報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台の聞き込み調査」 2

2023-04-10 20:24:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日09時38分 天候:晴 宮城県仙台市若林区保春院前丁 若林区役所バス停→仙台市営バスJ411系統車内]

 愛原「……はい。そういうわけでして、これから当時の担任の先生だった人に聞いて来ようと思います」

 私はバスを待っている間、電話で善場主任に経過を報告していた。
 日曜日にも関わらず、主任はすぐに電話に出て報告を聞いてくれた。

 善場「そうですか。仙台の家は、焼失していたのですね。その件については、こちらで調べておきます。愛原所長は、現地に向かってください」
 愛原「分かりました。もしも、高橋がコロナ陽性だったら、どうしますか?」
 善場「それは関係各機関の指示に従ってください、としか申し上げられません」
 愛原「分かりました」
 リサ「先生、バス来たよ」
 愛原「……あ、それでは、これからバスに乗りますので。……はい、失礼します」

〔J411系統、仙台駅前、定禅寺通・市役所前経由、交通局・大学病院前行きです〕

 大型のノンステップバスが来た。
 私達は中扉からバスに乗り込み、後ろの席に座った。
 休日で1時間に2本しか無いバスは、混んではいなかったが、お年寄りが多かった。

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスは私達を乗せると、発車した。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ このバスはJ411系統、仙台駅前、定禅寺通・市役所前経由、交通局・大学病院前行きです。次は保春院前丁、保春院前丁でございます。日蓮正宗佛眼寺へおいでの方は、荒町でお降りになると便利です。次は、保春院前丁でございます〕

 愛原「仙台の家は火事で焼け落ちた……。しかも、不審火か……」
 リサ「アンブレラが火を点けた?」
 愛原「いや、それは無い。だってその時、まだ白井は高校生で、まだアンブレラに入ってもいないんだから」
 リサ「あ、そうか」

 原因不明の火事だから不審火だとはいうが、まさか、な……。
 因みに、今頃高橋は病院に着いた頃だろう。
 急患センターの診療開始が9時半だから、それに合わせて行くということだ。
 ただ、ああいう所は混んでいることが多い。
 ましてや今は、コロナ禍だ。
 受付はできても、実際に診察が行われるまで、休日のTDLのアトラクション並みの待ち時間が予想される。
 全て終わるまで、昼くらいまで掛かると見るべきだろう。
 一応、父親には終わったら連絡するように頼んである。
 コロナ陽性だったら、私達も濃厚接触者になるのか……。
 陰性だといいが……。
 因みに、リサだけ除外されるがなw

[同日09時55分 天候:晴 同市青葉区中央 仙台駅前バス停→JR仙台駅]

 バスは県道235号線を西進した。
 路線名は荒井荒町線というのだが、地元民は『荒浜街道』と呼んでいる。
 埼玉県民なら、『あらあら街道』と呼びそうだがな。
 荒町交差点から国道286号線を右折する。
 かつては国道4号線であったが、指定から外され、代わりに重複していた286号線がクローズアップされた。
 それも次の信号では、市道・愛宕上杉通に分かれて行く。
 そして、仙台駅前のバス停は仙台TRビルの前だった。
 主にヤマダ電機LABIなどが入居しているビルである。
 かつては青葉通りに入ってすぐの所がバス停だったが、こちらに変更された。
 もちろん、ここでも特に不便は無い。

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台駅前です」〕

 グライドスライド式の二枚扉が左右に開き、降車客はその前扉に向かう。
 私達もここでバスを降りた。

 愛原「地下鉄の中を通って行こう」
 リサ「うん」

 バス停の目の前に、地下鉄の入口がある。
 そこから地下に下りた。
 そして地下道を進み、JR仙台駅を目指す。

 リサ「ここから愛子駅まで、どのくらい掛かるの?」
 愛原「だいたい30分っていったところかな」
 リサ「そっかぁ……」
 愛原「何だぁ?また、お菓子とジュースかぁ?」
 リサ「う、うん。まあね」
 愛原「しょうがないな。今度の電車は、小牛田行きと同じ車両だから、買っていいぞ」
 リサ「! おー!」

[同日10時22分 天候:晴 JR仙台駅→仙山線1843M列車最後尾車内]

