ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

北国の少女たち

2011-09-25 03:56:32 | フリーフォーク女子部

 ”Girls from the North Country”by Dala

 土曜日の昼前、急な用事が出来て、いつものTシャツ&短パンで愛用のバイクにまたがり、エイヤッと出かけたのだが、一分と走らぬうちに吹き抜ける風に震え上がり、あわててUターン、家に着替えに戻った、なる間抜けごとがあった。
 何なんだよ、この気候は。昨日までは盛夏、今日からは秋の盛りって、そんな馬鹿な。などとぼやきながらアクセル吹かしつつ、長袖のトレーナーの捲り上げた袖口に遊ぶ冷やっこい風に、秋口にはなぜかいつも頭の隅に浮かぶ、いくつかのイメージを噛み締めた。
 中学から高校にかけて好きだった、もちろん話の一つもしたことのないまま終わった同窓女子のことや、ポーンと高い青空の下で気ままに出かける秋の旅や、もう顔を合わさなくなってずいぶんになる古い友人の顔など、もうとっくに遠いものになってしまったものたちのことなど。

 今回、取り上げるのは、カナダの女性フォーク・デュオ、”Dala”である。昨年、彼女らのアルバムをこの場で取り上げたはずだが、あれがデビュー盤になるのかな。北国らしい、爽やかな美しさのあるアルバムだった。
 今回はライブ盤である。それにしてもこのタイトル・ナンバー、もちろんディランのあれなのだが、まるでDalaたち二人のための曲みたいじゃないか。まあ、私は似たような歌詞のスカボロー・フェアでも歌って欲しかったんだがね。その代わりというんではないが、ジョニ・ミッチェルの”Both Sides Now”がカバーされている。あくまでもカナダにこだわる、かぁ・・・

 で、2曲目の”マリリン・モンロー”という曲が非常に気になる。前作にも入っていなかった曲。この盤には歌詞カードがないんで、正確な歌詞がわからず、あれこれ言うことが出来ないが。
 簡単な伴奏は入っているが、実質、二人だけのステージと言っていいだろう。ワイルドにコードを叩きつける生ギター、時にパワフル、時に繊細に、二人のハーモニーが生だけに生々しく響き渡る。
 聴いていると、カナダ人の女の子になってギターケースを肩に、オタワでもモントリオールでもいいや、もう雪の降り始めた町を歩きぬけてみたくなる。大股で、力強く歩を進める。チャラチャラした若い男たちが声をかけてくるが、それどころではない、私にはライブがあるのだ。

 自分たちの歌の世界を見つけた、そんな感動に満たされた二人が、嬉々として音楽の中にいる。そんな二人の充実感に共振してみる、そのことが快いのだ。
 このアルバムで一番美しい瞬間は、やはり中盤、あの”Heat Like a Wheel”からトラッド曲、”Red is the Rose”へと流れる場面だろう。美しいメロディに乗って澄んだ余情が、スッと透明になり、ずっと空の高くの永遠に溶け込んで行く。
 ラスト前に、”Oh Susanna”の4人をゲストに迎えてバンドの”The Weight”を歌いまわす。こんな具合のこの曲の使い方があったとは知らなかった。

 ジャケの二人は、薄明の中で線香花火みたいなものを持って歩いているのだが、なんだか蛍狩りをしているようにも見える。それにしても、本当は何をしに行くところなんだろうな。






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