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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

あこがれの雪子ちゃん

2009-12-21 15:03:48 | 好きな本
各地でたくさん雪が降り始めていますね。

生まれも育ちも川口市なので、雪が降る日は、いつだって「特別」で、
それは大人になってからも変わりません。
雪が、日常的にたくさん降るところのご苦労を思うと、簡単に「雪っていいなあ」と
言えないことは百も承知ですが、それでもこんな本を読んだ後は、雪いっぱいの
毎日が羨ましくなって困ります。

雪だるまの雪子ちゃん
    江國香織 作  山本容子 銅版画


この本が発売されたときに、表紙の画像と、挿絵が山本容子さんの
銅版画だということを知り、もっと薄い本だと勝手に思っていました。
(『ぼくの小鳥ちゃん』みたいな体裁かなと‥)
図書館の予約がまわってきて、受け取りにいったら、しっかりとした
厚みを持った本だったことに、ちょっとびっくりしました。


さて、肝心の雪子ちゃんですが、こんな具合です。

  雪子ちゃんは雪だるまですから、雪でできています。
  でもみなさんがよくご存知の、ふつうの雪だるまとはちがいます。
  というのも、雪子ちゃんは正真正銘、野生の雪だるまだからです。
  そして、そのことをたいへん誇りに思っています。

野生の雪だるま?
そう、「野生」です。居るところには、居るのですねー

山のふもとの、小さなしずかな村のはずれに、郵便も新聞の配達も
とまり、停電してしまった豪雪の日、雪子ちゃんは、風にのって空からまいおちてきて、
百合子さんの家のカシの木の枝にひっかかりました。

ひとりで家を見つけ、人に会ったらきちんと挨拶をし、学校にだって、時折
気が向いたら行く雪子ちゃん。
好きな食べ物は、バターと生のさかなの雪子ちゃん。
トランプ遊びだって、なわとびだってできる雪子ちゃん。
夏っていうものがどういうものか、一生知ることがない雪子ちゃん。

本が終わるころには、すっかり雪子ちゃんに魅了された私がいました。
ひとりで生活している、雪子ちゃんの懸命さが、かわいらしく、
雪子ちゃんの隣に住んでいる百合子さんや、その友達のたるさんとの関係の
描き方が清々しくて。
そして、村にひとつだけの小学校へ通う、りゅうや、友花(ともか)ちゃんが、
雪子ちゃんのことを思う気持ちに、じんわりと涙が出ました。
そう。雪子ちゃんと、雪子ちゃんを取り巻く世界が、とっても好きになったのです。


そこに居る時は、そこがどれだけしあわせな場所であり、しあわせな時で
あったのかちっとも気がつかなくて、でも、後から振り返ったときにとてもいとおしくなる‥
それが「普通の毎日」の、普通だからこその、かけがえのないしあわせです。

「今」を過ぎた、すこし先の私は、どんな「今」をかけがえのない普通の毎日だったと
思うのだろうなあと考えてみました。
そうしたら、きーんと冷えた空気の中、登校する娘を外で見送った今朝の私が、
白く残った息のかたまりと一緒に、思い浮かんできました。
道路に出て左へ曲がるrに、私はいつもバイバイと手を振るのだけれど、
rははにかんだ笑顔をむけて、ちょっと手をあげるだけ。

繰り返しの毎日も、そこだけを切り取って、額に入れて外から眺めると、
なんだか鼻の奥がつーんとしてきます。






コメント
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