 小牛田行きは1番線から出たが、仙山線ホームは基本的に東側の7番線または8番線から出る。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の8番線の列車は、10時26分発、普通、愛子行きです。この列車は、6両です。……〕

 リサはホームの自販機で、ジュースとお菓子を買っていた。

〔まもなく8番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、6両です。……〕

 そして、下り方向から上り列車がやってくる。
 小牛田行きで乗った列車と同じ両数ではあったが、向こうは701系も混ざった混結編成だったのに対し、こちらはE721系で統一されていた。
 4両編成に2両編成を連結した6両編成である。

〔せんだい~、仙台~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 ここまで乗って来た乗客達がぞろぞろ降りて来る。
 全てのドアが開き、そこから降りて来ていた。
 私とリサは2両編成側の後ろの車両、つまり最後尾に乗り込んだ。
 30分くらいの乗車時間だから、ドア横の2人席でもいいと思ったが、リサが飲食物を購入したので、ボックスシートに座る。
 恐らく仙台~愛子間は本数も多く、それだけ利用客が多いから、ボックスシートの通路側にも他の乗客が座ると思われる。
 私がそれを言うと、リサはあっと気づいたようだ。

 リサ「そっかぁ……」
 愛原「帰りは何も買わないで、そっちの席に座ろう」
 リサ「その方がいいね」

 しかしながら、リサは窓際のテーブルにジュースのペットボトルを置いて、キヨスクで買ったポッキーを齧り始めた。

〔この電車は仙山線、普通、愛子行きです〕

 私はこれから向かう小松先生の家の住所をグーグルマップで調べたが、愛子駅から徒歩10分ほどの場所であり、どうやら一軒家にお住まいのようだった。

 愛原「いいか?門伝先生もそうだが、これから行く小松先生の所も、元は学校の先生で、最後は校長先生まで勤め上げた人だ。絶対に失礼の無いようにな?」
 リサ「分かった」

 ああ、そうか……。
 手土産くらい用意すれば良かったな……。
 まあ、途中で買って行くか。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「仙台での聞き込み調査」

2023-04-10 14:56:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日07時00分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]

 枕元に置いたスマホのアラームが鳴って、私はそれに手を伸ばした。
 そして、アラームを止めて起き上がる。
 カーテン越しに朝日が差し込んで来るので、今日も天気が良いようだ。
 1階に下りて洗面所に向かうと、リサが先に顔を洗っていた。

 リサ「あ、先生、おはよう。1人で寝る夜は寂しくなかった?」

 リサは嫌味を込めて言ってきた。
 昨夜、私と一緒の部屋で寝たがるリサを何とか宥めて諦めさせたのだが、それでまだブー垂れているようだ。

 愛原学「元々俺の1人部屋なんだから、当たり前だよ」
 リサ「子供部屋おじさん」
 学「いや、実家暮らししてるんじゃないんだから、それは当てはまんないだろ。高橋はどうした?」
 リサ「まだ寝てる」
 学「そうなのか。まあ、朝食は母さんが作ってくれるし、今日くらいゆっくり寝させてあげよう」
 リサ「うん、分かった」

 異変は30分後に気づいた。
 私達が顔を洗い、ダイニングに移動しても、高橋は起きてこなかった。

 学「何だ、寝坊か。リサ、起こしてやってくれ」
 リサ「分かった!」

 リサがタタタッと奥の客間に向かう。
 因みに客間は二間続きになっており、間を襖で仕切れるようになっている。
 なので、高橋とリサはそれぞれ別々の和室で寝たわけである。

 母親「もう少し寝させてあげたら?」
 学「いやいや、9時には門伝さんの所に行かないといけないんだから、そろそろ起きないと」

 高橋も私の助手である以上、一緒に動いてもらわないと。
 そう思っていた時だった。

 リサ「先生」

 リサが目を丸くした状態で戻って来た。

 学「何だ?起きないのか?」
 リサ「お兄ちゃんの体温って、普段何度あったっけ?」
 学「はあ?平熱は36度5分ってところだろう?」
 リサ「あれって、36度5分あるのかな?わたしはもっと高いけど」
 学「オマエはBOWだからな。それは往々にして体温が高い。それがどうした?」
 リサ「お兄ちゃんの体、結構熱いんだけど……」
 学「なにぃーっ!?何故それを早く言わんのだ!?」

