報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「魔法陣の取り扱いには要注意」

2018-06-16 20:22:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月13日16:30.天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 イリーナ:「悪霊のヤツ、私達を閉じ込めようとしたわ」

 イリーナは嘲笑めいた顔で言った。

 稲生:「そうなんですか!?」
 イリーナ:「ええ、バカよね。この私を閉じ込めようなんて、100年早いわ」
 稲生:「そうですね。先生と互角に戦えるのは他の先生方ですし、先生でも叶わないのが大師匠様ですか」
 イリーナ:「ま、そんなところね」

 イリーナは玄関のドアを開けた。

 稲生:「確かに東京中央学園の時なんかも、よく悪霊にトイレに閉じ込められたという話を聞きました」
 イリーナ:「それと同類ね。そういう時は、魔力を解放すると簡単に開けられるから。よく覚えといて」
 稲生:「魔力を解放する?」
 イリーナ:「要は心の中で、『開け、ゴマ!』と叫べばいいのよ」
 マリア:「そこは『ア・ヴァ・カ・ムゥ』じゃないですか?」

 マリアの突っ込みを華麗にスルーしたイリーナは裏庭に出た。
 そこにあったものは……。

 イリーナ:「ほら、これ!魔法陣が残ってる!」
 稲生:「本当だ」
 イリーナ:「マリアでしょ、ここに魔法陣を描いたの!」
 マリア:「あ、はい。もしかしたら、まだ使うかもしれないと思って……」

 だが、綺麗に残っているわけではなかった。
 あっちこっち踏み荒らした跡があって、歪な紋様に変わっていた。

 稲生:「草鞋の跡です。これ、威吹の足跡ですね。……あ、そういえばあいつ、ここで剣の鍛練をしてました」
 イリーナ:「魔法陣が変な紋様に変わったものだから、霊道と繋がって、悪霊を呼び込んでしまったのね」
 稲生:「ど、どうしますか?」
 イリーナ:「もちろん魔法陣ごと消すわよ。どいて」
 稲生:「はい!」

 マリアはそーっと稲生よりも離れようとしたが……。

 イリーナ:「マリア!後でお説教だからねっ!」
 マリア:「うっ、ぐっ……!」

 イリーナはダンテ門流魔法の呪文を唱えると、魔法陣をものの見事に消してしまった。

 稲生:「霊道ごと消したわけですか?」
 イリーナ:「一応ね。これで、悪霊共の退路は断ったわけだわ。後は家の中にまだ残っていないか、捜索ね。大丈夫。少なくとも、ダダ漏れしていた霊気をシャットアウトしたわけだから、これで新たに悪霊がやってくることは無くなったから」
 稲生:「は、はい」

 稲生達は再び家の中に入った。

 イリーナ:「なるべく換気して、籠った霊気を外に出すといいわね」
 稲生:「はい」

 だが、すぐにそいつは現れた。
 玄関に鏡を設置している家は多いだろう。
 稲生家も例外ではなく、姿見を設置していた。
 マリアがその鏡に映り込んだ時、そこにマリアは映らなかった。
 映ったのは、もっと別の人物。

 

 河合有紗:「殺してやる……!」
 稲生:「わあーっ!!」

 鏡の中から上半身だけ飛び出した河合有紗が、マリアの首を掴んだ。

 マリア:「ぐっ……!」

 そして、女とは思えない力で締め上げる。

 稲生:「や、やめてくれっ!有紗!」
 マリア:「がはっ……!」
 有紗:「稲生君……この泥棒猫を殺したら……あなたも……来てもらうわ……。私からは……逃げられないのよ……」
 稲生:「先生!助けてください!」

