日々、心のつぶやき☆

映画やフィギュアや好きな事を勝手につづっています。最近、弱気なのでダニエウ・アウヴェスのようなタフさが欲しいです。

「ボウリング・フォー・コロンバイン」

2010-06-22 11:38:21 | 映画・DVD・音楽・TV・本など


最近観た「コロンバイン高校銃乱射事件」の映画の数々。
今回はマイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」をDVDで観ました。


こちらは2002年の制作。
物語ではなく、マイケル・ムーア自ら、米社会の銃の問題に真っ向から真剣にぶつかっていくドキュメントです。
突撃取材あり、コロンバイン高校の事件でケガをした高校生を伴って様々な銃規制に向けた活動などなど、今回も精力的に動いていたムーア監督でした。
その中では鋭い視点あり、皮肉や笑いも散りばめてあり彼らしい。

まずはアメリカの銃社会の実態。
口座を開くだけで銃をもらえる銀行。
州の法律で銃を持つ事を義務付けているという現実。
視聴者の興味を引くために流され続ける犯罪や暴力ばかりのテレビ放送。
こうして「恐怖」をしっかり押しつけて、銃器に対して必要論ばかり説く。
こういった「恐怖の生産」から自然と銃社会への肯定論ばかり強くなってきたのですね。
それでも銃を持つ事でアメリカは世界で一番安全な国かと言えば、まったく逆であるのは世界で認識されていますよね。


隣国のカナダの銃の実態と比べていました。
アメリカをしのぐほど銃が流通しているカナダでは驚くほど銃犯罪が少ないのです。
それはカナダの国民が安全のために家に銃を携帯して内にこもるのではなく、常にオープンに暮している事から理由がわかるような気がします。
とにかくカナダ人の表情がやわらかい。
カナダではほとんど家に鍵をかけないとか。
これには驚きました。
実際にムーア監督が何軒も玄関をいきなり開けちゃうのです。
米社会では撃たれても仕方ない行動のはず。

そしてカナダの高校生に聞くと、いろいろ悩みがあっても銃で復讐する気持ちにはならない。
もしやり返すとしたら「いたずら」程度かな・・・と。
だからコロンバイン高校の犯人のようにずっとずっといじめられ虐げられて最後に負の感情が爆発してあのような乱射事件になったのはカナダでは考えられないのでしょうか。
カナダだけでなくいろんな国の銃犯罪率の低さも訴えていました。
というより、米社会の銃犯罪が飛びぬけて多すぎるのです。
その理由が銃の普及率だけではないアメリカの社会そのものに理由がある事を感じました。

小さい時から負け犬にならないようにプレッシャーを受けて育つ社会。
そのために人を蹴落としても自分のアピール面をを必死につけようとする。
犯罪の報道の嵐と消費を促すCMに埋もれながら人々は生活していて、国レベルでは多くの武器を生産し輸出して当たり前のように世界のあちこちで戦争を起こすアメリカ!
根の深いこの問題をいろんな角度で監督は撮り続けてくれました。
アメリカの歴史を見事に皮肉るアニメがまた凄かったです。



コロンバイン高校の事件後に過激なミュージシャンとして知られるマリリン・マンソンのインタビューが一番心に残りました。
反社会的だというだけで非難されていた彼が淡々と言う言葉。
「事件が起こる理由の犯人に俺をするのは簡単だ。
メディアは恐怖(犯罪やエイズや洪水の報道)を流し続けて、画面が変われば消費を促す消費の一大キャンペーンばかり。
コロンバインの事件の日にアメリカはコソボを攻撃している。
でも大統領のせいにはならない。
コロンバイン高校の被害者に対しては、「言いたい事はない。黙って彼らの話を聞く、それが一番大事だ」
これらの言葉を聞いて何て凄い人なんだろうと尊敬してしまいました。
とにかく一番まともな考えの持ち主だったのです。


コロンバイン高校の事件で重傷を負った二人を連れて、実弾を販売しているK・マートに販売を辞めてもらうように訴え続けるシーンがあります。
何日かかけてその店では段階的に販売停止にするという返答がありますが、何かを動かすためには小さな一歩ですが、意味が大きい事に思えました。
K・マートでそうなっても、今の銃社会の流れを完全に変えることはできないはず。


そして「全米ライフル協会」の会長である俳優の故チャールトン・ヘストンにインタビューする所も見応えがありました。
(後にいろいろ調べるとマイケル・ムーアはこの映画の中でチャールトン・ヘストンの言葉を入れるシーンを時期的に操った現実があるそうです。
つまり、コロンバインの事件直後の言葉として挿入して編集した点とか)
そうは言っても「アメリカ=銃を持って良い国」というストレートな考えを持つチャールトン・ヘストンのような大人がすごく多いのは現実でしょうね。
映画社会で成功した彼が遺したものは何だったのだろう?


最初から最後まで意味の大きい内容でした。
「恐怖」が溢れているアメリカでは銃を持ち警備を厳重にした家にこもり家族を守る、それが一番の安全と思われるけど、この国の根本から変える事は無理なのでしょう。
戦争が好きな国、いつも一番でいたい国、利権がらみの国、そんなアメリカが見えました。

内容的には観て良かった作品です。

今回の評価は・・・    星4つ   ☆☆☆☆














マイケル・ムーアの言葉より

「アメリカの国民1人当たりの銃の所有率はカナダやスイスを下回る。
でも、アメリカではカナダの百倍以上も銃で人が殺されている。なぜか? 恐怖のせいだ。
人は普通、貧しい人を見ると可哀そうだと思う。ところがアメリカ人は貧しい人たちを見ると『何かされそうで怖い』と思うんだ。ひどい個人主義だ。」


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