼ばれるお城の経理事務職などに従事している下級武士の話だ。したがって刀は持っているものの殺陣シーンはない。お家のっとりや悪徳家老が出てくるわけでもない。中井喜一演じる主人公の嫁とりにまつわる顛末が描かれる。

 それが一種の怪奇・幻想譚のような衣をまといつつ、下級武士の使用人一家との日々の哀歓がユーモアの気配に彩られて、巨匠円熟の味わいを醸し出している。

 ハイビジョン撮影された作品をフィルムに焼き直しての上映だが、映像は隅々まで美しく、開幕シーンの、まるで舞台劇のようにスポットライトが当てられた庭の木立からズームバックして、舞台となる武家の屋敷がワンカットでとらえられ、一気に物語世界に引き込まれる。

 ストーリーは人間界と交わった異界の女性がまた去っていく「雪女」や「鶴の恩返し」のような趣向だ。かつて市川崑は吉永小百合主演の「つる-鶴- (1988)」を撮っている。

映画 「ゾンビーノ」

2008年11月11日 | 映画(サ行)

 50年代のアメリカンホーム・ドラマ+ゾンビの異色コメディ。思わぬ拾い物で面白かった。

 脅威のゾンビを去勢する装置を開発した企業が、ペット化(奴隷化?)したゾンビを各家庭用に売り出している社会。しかし囲われた世界の外にはペット化以前の凶暴なゾンビの世界が広がっている。

 いじめられっ子の少年の家庭にペットとしてゾンビが買われて来る。我が家だけにゾンビがいない体裁を気にした母親が購入したのだ。父親はかつて、ゾンビ化した自分の父を殺してしまったトラウマからゾンビ嫌い。

 隣近所も変におかしな屈折した住民だらけの、ブラックな笑いに満ちた設定。

 次第に家族と情を通わせるゾンビの哀愁に満ちた表情が切ない(笑)。あなたがそうなる前に出会いたかったと告白する母親役がなんと「マトリックス」のキャリー・アン・モスなのも笑える。

 カナダ映画。ゾンビ映画の傑作ではないだろうか。

映画 「シッコ」

2008年10月27日 | 映画(サ行)

 マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー作品。今回はアメリカの医療保険制度がテーマになっている。

 これまでのムーア作品、「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」に比べると断然良い。これはまったく逆意見の人もいると思う。
 独善的、あくが強い、毒に満ちているといったムーア作品のコクが、今回は薄まっているからだ。

 より一般的で、身近なテーマであるがゆえに、その矛盾に監督と同じ立場で驚き、憤ることができる。

 アメリカとキューバ、フランスなど両極端を見せてくれる。では、日本はどうなのか?と考えると、ここでもひたすらアメリカ化の道を歩んでいるような気がしてならない。

 救急車は事前に予約しないと保険が適用されず馬鹿高いものになる、なんて知ってました? 予期できないから「救急」なんですけど。

映画 「三本木農業高校、馬術部」

2008年10月22日 | 映画(サ行)

 山の中の清流がキラキラ光るような印象の作品。

 高校馬術部の盲目の馬(といっても片方のみ)と担当部員の心の交流が描かれるが、動物の演出にはまったくあざとさや作為がなく、劇的な作りこみが感じられないところが弱点のようで、どっこい、だんだんその表情が見えるような気がしてくるから不思議だ。

 部員同士の葛藤、家族と進学の問題などをうまく絡めて、子馬の出産と別れ、ラストの障害競技出場へと物語が向かっていく。

 青森の農業高校を舞台にした、いかにも素朴なストーリー展開と描写ながら、いつの間にか心惹かれ素直な感動へと導いてくれる。

映画 「サッドヴァケイション」

2008年10月20日 | 映画(サ行)
 青山真治監督作品。

 まったく独立した作品として鑑賞可能ながら過去の「Helpless」「EUREKA ユリイカ」と響きあいながら三部作をなすユニークな構成になっている。

 圧巻は、三部作としては初登場になる石田えりの大きな母性だ。男にとっての胎内回帰の場、いつか帰っていくところで限りない包容力を持って迎えてくれる存在だ。そこから脱出したいものにとっては厄介な存在になるかもしれないが。

 誤解が生んだ復讐劇と家族の再生をじっくり見せてくれる。

 舞台は北九州、若戸大橋の袂にある小さな運送会社だ。従業員はすべて訳ありらしい、そんな彼らの吹き溜まりのようになっている。時代劇なら長屋の風情だ。三部作流れの登場人物以外も皆、何らかの物語を抱えているらしい事がわかる。

 それぞれを主人公にしたスピンアウト・シリーズも製作可能だろう。