 だが、イリーナはニヤけた顔で腕組みをしていた。

 イリーナ:「マリア。助けて欲しかったら、反省しなさい。これはあなたが招いたミスよ?」
 マリア:「……っ!……!!」

 マリアはもがき苦しみながら何度も頷こうとした。
 だが、有紗に首を絞め上げられている為になかなか首を縦に触れない。

 稲生:「先生!マリアさんは反省すると言っています!だから、どうか……!」
 イリーナ:「あいよ。他ならぬ、勇太君の頼みだものね」

 イリーナは自分の魔法の杖を構えると、上半身だけ出ている有紗をそれで叩き付けた。

 有紗:「ぎゃっ!」

 幽霊なのに痛みを感じるのだろうか。
 それとも、それは魔法の杖で殴り付けたからか。
 イリーナの魔法の杖で叩かれた有紗は、ついにマリアを締め上げる手を緩めた。

 稲生:「今だ!」

 稲生は有紗からマリアを引き離した。
 マリアは激しく咳き込む。

 稲生:「大丈夫ですか!?」
 マリア:「ゲホッ!ゲヘッ!ガハッ!」
 イリーナ:「幽体すらもボコボコにしてやらないと分からないようね?私の愛弟子に手を出した罪、重いわよ?」

 イリーナは魔法の杖の尻を有紗の体に突き刺した。

 有紗:「ぎゃああああああああっ!!」

 まるで本当の肉体を貫通させたかのようだ。

 イリーナ:「これに懲りたら、2度と私達の前にツラを見せないことね!」

 そして、有紗の幽体を鏡の中へ放り込んだ。

 稲生:「先生……?」
 イリーナ:「これでもう彼女は出てこれないわよ。安心して」
 稲生:「あ、ありがとうございます」
 イリーナ:「初恋の人の幽体、傷つけちゃってゴメンね」
 稲生:「いえ、いいんです。僕はもう、有紗のことは嫌いになりました。今はマリアさんが好きです」

 そう言って稲生は、意識混濁となっているマリアの体を抱き抱えた。

 イリーナ:「素晴らしい発言だわ。それじゃ回復魔法を掛けるから、取りあえずベッドまで運んで」
 稲生:「はい」

 稲生は言われた通り、客間の折り畳みベッドまで運んだ。

 イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……ケ・ァル!」
 稲生:「ん、ケアル?ホイミじゃないんですか?」
 イリーナ:「回復魔法は2系統に分かれてるからね。まあ、どっちでもいいんだけど」
 稲生:「はあ……」

 すると玄関のドアが開けられた。
 稲生は一瞬また別の悪霊かと緊張したが、入ってきたのは稲生の両親だった。

 宗一郎:「ただいまァ」
 佳子:「先に帰ってたのね。夕飯の材料を買って来たの」
 稲生:「あ、お帰り。……うん、多分そういうことだと思ってた」
 宗一郎:「マリアさん、どうしたんだい?」
 イリーナ:「ちょっとあちこち歩き回ったせいか、少し疲れちゃったみたいです。お腹が空けば、きっと元気になりますわ」

 イリーナはニンマリ笑った。

 宗一郎:「そうですか。おい、勇太。あまり女性方を無理に連れ回すんじゃないぞ?」
 稲生:「わ、分かってるよ」

 はっきり言ってとばっちりの稲生だった。

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2 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2018-06-17 17:56:56
東北新幹線が停電で止まっているらしい、

今日が帰省orUターンじゃなくて良かった。
以前、まだ法華講員だった頃、高速バスで帰省た時のことだ。
東北新幹線が停電で止まったとのことで、バスにして良かったと思ったことがある。

今日、バスにした人達はホッとしたことだろう。
つぶやき 2 (雲羽百三)
2018-06-17 20:21:56
 東北新幹線が運転再開したようだ。

 それにしても、最近の新幹線は不遇だな。
 ふと思ったのだが、新幹線不通区間を走るバスの乗車券をダフったら犯罪になるんだろうなぁ……。
 JRバスを鉄道から分社化したせいで、代行バスをすぐに運行させることができなくなったからね。

 あと沖修羅河童さん、厳虎さんの所を「卒業宣言」しといて、しれっと戻って来てやがる。
 んっ?さんも、そろそろ復活してみては如何だろうか?
 大丈夫。法華講員は皆「学会員は二枚舌」と思っているから、しれっと戻ったところで、「ああ、やっぱり」としか思わないよw

 私が厳虎さんに、「ブログを閉鎖するなら、己の正体を明かせ」と迫ったのは、他にも理由があるんだよね。
 ……河童さんと会ったのかどうか、さ。

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