SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「その木戸を通って」

2008年11月18日 | 映画(サ行)
 故・市川崑監督の旧作にして劇場初公開作品。なぜ15年もの間公開されなかったのかが不思議なくらいの名作である。

 お部屋番と呼ばれるお城の経理事務職などに従事している下級武士の話だ。したがって刀は持っているものの殺陣シーンはない。お家のっとりや悪徳家老が出てくるわけでもない。中井喜一演じる主人公の嫁とりにまつわる顛末が描かれる。

 それが一種の怪奇・幻想譚のような衣をまといつつ、下級武士の使用人一家との日々の哀歓がユーモアの気配に彩られて、巨匠円熟の味わいを醸し出している。

 ハイビジョン撮影された作品をフィルムに焼き直しての上映だが、映像は隅々まで美しく、開幕シーンの、まるで舞台劇のようにスポットライトが当てられた庭の木立からズームバックして、舞台となる武家の屋敷がワンカットでとらえられ、一気に物語世界に引き込まれる。

 ストーリーは人間界と交わった異界の女性がまた去っていく「雪女」や「鶴の恩返し」のような趣向だ。かつて市川崑は吉永小百合主演の「つる-鶴- (1988)」を撮っている。


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