 私は急いで客間に向かった。

 学「高橋、オマエ、大丈夫なのか!?」
 高橋「せ……先生……。俺……ウィルスに感染したみたいです……。ゾンビ化する前に……どうか、先生の手で……俺に楽に……」
 学「体は痒いか?」
 高橋「いいえ」
 学「食欲は一杯あるか?」
 高橋「全然……ありません」
 学「ただのコロナだ」
 高橋「せ、先生……?!」

 こちとらゾンビウィルスだの遺伝子変形ウィルスだのを相手にしているので、今更コロナなど怖くないわい!

 母親「取りあえず、これで熱測って……」
 高橋「さ、サーセン……」

 母親が体温計を持ってくる。

 母親「まあ!38度3分」
 リサ「わたしの平熱」
 学「オマエじゃない!明らかに発熱しているが、言うてそこまでの高熱というわけでもないな」
 母親「取りあえず、市販の薬を……」
 高橋「さ、サーセン……」
 学「いや、いいんだ。それより、病院どうしよう?今日は日曜日だし……」
 父親「それなら、舟丁に急患センターがある。ワシがそこに連れて行ってあげよう」
 学「父さん、助かる!……コロナじゃなければいいが……」
 高橋「ご迷惑をお掛けします……」
 学「まあ、しょうがない」
 リサ「わたしのウィルス、わけてあげようか?コロナもエボラもイチコロだよ?」
 学「その代わり、人間を辞めることになるので却下します」
 リサ「えーっ!」

 取りあえず高橋のことは父親に任せることにした。

 学「取りあえずこれ、高橋のマイナンバーカード」
 父親「うむ。彼のことは、ワシ達に任せなさい」

[同日09時00分 天候:晴 同区保春院前丁 門伝家]

 借りた卒アルを手に、母親の後輩である門伝女史の家に向かった。
 うちの実家から徒歩圏内にある。

 門伝涼子「あらぁ?先輩の息子さん?……と……」
 リサ「先生のお嫁さ……フガッ!」
 愛原学「姪っ子の者です」

 私はリサの口を塞いで誤魔化した。

 愛原「卒業アルバムを返納しに伺いました」
 門伝「そうなの。わざわざありがとう」
 愛原「それでですね、門伝先生の同級生であったと思われる斉藤玲子さんについてお聞きしたいのですが……」
 門伝「先輩にも話したけど、ロクに口も聞いてないのよ。何か、家庭が複雑なコだって聞いたことはあるんだけどね。あんまり学校にも来てなかったし、あれこれ言えるほどじゃなかったのよ」
 愛原「そうなんですか。どなたか、この人をよく知っている人とかいませんかね?」
 門伝「まあ、当時の先生達なら知ってたかもね」
 愛原「門伝先生の先生ですか」
 門伝「ええ。担任の先生とかね」
 愛原「その先生とお会いすることはできますか?」
 門伝「そうねぇ……。御健在だと、もう御年80歳くらいになるかしら」

 ということは、担任教師だった頃は30歳くらいか。

 門伝「先輩の息子さん、東京で探偵をやってるって聞いたけど、本当だったのね?」
 愛原「えっ、ええ、まあ、あまり売れないんですけど……」
 リサ「超一流の名探偵です!」
 愛原「お、おい!」
 門伝「ちょっと聞いてみますね。ちょっと待っててください」
 愛原「す、すいません!」

 1度中へ通された。
 応接間のような部屋で待つこと10分。

 門伝「お待たせしました。連絡が着きました」
 愛原「おお、ありがとうございます!それで、結果の方は……?」
 門伝「それが……先生の話を聞いて、私も思い出したんですよ」
 愛原「何を思い出されましたか?」
 門伝「斉藤玲子さんの仙台の家は、火事で焼け落ちてるんです」
 愛原「ええっ!?」
 門伝「確か3年生の、夏休みに入る直前ですよ。それで夏休みの間、まずは平泉の親戚の家に滞在することになったそうです。福島の実家には戻れませんし……」
 愛原「そうだったのですか……。火事の原因は何だったのでしょう?」
 門伝「不審火ということでしたね」
 愛原「不審火……」

 原因不明だが、放火の疑いありということか……。

 門伝「もし何でしたら、もっと詳しい話を教えるって、先生が仰ってました」
 愛原「本当ですか!?でしたら、今すぐにでもお伺いしたいです!」
 門伝「分かりました。こちらが、私の当時の担任の先生……。小松先生と仰います。今は愛子に家を買って、悠々自適の生活をされてますよ」
 愛原「それは羨ましいですね」

 私は小松先生の住所と連絡先が書かれたメモを受け取った。

 愛原「色々とありがとうございました」

 私とリサは、門伝先生の家をあとにした。
 愛子は『あいこ』ではなく、『あやし』と読む。
 青葉区にあって、JR仙山線でアクセス可能だ。
 私達は仙台駅に行く為、最寄りのバス停に向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「仙台での一夜」

2023-04-10 11:41:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月5日18時30分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]

 父親「学も缶ビール飲むだろ?」
 愛原学「うん」
 父親「高橋君も」
 高橋「あざっス!……いえ、ありがとうございます」
 リサ「じゃあ、わたしも」
 一同「あと3年待て!」
 リサ「えー!?」
 高橋「えーじゃねぇ!」
 父親「仲良くやっているようで何よりだ」
 学「いつも賑やかなんだよ」
 高橋「コイツのせいです」
 リサ「コイツのせいです」
 高橋「ンだコラぁっ!」
 リサ「電撃!」
 高橋「マグナム!」
 愛原「やめなさい、こんな所で!」
 母親「うちも2人以上の子供が欲しかったわ」
 愛原「うるさいだけだよ、きっと……」
 高橋「先生のヨメは俺です!」
 リサ「わたしがお嫁さんです!」
 高橋「コラァッ!」
 リサ「お兄ちゃん、男じゃない!」
 父親「た、多様性、多様性……」
 高橋「そうっスよ!」
 リサ「お兄ちゃんじゃ、子供が生めません。わたしは女だから、子供が生めますよ?」
 父親「う、うむ。孫を生んでくれる方が……」
 母親「私は孫に賭けたいわ!」
 学「何でだよ!?」
 リサ「いえい
 高橋「くそっ……!」
 父親「でも、歳の差が気になるねぇ……」
 学「そうなんだよ」
 リサ「問題ありません!こう見えてもわたし、実際は先生より10歳以上年上の……」
 学「わー!わー!わー!」
 父親「ん?」
 学「何でもない!何でもないです!」

 歳の差と言えば、上野医師と斉藤玲子の歳の差なんか、私とリサよりもヤバいぞ。
 上野医師がアラフィフで、斉藤玲子が10代半ばって……。
 私は確かに研究所の自爆装置から、リサを助け出した。
 上野医師は、喘息で死に掛かっている斉藤玲子を助けた。
 ……前者の方がヤバいか。
 私も、よくあんな咄嗟の判断ができたものである。

 父親「俺は『鬼ころし』だ」
 リサ「!」

 リサ、右耳だけ長く尖らせて、ピクッと動かす。

 高橋「おっ、いいっスねぇ!『どんな鬼でも、これを呑めばたちまち酔い潰れてしまう』って酒っスね!」
 父親「おお!よく知ってるじゃないか、高橋君?」
 高橋「俺の実家、新潟なもんで、佐渡の『鬼ころし』は有名っス!」
 父親「そっちか。これは『みちのく鬼ころし』だが、『佐渡の鬼ころし』も飲んでみたいな」
 高橋「今度、送らせて頂きゃす!」
 学「つったってオマエんち、下越の方だろ?佐渡に知り合いでもいるのか?」
 高橋「何も、佐渡でしか売ってないってわけじゃないっスよ?」
 学「そうか。それもそうだな」

 ぶっちゃけ、今なら通販でも簡単に買える時代だな。

 リサ「先生、わたしにも一口……」
 学「だからダメだって!」
 高橋「『お酒は20歳になってから』だぜ?鬼さんよ?」
 リサ「ぶーっ!」

 リサは頬を膨らませた。

 学「だが、試しに本当に鬼に『鬼ころし』を飲ませてみたい気がしないでもない」
 高橋「先生!?」
 リサ「じゃあ……!」

 リサ、父親の『鬼ころし』に手を伸ばす。

 学「だからダメだって」
 リサ「じゃあ、どうするの?」
 学「俺に考えがある」

[同日20時00分 天候:晴 愛原家]

