ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

残暑のヴァレリー

2011-09-09 03:16:08 | その他の日本の音楽

 ”Valerie”by Blue Marble

 上に添付した写真を一見して、もうお分かりですね、ジャケ買いの一枚であります。初めて雑誌の広告でこのジャケの写真を見たとき、「こりゃ、収められている音楽がどのようなものであろうと、買うしかあるまいな」と思ったんだ。
 いや、実際、手に入れてじっくり見ると改めて、ジャケに使われているイラストはやっぱりいいねえ。シュールでちょっぴりメルヘン、ちょっぴりグロで。

 音を聴いてみると、「スチールバンド」とか「バイーア」なんてワールドもの好きの琴線に触れる歌詞が飛び出してきたんで、これはますますありがたいなと。
 ハードなロック音でも飛び出してくるかと予想していたサウンドのほうも、「ロック・ミュージシャンが繰り広げるブラジル音楽再構築」みたいなクリエイティブで広がりのある世界を提示しており、これは楽しい。
 二人の、いかにもマニアックそうなミュージシャンのユニットに、全曲の作詞も手がけている女性ボーカリストが加わって作られたこのアルバムだが、この組み合わせは今回だけなのか?

 ボーカルの女性の書く歌詞は、「明るい陽光きらめく南の海に浮かぶ水疱に浮かんだ、未来都市物語」のごときものをくり広げており、一つの架空世界のイメージを構築した上で、そこで起きるさまざまな事件を描いて行く、そのSFマインドが嬉しい。未来世界の夏休みを楽しませてもらっている感じだ。

 一つ苦言を呈せば、あまりにも音楽が安定し過ぎていないだろうか?もう少し不安定な部分、聴く者を不安に陥れる要素など音の中に紛れ込ませてくれたら、と思う。それがないんで、楽しみはしたものの、入れ込むまでは行かなかった次第。
 な~んかね、予定調和の世界というか、つねにトニックの音に戻ってきて終わるアドリブばかり聴かされている気分で、聴いていてちょっと退屈してしまうんだな。
 それこそ、ある種の悪意を秘めて人を幻惑するジャケ画の精神から学ぶべきだと思います、いやほんとに。出来のいい音楽であるだけに惜しい気がする。