報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台での調査、終わり」 2

2023-04-18 21:22:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日17時45分 天候:曇 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]

 電車は無事に薬師堂駅に到着し、私とリサはそこから徒歩で私の実家へと向かった。

 愛原学「ただいまァ」
 リサ「ただいま戻りました!」

 リサは実家では正体を隠さなかった。
 興奮さえしなければ、目の色が不気味に変わることはない。

 母親「お帰りなさい。色々と回って来たの?」
 学「事件の核心に触れる為には、まだまだ足りないくらいだよ」
 母親「そう。ごはん、もうすぐできるからね」
 リサ「いい匂い……」
 学「母さん、高橋は?」
 母親「奥の客間で寝てるわ。多分、眠ってると思うからね」
 学「ちょっと見てくるよ」

 私は客間に向かった。
 高橋が眠っているからか、客間への廊下の照明は消えているし、客間そのものも消灯している。
 私がそっと覗くと、確かに高橋が眠っていた。
 氷枕の上に頭を乗せていて、頭には冷却シートを貼っている。

 愛原「そうか……」

 私は客間をあとにすると、ダイニングに向かった。

 父親「新型コロナでもなければ、インフルエンザでもない。まあ、38度台で済んでいるし、今日はもちろん、明日まで寝てないとダメな状態だろう」
 学「だよなぁ……」
 父親「とにかく、家で面倒看るから、心配せずに行きなさい」
 学「申し訳ないね」

 その時、キッチンから肉を焼く音が聞こえた。

 リサ「あ!わたしの肉は生でお願いします!」
 母親「ええっ!?」
 学「それじゃステーキじゃねぇ!」
 リサ「何なら先生のお肉もセットでお願いします!」
 学「食う気か!」
 母親「ダメよ。うちではミディアム以上となっているんだから」
 リサ「えー……」
 父親「それだと、学の肉のセットはOKということになってしまうぞ?」
 リサ「ミディアムでいいので、先生のお肉とセットでお願いします!」
 学「こらぁっ!」
 母親「向こうでは、ステーキは生で食べてるの?」
 学「い、いや、そんなことはないよ。ちゃんと焼いて食べてるよ。まあ、リサはレアにしてるけど……」
 リサ「もっと生でもいいのに、先生とお兄ちゃんに阻止される……」
 母親「むしろ、もっと焼くべきなのよ?」

 さすがは人食い鬼。
 まだ、人食い自体は経験したことがないとはいえ……。

[同日19時00分 天候:曇 愛原家]

 父親「リサちゃんは、ちゃんと御行儀良く食べるねぇ」
 学「本当は、もっとがっついて食べるんだけど、俺ん家だから遠慮してるんだよ」

 ステーキ肉なんか、ガツガツ食べるリサだが、今日は上品にステーキナイフで肉を細く切って食べていた。
 そのリサは今、キッチンで母親と一緒に洗い物をしている。

 母親「リサちゃん、お客さんなんだからゆっくりしてていいのに……」
 リサ「いいんです。わたしは、先生のお嫁さんですから」
 母親「冴えない息子を好きになってくれてありがとね」
 学「自分の息子をさりげなくディスってんじゃねぇ!」
 父親「『高橋君みたいな、イケメンの息子ができたら……』」
 学「高橋はまだ20代だぞ!」
 父親「そういうオマエこそ、まだ10代のリサちゃんを誑かせて……。警察の御厄介になっても知らんぞ?」
 学「下手すりゃ警察より上の国連軍の世話になりそうだから、問題ない」
 父親「オマエなぁ……」
 学「ああ見えて、本当は50歳ちょっとのオバハンなんだよ?」
 父親「ウソだぁ……」
 学「母親はうちの母さんより年下だけどね」
 父親「意味が分からん」
 学「あ、そうだ。今から50年くらい前の7月半ば、一本杉町辺りで大きな火事があったのを覚えてる?家が3棟焼ける火事で、住人が何人か焼死した火事」
 父親「今から50年も前のことか……。まあ、そんな火事があったような気がするって感じだな。それがどうかしたのか?」
 学「やっぱり、そんなもんだよなぁ……」
 父親「それより学。オマエ、何時の新幹線で帰るんだ?俺が仙台駅まで、車で送ってやるぞ?」
 学「えっ、いいの?」
 父親「そのつもりで、今日は酒を飲まなかったんだ」
 学「なるほど!俺達が乗るのは、21時38分発の“はやぶさ”250号だよ(※)」

 ※実際には運転されていません。フィクションです。

 父親「なに?随分と遅い新幹線に乗るんだな?」
 学「まあ、調査がいつ終わるか分からなかったから……」
 父親「まあ、しょうがない。因みに、明日は仕事なんだろ?」
 学「そう。リサも学校」
 母親「家に着いたら、早く寝なさいね」
 学「分かってるよ」

 そんな話をしている時だった。

 リサ「!」

 リサの長くて尖った耳がピクッと動く。
 いわゆる、エルフ耳と呼ばれる形状だ。
 鬼形態となっている今、彼女の聴力はとても鋭いものとなっている。

 リサ「何か来る!」
 学「なにっ!?どこからだ!?」
 リサ「向こうから!」

 リサは家の奥を指さした。
 そっちには客間がある。

 リサ「ゾンビが歩くような音……。ゾンビが吐き出す呻き声……」
 学「お、おい!それってまさか……!?」

 高橋がゾンビ化した!?
 今頃!?

 父親「お、おい!?一体、何だというんだ!?」
 学「父さん達は、動かないで!母さん!勝手口の鍵を開けるんだ!」

 私は勝手口に最も近い場所にいる母親に言った。

 母親「ええっ!?」
 学「いざとなったら、そこから逃げるんだ!」

 私は荷物の中から、ショットガンを用意した。

 父親「お、おい!家の中でそんなもの……!」
 リサ「そうだよ、先生!それは危ないよ!わたし1人で十分!」
 学「いや、しかしだな……!」

 そして、廊下向こう……客間の方に通じる廊下側のドアが開けられた。

 高橋「ハァァ……ハァァ……!」
 リサ「お兄ちゃん!わたしが楽にしてあげる!ゾンビの弱点は頭ーっ!」

 だが、高橋の肉体は腐敗もしていないし、そもそもゾンビはドアをぶち破って来るはずで、普通に開けてくるはずがない。

 学「待て、リサ!」
 高橋「だ……誰がゾンビだ……!」
 母親「高橋君、寝てなきゃダメよ!」
 学「高橋、大丈夫なのか!?」
 高橋「さ……サーセン……先生……」
 学「いいから気にせず寝てろ!」
 リサ「わたしのウィルス投与したら、すぐに治るけどね。その代わりに、『鬼』かゾンビになるけど」
 学「いらんっちゅーに!……後で新幹線代を渡しておく。熱が引いたら、それで帰って来い」
 高橋「さ、サーセン……」

 あー、びっくりした。
 急にリサが迎撃態勢に入るものだから、本当に高橋が今頃ゾンビ化したのかと思った。
コメント
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