ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

陽の恵み、トナーダ

2006-10-19 03:00:03 | 南アメリカ


 ”La Tonada・El Himno De Cuyu Vol.1”

 アルゼンチンは中西部に展開するサンファン、サンルイス、メンドーサの3州は、まとめてクージョ地方と呼ばれているようだ。そこはワインの産地として名高く、”ワイン街道”なる素敵なルートも開けているそうな。

 さすがは”産地”だなあ。そんな、太陽の恵みをいっぱいに浴びて育ったワインの芳香そのもの、みたいな音楽がクージョ地方にはあった。このアルバムに集められている”トナーダ”なる優雅な八分の六拍子、いかにも鄙びた土地において営々と愛されてきた、そんな手触りの大衆音楽である。
 
 土地柄といってしまえば、そりゃ南米はどこでも同じだよ、となってしまうが、クージョ地方はギタリストの名産地でもあるとか。

 まさにそれを証明するごとくの、有名無名の弾き手が聴き進むうち続々と登場し、それぞれに華麗なるギターの響きが畳み掛けるように繰り出され、そして伸びやかなリズムと甘美なコーラスが広がる。

 そのさまは、まるで太陽に向けて手を伸ばし、どこまでも伸びて行く樹木の生命力を想起させる。まさに大地の豊饒がワインのビンから吹き零れる、その瞬間を、そのまま音楽にしたような。

 行ってみたいな、太陽でいっぱいのワイン街道。まあ、酒を飲みたいのか音楽を楽しみたいのか、どちらがどちらやら。いや、両方だよ。