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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

そっちの私

2015-10-03 11:02:41 | ふと思ったこと

陽の光がふりそそぐ穏やかな土曜日の朝です。

いつの間にかカレンダーは残り3枚の10月に入っています。

こういうよい天気の日に思い出す光景があって。
それは10年前に亡くなった父の葬儀の日。

実家の菩提寺は、東京都と埼玉県の県境に流れる荒川の、
陸橋からもよく見える土手の上にあって、葬儀もそこで執り行いました。
その日も、今日のようによく晴れた日で、祭壇前に並べられた椅子から
立ち上がると、鉄橋の上を走り抜ける京浜東北線の電車の窓がきらきら
輝いているのが見えました。

あの電車にはどこかに出かける人が乗っていて、笑ったり話したり
座席で眠ったりしているのだろうなあと、喪服姿の私は思ったものでした。


川口駅から電車に乗るたびに、あるいは川口駅へと帰ってくるたびに、
電車の窓から、私はお寺の建物を眺めます。
その中には祭壇が飾られているかもしれない、そこから誰かが、
この走っていく電車に思いを乗せているかもしれないー。
10年前の、黒い着物姿の私が居るかもしれないー。
あの場所に居た私が、電車に乗っている私を見ていたように。



先日の『佐野洋子展』のあと、図書館で2冊本を借りました。
どちらも児童書の棚にあったものですが、私が上に書いたような感じが
描かれていたので、その偶然に驚きました。



この本の最初の短編、「はしか」。
病院のベッドに居るわたしが、お見舞いにくる母と兄を窓から見ているが、
いつのまにか、視点が逆になる。



こちらはさらにシュールな話で‥。
自由気ままに生きていた豚が、知らぬ間に家や家族を持たされた自分を
おかしいと思い、元の気ままな自分に戻る。聞きなれた声のする方を見ると
かつて妻だった豚と、一緒に暮らしていた時よりも大きくなった子供たちが居て、
自分でない、でも自分にそっくりの豚のお父さんとピクニックに来ている‥。


ここに居るのは、ほんとうに自分なのか。
あの時あの場所に居たのも自分なのか。
今ここにこうしてパソコンのキーボード叩いている自分。
電車に乗っているかもしれない自分。
商店街を歩き、大きな建物に向かっている自分。
ベッドの横の、開かない窓から雲の流れを見ている自分。


そっちの私も、元気ですか。




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