[11月6日17時45分 天候:曇 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]
電車は無事に薬師堂駅に到着し、私とリサはそこから徒歩で私の実家へと向かった。
愛原学「ただいまァ」
リサ「ただいま戻りました!」
リサは実家では正体を隠さなかった。
興奮さえしなければ、目の色が不気味に変わることはない。
母親「お帰りなさい。色々と回って来たの?」
学「事件の核心に触れる為には、まだまだ足りないくらいだよ」
母親「そう。ごはん、もうすぐできるからね」
リサ「いい匂い……」
学「母さん、高橋は?」
母親「奥の客間で寝てるわ。多分、眠ってると思うからね」
学「ちょっと見てくるよ」
私は客間に向かった。
高橋が眠っているからか、客間への廊下の照明は消えているし、客間そのものも消灯している。
私がそっと覗くと、確かに高橋が眠っていた。
氷枕の上に頭を乗せていて、頭には冷却シートを貼っている。
愛原「そうか……」
私は客間をあとにすると、ダイニングに向かった。
父親「新型コロナでもなければ、インフルエンザでもない。まあ、38度台で済んでいるし、今日はもちろん、明日まで寝てないとダメな状態だろう」
学「だよなぁ……」
父親「とにかく、家で面倒看るから、心配せずに行きなさい」
学「申し訳ないね」
その時、キッチンから肉を焼く音が聞こえた。
リサ「あ!わたしの肉は生でお願いします!」
母親「ええっ!?」
学「それじゃステーキじゃねぇ!」
リサ「何なら先生のお肉もセットでお願いします!」
学「食う気か!」
母親「ダメよ。うちではミディアム以上となっているんだから」
リサ「えー……」
父親「それだと、学の肉のセットはOKということになってしまうぞ?」
リサ「ミディアムでいいので、先生のお肉とセットでお願いします!」
学「こらぁっ!」
母親「向こうでは、ステーキは生で食べてるの?」
学「い、いや、そんなことはないよ。ちゃんと焼いて食べてるよ。まあ、リサはレアにしてるけど……」
リサ「もっと生でもいいのに、先生とお兄ちゃんに阻止される……」
母親「むしろ、もっと焼くべきなのよ?」
さすがは人食い鬼。
まだ、人食い自体は経験したことがないとはいえ……。
[同日19時00分 天候:曇 愛原家]
父親「リサちゃんは、ちゃんと御行儀良く食べるねぇ」
学「本当は、もっとがっついて食べるんだけど、俺ん家だから遠慮してるんだよ」
ステーキ肉なんか、ガツガツ食べるリサだが、今日は上品にステーキナイフで肉を細く切って食べていた。
そのリサは今、キッチンで母親と一緒に洗い物をしている。
母親「リサちゃん、お客さんなんだからゆっくりしてていいのに……」
リサ「いいんです。わたしは、先生のお嫁さんですから」
母親「冴えない息子を好きになってくれてありがとね」
学「自分の息子をさりげなくディスってんじゃねぇ!」
父親「『高橋君みたいな、イケメンの息子ができたら……』」
学「高橋はまだ20代だぞ!」
父親「そういうオマエこそ、まだ10代のリサちゃんを誑かせて……。警察の御厄介になっても知らんぞ?」
学「下手すりゃ警察より上の国連軍の世話になりそうだから、問題ない」
父親「オマエなぁ……」
学「ああ見えて、本当は50歳ちょっとのオバハンなんだよ?」
父親「ウソだぁ……」
学「母親はうちの母さんより年下だけどね」
父親「意味が分からん」
学「あ、そうだ。今から50年くらい前の7月半ば、一本杉町辺りで大きな火事があったのを覚えてる?家が3棟焼ける火事で、住人が何人か焼死した火事」
父親「今から50年も前のことか……。まあ、そんな火事があったような気がするって感じだな。それがどうかしたのか?」
学「やっぱり、そんなもんだよなぁ……」
父親「それより学。オマエ、何時の新幹線で帰るんだ?俺が仙台駅まで、車で送ってやるぞ?」
学「えっ、いいの?」
父親「そのつもりで、今日は酒を飲まなかったんだ」
学「なるほど!俺達が乗るのは、21時38分発の“はやぶさ”250号だよ(※)」
※実際には運転されていません。フィクションです。
父親「なに?随分と遅い新幹線に乗るんだな?」
学「まあ、調査がいつ終わるか分からなかったから……」
父親「まあ、しょうがない。因みに、明日は仕事なんだろ?」
学「そう。リサも学校」
母親「家に着いたら、早く寝なさいね」
学「分かってるよ」
そんな話をしている時だった。
リサ「!」
リサの長くて尖った耳がピクッと動く。
いわゆる、エルフ耳と呼ばれる形状だ。
鬼形態となっている今、彼女の聴力はとても鋭いものとなっている。
リサ「何か来る!」
学「なにっ!?どこからだ!?」
リサ「向こうから!」
リサは家の奥を指さした。
そっちには客間がある。
リサ「ゾンビが歩くような音……。ゾンビが吐き出す呻き声……」
学「お、おい!それってまさか……!?」
高橋がゾンビ化した!?