 すき焼きの肉は、リサが半分以上食べていたような気がする。
 まあ、生協辺りで買ったセール品だったようなので、そこまで高い肉ではなかったようだが。
 夕食が終わると、私と高橋、リサは家の奥の客間に移動した。
 高橋とリサが夕食の後片付けを申し出たので、実際に移動したのはその後になったが。

 学「実は前々から思っていたんだが、善場主任」
 リサ「善場さん?」
 高橋「ねーちゃんがどうかしたんスか?」
 学「実は、かなり酒に強い」
 高橋「あー、確かにこの前の飲み会でも全然酔ってませんでしたね!」
 学「いくら表向きは人間に戻れたことになっているとはいえ、元はBOW(人工生物兵器)。リサと同じ方法でそうされた人だ。つまり、元・鬼といってもいい」
 リサ「うん、鬼のように怖い人。あの目で睨まれたら、わたしでも言う事聞いちゃう」

 リサは白目を黒に、黒目を銀色に変えた。
 興奮すると、このようになる。
 善場主任は、このような変化は無いのだが……。

 学「何気に俺や高橋より飲んでいるだろ?」
 高橋「それもそうっスね」
 学「あの人に『鬼ころし』を飲ませたら、どうなるだろうと思って」
 高橋「案外、大丈夫だったりして」
 リサ「是非飲ませてみよう!」
 学「お土産に買って行ってあげるか」

 普段はお土産を固辞する善場主任も、酒なら受け取ってくれるかもと思った。

[同日22時00分 天候:晴 愛原家]

 母親「明日は9時に後輩の家に行くの?」
 学「ああ。そうするよ」
 母親「分かった。日曜日だから、多分家にいると思うわ」

 リサが風呂に入っている間、私はリビングで母親と話していた。
 母親の後輩の門伝女史は、中学校の音楽教師として働いていたという。
 吹奏楽部にいて、高校も吹奏楽部に入り、そして大学で教員免許を取って、音楽教師となったようだ。
 もちろん今は、定年退職している。

 リサ「お風呂出ましたー」

 リサがやってくると、体操服とブルマではなかった。
 さすがに両親の前だからか?
 白いTシャツに黒いショートパンツであった。

 母親「その恰好で寒くない?」
 リサ「全然大丈夫です。わたし、体温高いんで」
 母親「そう……」
 学「夜更かししないで、早く寝ろよ」
 リサ「分かってるよ。それじゃ先生、わたしは先に寝てるねぇ?」
 学「ああ」

 しかしリサは、2階の私の部屋に行こうとした。

 学「ちょっと待てい!」
 リサ「なに?」
 学「リサが寝るのは、奥の客間だろ!あっち!」
 リサ「夫婦が同じ部屋で寝るのは当然でしょ?」
 学「こらぁっ!」
 母親「あらあら」
 学「『あらあら』じゃねーよ!」
 リサ「でも上野医師は、わたしのお母さん……かもしれない人と【バキューン】してたんでしょう?」
 学「ま、まだ分かんないよ?」

 しかし斉藤玲子が本当にリサの母親なのだとしたら、10代半ばで生んでいることになる。
 そして、その父親とは上野医師であるかもしれない。

 母親「一緒に寝てあげたら?」
 学「母さん!」
 リサ「わー!さすがはお義母さん!」

 リサは私に抱き着いた。

 学「自分の息子が鬼に食われてもいいのかよ!?」
 母親「どうせ人間の女性には相手にされないチー牛ですもの。煮るなり焼くなり好きにしてちょうだい」
 リサ「先生!お義母さんのお許しが出たことだし!」

 リサは鼻息を荒くした。
 興奮して角が生え、両耳も尖っている。

 愛原「何がだ!高橋!何とかしろ!高橋!?」

 しかし、私の召集に応じない高橋。

 高橋「 でへへ……ダメっすよぉ、先生ぇ……そこ触っちゃ……

 それもそのはず。
 高橋は既に寝ていたからである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする