報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「作戦失敗」

2023-07-24 15:31:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日11時37分 天候:不明 東京都新宿区西新宿2丁目 都営地下鉄都庁前駅→大江戸線1103B電車・先頭車内]

〔都庁前、都庁前。飯田橋、両国方面はお乗り換えです。4番線は、中野坂上、練馬方面、光が丘行きです〕

 

 森下駅から都営地下鉄大江戸線に乗った私達は、あえて反対方向へやってきた。
 これも、鬼の男を撒く為の作戦の1つである。
 しかしながら大江戸線の電車は、基本的に座席が硬いので、ずっと座っていると腰が痛くなってくる。
 正月休みで、都心を走ると地下鉄も空いているので。

 愛原「ここで、乗り換えだ」

 私達は電車を降りた。
 発車ベルと発車メロディが同時に鳴り、光が丘行きの電車は発車していった。
 エスカレーターに乗り込んで、コンコースに上がる。

 

 リサ「!」

 その時、リサが立ち止まった。

 愛原「どうした?」

 リサは眉を潜めた。

 リサ「……鬼の臭いがする……!」
 愛原「何だって!?どこからだ!?」
 リサ「分からない。風に漂って、臭って来ただけで……」

 ここは地下鉄の駅である。
 地上から吹き込んで来る風、トンネルから吹いてくる風が時折強風となって、コンコース内を吹き抜ける。

 高橋「先生、どういうことっスか?鬼の男は今頃、菊川でブッ殺されてるはずじゃ?」
 愛原「う、うん。そうだよな……」

 私は辺りを見回した。
 少なくともコンコースには、ホテル天長園にやってきた鬼の姿は無い。

 愛原「取り合えず、リサはトイレに行ってろ」
 リサ「うん」

 私はコンコース上にあるトイレにリサを行かせた。
 作戦終了までは、基本的に連絡はしない決まりになっている。
 連絡をすることで、何かの拍子にリサの居場所がバレると困るからだ。
 私は取りあえず、善場主任にメールを打ってみた。
 すると、案外早く返信が来た。
 私はリサの反応について送ってみた。
 すると、電話が掛かって来た。

 善場「そこはどこですか!?」
 愛原「都庁前駅です」
 善場「すぐ近くに鬼はいますか?」
 愛原「周囲を見回しましたが、特にこれといった姿は見られません」
 善場「リサが感じた気配というのは、鬼で間違いないですか?」
 愛原「そのようです。……あの、そちらはどうですか?」
 善場「結論から言いますと、作戦は失敗です」
 愛原「えっ?!」
 善場「鬼の男は現れませんでした。住民の避難命令は解除して、通常に戻すつもりです」
 愛原「リサの電撃に気づかなかったのかな……」
 善場「いえ、あれだけの強さであれば、気づいたでしょう。しかし、あえて現場には行かなかったと見るべきかと」
 愛原「やはり、さすがに罠だと気づきましたかね」
 善場「それもあるでしょうし、もしかしたら、リサに愛想を尽かしたのかもしれません」
 愛原「それならそれで、別にいいことですけどね」
 善場「リサとは別に鬼の女の子がいて、そちらに乗り換えたとか……」
 愛原「いるんですか!?そんなコが……」
 善場「いないとは思えません。覚えてませんか?直近ですと、聖クラリス女学院にいましたよね?」
 愛原「あっ……!」
 善場「更にその前は、日本版リサ・トレヴァーの亜種などが何人かいたじゃないですか」
 愛原「いましたね!」
 善場「BSAAが全員掃討したと思っていましたが、掃討漏れした個体がいるのかもしれません」
 愛原「なるほど……」
 善場「とにかく、リサの反応は高確率で当たりです。十分に気をつけてください」
 愛原「分かりました」

 電話を切った。
 それから、リサがトイレから出て来る。

 リサ「お待たせ」
 愛原「大丈夫か?また、鬼の臭いはするか?」
 リサ「それがするんだよ」
 愛原「マジか。一体、どこからだ?」
 リサ「ただ、それは……男の臭いじゃない」
 愛原「すると、鬼の男とは別か。他にもいるんだな」
 リサ「うん。鬼の男以外にも、既に人間を食ってるヤツ」
 愛原「そうか……。気を付けて行こう」

 私達はホームに降りた。

 

 当駅始発の電車は既にホームに停車していて、発車を待っている。

〔「本日も都営地下鉄大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は11時48分発、飯田橋、両国方面行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 私達は先頭車に乗り込むと、再び硬い座席に腰かけた。

 愛原「鬼の男は菊川には現れなかったそうだ。一体、どこにいるんだろうな?」
 高橋「良かったな、リサ。どうやらお前、フラれたようだぞ?」
 リサ「別にわたしが告白したわけじゃないし、ストーカーが1人消えて万々歳だよ」
 愛原「まあな……」

〔「お待たせ致しました。11時48分発、飯田橋、両国方面行き、発車致します」〕

 発車の時間になり、ホームに発車メロディが鳴り響いた。
 それとは別に、メロディも流れる。

〔2番線から、飯田橋、両国経由、光が丘行き、電車が発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 電車のドアとホームドアが同時に閉まり、電車は定刻通りに発車した。

 

〔都営大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、飯田橋、両国経由、光が丘行きです。次は新宿西口、新宿西口。丸ノ内線、JR線、京王線、小田急線、西武新宿線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕

 都営新宿線と違うのは、大江戸線では電車内でもWi-Fiが使えること。
 リサはそこに繋いで、スマホをやっていた。
 絵恋とLINEでもやっているのだろうが、あまり今いる場所は伝えてないでもらいたいものだ。
 だが、リサはスマホ手を止めて、また私の方を見た。

 リサ「ダメだ。やっぱり鬼の臭いがする。この電車に乗ってるのかも……」
 愛原「ええっ!?」

 私は辺りを見回した。
 少なくとも、この車両にそれらしき者は見当たらない。
 試しに隣の車両を覗いてみたが、やっぱり鬼の男は見当たらなかった。

 愛原「いないな……」
 高橋「リサみたいに、人間に化けれるんじゃないスかね?」
 愛原「あー、なるほど。そういうことか」

 しかし、それだとお手上げである。
 鬼の男はリサが顔を知っているから、例え人間に化けてもリサが気づくだろう(人間に化けても、顔が変わるわけではないので)。
 そうなると、知らない鬼がいるのか……。
 さすがのリサも、人間に化けられると、誰が鬼だか分からないようである。
 近くまで行って臭いを嗅げば分かるようだが、さすがに自ら怪しい行動はできないだろう。

 愛原「少なくとも、今のところは何もしてこないようだ。一応、俺は善場主任に報告しよう」

 私は揺れる電車の中、善場主任にメールを送信した。

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