今頃!?
父親「お、おい!?一体、何だというんだ!?」
学「父さん達は、動かないで!母さん!勝手口の鍵を開けるんだ!」
私は勝手口に最も近い場所にいる母親に言った。
母親「ええっ!?」
学「いざとなったら、そこから逃げるんだ!」
私は荷物の中から、ショットガンを用意した。
父親「お、おい!家の中でそんなもの……!」
リサ「そうだよ、先生!それは危ないよ!わたし1人で十分!」
学「いや、しかしだな……!」
そして、廊下向こう……客間の方に通じる廊下側のドアが開けられた。
高橋「ハァァ……ハァァ……!」
リサ「お兄ちゃん!わたしが楽にしてあげる!ゾンビの弱点は頭ーっ!」
だが、高橋の肉体は腐敗もしていないし、そもそもゾンビはドアをぶち破って来るはずで、普通に開けてくるはずがない。
学「待て、リサ!」
高橋「だ……誰がゾンビだ……!」
母親「高橋君、寝てなきゃダメよ!」
学「高橋、大丈夫なのか!?」
高橋「さ……サーセン……先生……」
学「いいから気にせず寝てろ!」
リサ「わたしのウィルス投与したら、すぐに治るけどね。その代わりに、『鬼』かゾンビになるけど」
学「いらんっちゅーに!……後で新幹線代を渡しておく。熱が引いたら、それで帰って来い」
高橋「さ、サーセン……」
あー、びっくりした。
急にリサが迎撃態勢に入るものだから、本当に高橋が今頃ゾンビ化したのかと思った。
電車は無事に薬師堂駅に到着し、私とリサはそこから徒歩で私の実家へと向かった。
愛原学「ただいまァ」
リサ「ただいま戻りました!」
リサは実家では正体を隠さなかった。
興奮さえしなければ、目の色が不気味に変わることはない。
母親「お帰りなさい。色々と回って来たの?」
学「事件の核心に触れる為には、まだまだ足りないくらいだよ」
母親「そう。ごはん、もうすぐできるからね」
リサ「いい匂い……」
学「母さん、高橋は?」
母親「奥の客間で寝てるわ。多分、眠ってると思うからね」
学「ちょっと見てくるよ」
私は客間に向かった。
高橋が眠っているからか、客間への廊下の照明は消えているし、客間そのものも消灯している。
私がそっと覗くと、確かに高橋が眠っていた。
氷枕の上に頭を乗せていて、頭には冷却シートを貼っている。
愛原「そうか……」
私は客間をあとにすると、ダイニングに向かった。
父親「新型コロナでもなければ、インフルエンザでもない。まあ、38度台で済んでいるし、今日はもちろん、明日まで寝てないとダメな状態だろう」
学「だよなぁ……」
父親「とにかく、家で面倒看るから、心配せずに行きなさい」
学「申し訳ないね」
その時、キッチンから肉を焼く音が聞こえた。
リサ「あ!わたしの肉は生でお願いします!」
母親「ええっ!?」
学「それじゃステーキじゃねぇ!」
リサ「何なら先生のお肉もセットでお願いします!」
学「食う気か!」
母親「ダメよ。うちではミディアム以上となっているんだから」
リサ「えー……」
父親「それだと、学の肉のセットはOKということになってしまうぞ?」
リサ「ミディアムでいいので、先生のお肉とセットでお願いします!」
学「こらぁっ!」
母親「向こうでは、ステーキは生で食べてるの?」
学「い、いや、そんなことはないよ。ちゃんと焼いて食べてるよ。まあ、リサはレアにしてるけど……」
リサ「もっと生でもいいのに、先生とお兄ちゃんに阻止される……」
母親「むしろ、もっと焼くべきなのよ?」
さすがは人食い鬼。
まだ、人食い自体は経験したことがないとはいえ……。
[同日19時00分 天候:曇 愛原家]
父親「リサちゃんは、ちゃんと御行儀良く食べるねぇ」
学「本当は、もっとがっついて食べるんだけど、俺ん家だから遠慮してるんだよ」
ステーキ肉なんか、ガツガツ食べるリサだが、今日は上品にステーキナイフで肉を細く切って食べていた。
