ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

Summer In The City

2007-08-19 23:47:51 | 北アメリカ


 先にこの話に関連する話題は書いているのだが。

 60年代のニューポート・フォークフェスティバルにおいて、ボブ・ディランが始めてロックバンドをバックにつけて歌い、観客からの大ブーイングを浴びた有名な事件の翌年、自身がロックバンドであるラヴィン・スプーンフルがフェスティバルのトリをとり、今度は大いに喝采を浴びた、とのこと。
 たった一年で観客の意識もずいぶん変わるものである、と私が読んだ(もちろん、日本語訳)アメリカの音楽雑誌の記事は、風刺的なニュアンスよりはむしろ本気で不思議がっているような調子で結ばれていたと記憶している。

 で、それは電気楽器使用云々というよりもむしろ、ラヴィン・スプーンフルというバンドがジャグバンドミュージックなど、ニューポートの客好みのトラディショナル・ミュージックの要素を色濃く取り入れたバンドであるゆえに、観客には仲間意識を持って迎えられたのであろう、と私は推測するのであるが。

 ところで、そのスプーンズ(とアメリカ風に略する)のヒット曲中、もっともロック的というか、やかましい響きを持つ”サマー・イン・ザ・シティ”なんて曲(1966)はどうなんだろう?あの曲は、ガチャガチャとかき鳴らされるエレキギターのコード弾きをバックに、マイナー・キーの、いかにも”エレキでゴーゴー”なメロディラインを持っていて、スプーンズの得意とするトラディショナル・ミュージックの要素を生かしたロックとは別物のような印象を受けるのだが。

 もっとも、それは私が無知なだけであって、あの曲を、たとえば生まれて一度もアパラチア山脈の奥地を出たことがありません、みたいなアメリカ伝統音楽で煮染めたみたいな爺さんを連れてきてバンジョー弾き語りで、山地でアメリカ開闢以来変化もせずに伝承されてきた、なんてスタイルで歌わせれば、「ああなるほど、あれはあの曲が元ネタなのか。アイルランド民謡までさかのぼるわけだな」とか納得できたりするのかも知れない。
 不思議な転調のし具合といい、なんかそんな予感もしないではない旋律ではあるのだが。どうなんだい、ジョン・セバスティアン?

 それにしても、複数のギターが、特に目に付くフレーズも無しにただコード弾きでガチャガチャとかき鳴らされる、あの間奏のカオス状態(?)は、まさに熱気にゆだったような夏の街の埃っぽい喧騒を見事に表現していると思う。妙なダルさと苛立ちとが焼け付くような陽光の中で燻られているような、夏の街の空気感覚。

 もはやあやふやな記憶になっているのだが、確か”サマー・イン・ザ・シティ”は、アメリカでヒットしてから日本盤のシングルが出るまで、何の事情があったのか知らないが、時間がかかったのではなかったかなあ?
 それで、当時、大橋巨泉がやっていたプロモーション・ビデオを紹介する洋楽ベストテン形式のテレビ番組で、早回しとスローモーションを交互に使った、なかなかひょうきんな出来上がりのあの曲のビデオを見ながら焦れていた記憶があるのだが。

 しかし気になるなあ、”サマー・イン・ザ・シティ”のメロディの成立由来。裏話をご存知の方、ご教示のほど、よろしくお願いします。
 それにしても暑いですねえ。


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