「グッド・ウィル・ハンティング」や「小説家を見つけたら」や「ミルク」でお馴染みのガス・ヴァン・サント監督の「エレファント」を観ました。
あのコロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件を題材に作られた映画です。
カンヌではW受賞(パルム・ドール賞と監督賞)をした作品です。
私がこの「エレファント」を観ようとしたきっかけは、先日「明日、君がいない」を観た後に同じような系列の作品と知ったからです。
「明日、君がいない」はハイスクールで起きた自殺。
「エレファント」はハイスクールで起きた銃乱射事件。
テーマは違うのですが、撮影の手法や高校生の描き方がとても似ている作品でした。
さて、こちらの「エレファント」は2003製作の映画。
(ちなみに「明日、君がいない」は2006年)
コロラド州コロンバイン高校であった衝撃の銃乱射事件を題材にして、普通の高校生が突然起こした事件を考え「なぜ?」と世界に問いかける問題作です。
登場する高校生は本名で出ていて、その存在もリアルに感じました。
冒頭に出てくる少年ジョン・ロビンソンは中でもピュアな高校生。
(後に「ロード・オブ・ドッグタウン」のステイシー役で好演した彼です)
その他、何人かの高校生の男女がそれぞれの特徴を少しだけ感じさせて登場。
でもそれほど人物の描写は詳しくありませんが・・・
ただ淡々と過ぎる高校での日常を映し続けています。
そして銃乱射をする男子高校生(アレックスとエリック)は本当に普通の高校生に見えました。
学校ではいわゆる人気集団がつきもので、そのグループから日常的にからかわれたりいじめられたりしているアレックスとエリック。
いじめの対象になっている者はそれに対抗するために(やり合うという意味ではなく、あくまでも自警団の意味で)弱者同士くっつくという現実。
アレックスとエリックがネットで銃を調達し、試し撃ちをし、計画どおりに学校に銃を持ち込み事件を起こす。
そこまでの経過が何てことない自然の流れで出来てしまう事に改めて怖さを感じました。
監督は作品の中で何もメッセージを込めていません。
私にはそう思えました。
ただ、事件を知ってもらう事と映画を観て何かを感じてもらうために作られたように思います。
そして「エレファント」の意味を二重三重に考えてつけたと聞き、題名の奥深さには感銘しました。
「明日、君がいない」と「エレファント」を観て、テーマは違っても手法が似ているのでどうしても比べてしまいます。
「明日、君がいない」は登場人物の背景がとても鮮明で痛々しかった。
それに比べると「エレファント」はどうしても背景が弱くて、少ないシーンから想像するしかないのはちょっと残念でした。
それはガス・ヴァン・サント監督の意図した所かも知れませんが・・・
ここまで書いて、この二つの作品は比べるべきものではないのでしょうね。
「エレファント」の描き方や作品の意味は観る人に全てまかされているのを実感しました。
今回の評価は・・・ 星3つ半 ☆☆☆★
銃のはびこる社会には解決策はないと思います・・・