そのリサは今、キッチンで母親と一緒に洗い物をしている。
母親「リサちゃん、お客さんなんだからゆっくりしてていいのに……」
リサ「いいんです。わたしは、先生のお嫁さんですから」
母親「冴えない息子を好きになってくれてありがとね」
学「自分の息子をさりげなくディスってんじゃねぇ!」
父親「『高橋君みたいな、イケメンの息子ができたら……』」
学「高橋はまだ20代だぞ!」
父親「そういうオマエこそ、まだ10代のリサちゃんを誑かせて……。警察の御厄介になっても知らんぞ?」
学「下手すりゃ警察より上の国連軍の世話になりそうだから、問題ない」
父親「オマエなぁ……」
学「ああ見えて、本当は50歳ちょっとのオバハンなんだよ?」
父親「ウソだぁ……」
学「母親はうちの母さんより年下だけどね」
父親「意味が分からん」
学「あ、そうだ。今から50年くらい前の7月半ば、一本杉町辺りで大きな火事があったのを覚えてる?家が3棟焼ける火事で、住人が何人か焼死した火事」
父親「今から50年も前のことか……。まあ、そんな火事があったような気がするって感じだな。それがどうかしたのか?」
学「やっぱり、そんなもんだよなぁ……」
父親「それより学。オマエ、何時の新幹線で帰るんだ?俺が仙台駅まで、車で送ってやるぞ?」
学「えっ、いいの?」
父親「そのつもりで、今日は酒を飲まなかったんだ」
学「なるほど!俺達が乗るのは、21時38分発の“はやぶさ”250号だよ(※)」
※実際には運転されていません。フィクションです。
父親「なに?随分と遅い新幹線に乗るんだな?」
学「まあ、調査がいつ終わるか分からなかったから……」
父親「まあ、しょうがない。因みに、明日は仕事なんだろ?」
学「そう。リサも学校」
母親「家に着いたら、早く寝なさいね」
学「分かってるよ」
そんな話をしている時だった。
リサ「!」
リサの長くて尖った耳がピクッと動く。
いわゆる、エルフ耳と呼ばれる形状だ。
鬼形態となっている今、彼女の聴力はとても鋭いものとなっている。
リサ「何か来る!」
学「なにっ!?どこからだ!?」
リサ「向こうから!」
リサは家の奥を指さした。
そっちには客間がある。
リサ「ゾンビが歩くような音……。ゾンビが吐き出す呻き声……」
学「お、おい!それってまさか……!?」
高橋がゾンビ化した!?
今頃!?
父親「お、おい!?一体、何だというんだ!?」
学「父さん達は、動かないで!母さん!勝手口の鍵を開けるんだ!」
私は勝手口に最も近い場所にいる母親に言った。
母親「ええっ!?」
学「いざとなったら、そこから逃げるんだ!」
私は荷物の中から、ショットガンを用意した。
父親「お、おい!家の中でそんなもの……!」
リサ「そうだよ、先生!それは危ないよ!わたし1人で十分!」
学「いや、しかしだな……!」
そして、廊下向こう……客間の方に通じる廊下側のドアが開けられた。
高橋「ハァァ……ハァァ……!」
リサ「お兄ちゃん!わたしが楽にしてあげる!ゾンビの弱点は頭ーっ!」
だが、高橋の肉体は腐敗もしていないし、そもそもゾンビはドアをぶち破って来るはずで、普通に開けてくるはずがない。
学「待て、リサ!」
高橋「だ……誰がゾンビだ……!」
母親「高橋君、寝てなきゃダメよ!」
学「高橋、大丈夫なのか!?」
高橋「さ……サーセン……先生……」
学「いいから気にせず寝てろ!」
リサ「わたしのウィルス投与したら、すぐに治るけどね。その代わりに、『鬼』かゾンビになるけど」
学「いらんっちゅーに!……後で新幹線代を渡しておく。熱が引いたら、それで帰って来い」
高橋「さ、サーセン……」
あー、びっくりした。
急にリサが迎撃態勢に入るものだから、本当に高橋が今頃ゾンビ化したのかと思った。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます