ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

太陽と風の彼方に

2011-07-17 03:38:18 | ヨーロッパ

 ” Barí”by OJOS DE BRUJO

 スペインはバルセロナ出身のバンドだそうで、これが2002年に発表した2ndアルバムとのこと。なんか5~6年前に来日もしたようだが、わが国にどれだけのファンがいるんだろ?
 やっている音楽を一言で言ってしまえば、ヒップホップの要素を含んだフラメンコ、というところなんだろう。ハスキーな女性ボーカルとガットギターが中心となり、真正面から血の気の多そうなフラメンコ表現を突きつけてくるが、使われるコードがときにメジャー・セブンスぽくって、その世界をあまり泥臭い方向に行かせない工夫がなされているようだ。

 その裏でボコボコと都会の翳りを漂わせつつジャズィーなエレキ・ベースが唸り、リズムを刻むコンガとタブラとスクラッチ。ギターとボーカル掛け合いの素朴な世界に、唐突にホーンセクションが絡み、フラメンコから突然、キューバンっぽいラテンに流れたりする。
 女性ボーカルが早口言葉風ラップからお経みたいなノリになり、それに引っ張られるようにバンドがインド音楽化するあたり、なかなかエキサイティングな体験だ。そういえば、フラメンコ・ギターとインド風バイオリンの掛け合いなど、なかなか聴かせる。

 とか書いてみるとなんか楽しい世界みたいだが、いや実際、さまざまな音楽の要素、あちこちに顔を出してそれなりに楽しいのだが、あまりあちこち脈絡なく飛び回られると落ち着かないというか、いったい何の音楽だったのかと聴き終えてから首をかしげたりする破目になる。
 ”フラメンコを基調にしたかくかくしかじかな音楽”と、ミクスチュアならミクスチュアで、自分らなりのサウンドを確立してくれたほうが私なんかは聴き易いのだが。というか、私なんかは聴いていると”フラメンコ、勢いあまってインド音楽になだれ込む”なんてあたりが一番血が騒ぐんでその方向専門になってくれるとありがたいんだが。

 強い太陽の光と乾ききった大気と吹きすさぶ風の中で煮しめたみたいな、深い孤独の手触りがある盤だ。