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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

風がつなぐ

2009-02-28 22:50:22 | 好きな本
ポール・フライシュマン第2弾は、『風をつむぐ少年』です。



1章から9賞までの話が、主人公の少年ブレントが
語り手になっている章(奇数章)と
別の誰かが語り手になっている章(偶数章)で、
交互に構成されています。

17歳のブレントは、自分の過失から交通事故を起こし、
それを償うために、アメリカ大陸の4つのはじっこを目指して、
バスの旅にでます。(4つのはじっことは、ワシントン州・
カリフォルニア州・フロリダ州・メイン州です。)

偶数章の語り手は、ブレントが償いのために作った〈風の人形〉
それぞれの場所で、見た人たちです。
いつそれを見たのかは、時間軸は描かれていないので、ブレントが人形を
作ってから数ヶ月後かもしれないし、数年後、あるいは数十年後
かもしれません。


前に読んだ『種をまく人』の時にも感じましたが、フライシュマンに
よって作られた物語は、とてもアメリカ的というか、アメリカそのもの
だなあと思います。

アメリカ大陸はとても大きく、東海岸から西海岸の間には、時差があり、
その距離は、日本からインドのそれと同じなのだと聞いたことがあります。
それがひとつの国になっているのです。
長距離バスに乗って、ひとつの目的地から次の目的地まで移動するのは
ちょっと思ってみただけでも、相当大変なことです。

17歳の少年が、そのバスにひとりで乗っているのです。
自分の内面を見つめないわけにはいきません。果てしない時間、バスに揺られているのです‥
偶数章に登場する語り手たちも、また、とてもアメリカ的です。
プエルトリコからの移民、アメリカ人の家庭で育つ韓国人のこども、
第6章に出てくるあばあちゃんは、ポーランド人で、アウシュビッツに
居たことがある人でした‥


ブレントが、自分から申し出たわけではない人形作りと、
人形を備え付ける場所への旅の中で、彼は今まで出会ったことが
なかったような人たちと出会い、星の名前や、音楽を奏でる楽しみを知っていきます。(人形作ることも楽しみになっていったはずだと思います)

〈風の人形〉を、ある日ある時目にした人は、もちろん、それが償いのための
ものだとは知るよしもなく、それでも、その人形に慰められたり、
救いを見出したりするのです。


人形を動かす原動力になっている風は、ブレントの髪をなびかせ、
木々を揺らし、誰かのハンカチを乾かし、思い出のにおいを
運んできてくれたりもします。

思いもよらないところで、何かと何か、何かと誰か、
そして誰かと誰かも、繋がっているのでしょう。


「風は目に見えないけど、ああいうことができる。見えなくても、
風にはパワーがあるわけよ。人間の思いも、それとおんなじ」

第2章に出てくるアレクサンドラは、風の人形を指さしてこう言いました。


コメント (13)
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