ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

猥褻表現・その他

2006-10-29 03:32:54 | いわゆる日記


 ”私もリアルタイムで手に入れて読んだ者の一人ですが、私は摘発騒ぎを聞き、「あの程度で中川五郎は英雄になっちゃうのかよ」とか、そういう方向で釈然としないものを感じていました”

 以上は、音楽評論家の小川真一さんのサイトで”folk report うたうたうた 冬の号事件”が取り上げられていたんで、乱入して書き込んでみた文章であります。

 フォークリポート事件といったってもう30年以上も前の話で、知らない人のほうが当然多いわけで。まあ要するに1970年、音楽誌であった”フォークリポート”に、歌手の中川五郎が”二人のラブ・ジュース”なる青少年のセックス初体験ネタの小説のようなものを書き、それが猥褻表現であるとして警察の摘発を受けた、そんな事件なんだけど。

 で、私は、「たいした小説とも思えないのに、あんなものを書いただけで中川五郎は”権力に弾圧される反体制のヒーロー”になってしまうのかよ」、とか、ちょっと別の方向で反発したものだったのです。当時の私の周囲の評価としては、”権力の横暴を怒る”みたいな方向一辺倒だったもので。

 そして、小川さんのページへの若い人たちの反応を見るに、なんだか”伝説の、あの小説がこれなのか”みたいな神格化の気配さえ感じる部分もあり、それもまたいかがなものか、時間の経過もあいまっての過大評価だよ!と、違和感を感じてしまったからでもありました。

 そもそも、私は反戦フォークの牙城みたいな高校で一人でロック少年をやっていて、「意識の低いバカ」って扱いをフォーク好きの奴らから受けていた過去の恨みもあり、フォーク好きの連中には根本的に反発がある。
 だからフォーク誌の摘発に対し、”権力側の弾圧”と入れ込んで反発する気にもなれなかったし、ましてや、リアルタイムを知らない若い人たちが”偉大なる神話”としてあれを認識してしまうのは、ますます納得が行かないのであります。

 だってさあ、ほんと、たいした内容の小説でもないんだよ。当時の警察、よくあんなものを摘発したなあ。もちろん、”反体制を気取る奴らへの見せしめ”って側面はあったんだろうけど。というか、それがすべてなんだろうけど。
 そして、いかにも”摘発してください”みたいな小説を、問題になりそうな時期を見繕って発表しておいて摘発されたからって文句言うってなんなんだよ?という方向で、私は首をかしげずにはいられない。

 でですね、実はここからは本題なんだけど、春歌とか、つまりエロ歌のタグイをステージで得意げに歌う奴も似たような理由で、虫が好かないと昔から感じていたのだ、私は。

 なんかね、特に状況を撃つような歌を作れるでもない連中が、そこら辺からすけべな歌を見繕って来て歌えば、それなりの弾圧とかも受ける事が出来て、それなりの”反体制のヒーロー”面さえすることが出来る、反骨の歌手としての箔が付く、ってのはいかにも安易じゃないか。

 その辺がいかにもうさんくさくて嫌だったわけです、私にとっては。

 などと書きつずっても、いまどき”反体制”が受けるご時世でもなし、全体に無意味な文章を書いてしまっているのかも知れないけどね。
 でも、ともかく人の良い今日の青少年諸君に言っておこう。過去の伝説を初めから信じ込んで受け止めるのは危ないぞ。ともかく、安易に乗せられるのは良くない。”分かりやすい反乱”ってのは、大体怪しいと考えて間違いない。と思うよ。