報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東北鉄道紀行」

2023-04-01 21:03:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月5日09時21分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台市地下鉄仙台駅→JR仙台駅]

〔仙台、仙台。ドア付近のお客様は、開くドアにご注意ください〕

 私達を乗せた地下鉄電車が、仙台駅に到着する。
 仙台市に2本存在する地下鉄が交差する所であり、最も乗降客数の多い駅でもある。

〔せんだい、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 電車を降りて、JR仙台駅に近い出口へと向かう。
 棒線駅では運転席に座ったままホーム監視をする運転士も、ここでは乗務員室扉の窓から顔を出して、直接ホーム監視をしていた。

 愛原「ああ、改札出る時、残額確認しといてくれよ?」
 高橋「田舎の方に行くのに、Suica使えるんスか?」
 愛原「ギリ使える」

 Suicaの仙台エリアは、仙台駅を基準にすると、東北本線においては小牛田までの各駅である。
 小牛田駅以北は、一ノ関駅と平泉駅のみ利用可能という。
 私達の行先は平泉町ではあるが、一ノ関以北の在来線が支社が変わるせいか上手く接続しておらず、むしろ一ノ関駅で路線バスに乗り換えた方が早いことが分かった。
 つまり、一ノ関駅が下車駅であるが、何とかSuicaが使える駅である。

 高橋「最低、いくらあればいいんスか?」
 愛原「片道2000円でお釣が来るだろうからな、バス代も合わせて5000円くらい入っていればいいだろう」
 高橋「なるほど」

 地下鉄の改札口を通過する。

 愛原「うん。俺は1万円以上入っている」
 高橋「俺は8000円くらいっスね」
 リサ「わたし、2000円しか入ってない……」
 高橋「おい!」
 愛原「何に使ったんだ?」
 リサ「お菓子買ったりとか、ジュース買ったりとか……」
 高橋「オメーだけ帰りは歩いて帰れ!」
 リサ「何でよ!?」
 愛原「まあまあ。こういうのも、後で請求できるから」

 そもそも通学や学校行事等などの例外を除いて、リサの単独行動は許可されていない。
 通学の登下校時の決められたルートを変更する場合も、アプリを起動させてその旨を入力して送信しないといけないほど。

 

 JR仙台駅に移動し、券売機でリサのPasmoに1万円をチャージしてあげた。

 愛原「無駄遣いするなよ?」
 リサ「わあ、ありがとう!」

 これがリサへの小遣いにもなる。

 愛原「次の電車は9時48分発、小牛田行きだな」

 昔は一ノ関行きがバンバン出ていたのだが、今はもう殆ど存在していない。

 愛原「1番線からか」

 階段を上って、1番線に上がる。

 

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の列車は、9時48分発、普通、小牛田(こごた)行きです。この列車は、6両です。……〕

 リサ「ジュース買ってきていい?」
 愛原「それは、電車の中で飲む用か?」
 リサ「うん」
 愛原「ちょっとそれは、電車が来てから判断させてくれ」
 リサ「え???」
 愛原「ハズレ車両に当たると、ジュースやお菓子の置き場所なんて無いから」
 リサ「???」

 私のこの言葉に鉄ヲタは納得し、鉄ヲタではない高橋とリサは理解できなかったようだ。
 しばらく電車を待っていると……。

〔まもなく1番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、6両です。折り返し、9時48分発、普通、小牛田行きとなります〕

 因みに仙台駅在来線ホーム(仙石線を除く)の放送システムは、首都圏のJR駅と同じ。
 但し、輸送管理システムまでも連動しているわけではないようだ。

 愛原「来たな。よし。リサ、ジュース買ってきていいぞ」
 リサ「う、うん」

 私は接近してくる電車を見て、リサにジュースの購入を許可した。
 今回乗車するのは先頭車ではなく、最後尾。
 それにも理由がある。

 愛原「あー、やっぱり面白編成で来たw」
 高橋「は?」

 実はこの電車、車両が統一されていない。
 『2両編成の電車を3編成連結して6両編成とする』という決まりはあるようだが、その内訳については共通運用となっているようだ。

〔せんだい~、仙台~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 電車が到着して、乗客達がぞろぞろと降りてくる。
 この辺りは本来、ボタン式半自動ドアとなっているのだが、コロナ対策の換気促進の為か、地下鉄や首都圏などの電車のような自動ドア扱いになっている。

 愛原「この席でいいだろう」

 降車客がいなくなると、私と高橋は電車に乗り込み、空いたボックスシートを確保した。
 進行方向窓側にはリサに乗ってもらうとして、私はその前に座り、高橋にはリサの隣に座ってもらうことにした。
 こうすることで、足の長い高橋が、それのやり場に困らなくなるからである。
 最後尾に座ったのは、私は逆向きに座る事になるからで、それならば車掌と同じ目線で、後方の景色でも見ていればと思ったからである。

 高橋「先生」
 愛原「何だ?」
 高橋「どうしてリサにジュースを買っていいか決める時に、この電車が来てからにしたんスか?」
 愛原「じゃあ、ヒントを出そう。オマエ、試しにこの電車の中を1往復してこい」
 高橋「1往復っスか?」
 愛原「ああ。言っておくが、この車両じゃないぞ?ちゃんとこの電車の先頭車まで行ってから、戻って来い」
 高橋「わ、分かりました」

 高橋は席を立つと、前の車両に向かって行った。
 土曜日午前中の下り電車ということもあり、先ほどの上り電車と比べれば空いている。
 高橋が隣の車両に行くのと同時に、リサが戻って来た。

 リサ「お菓子の自販機も見つけたから、ついでに買って来ちゃった……」

 リサはバツが悪そうに戻って来た。

 愛原「ああ、いいよいいよ」

 リサは窓際のテーブルにジュースのペットボトルを置いた。
 飲み物が置きやすいように、窪みが付いている。

 リサ「お兄ちゃん、どうしたの?タバコ?」
 愛原「いや、俺がどうしてリサにジュースを買っていいかどうか決める時に、電車が来てからにしたのかの答えを知りたいらしい」
 リサ「あ、わたしも気になってた!」
 愛原「じゃあ、高橋が戻ってきたら、オマエも行ってこい」
 リサ「どこに?」
 愛原「この電車の先頭車まで行ってきて、それから戻って来るんだ。そんで、途中に何があったか……。この車両と違う点を見つけて、教えてくれ。それが答えだ」
 リサ「面白そう!」

 高橋が首を傾げて戻って来た。

 愛原「よし、リサ。行ってこい」
 リサ「はーい!」

 リサも隣の車両に向かって行った。

 愛原「どうだ?分かったか?」

 私はリサがペットボトルを置いているテーブルを指さした。

 高橋「ああ!やっぱそういうことっスか!」
 愛原「そういうことだ」
 高橋「この電車の前2両だけ、通勤電車タイプでした。横向きのシートしか無いヤツっスね。それだと、テーブルが無いんスね」
 愛原「そういうこと。もしも全車両701系だったらリサには買うのを諦めてもらって、もしもこの後ろ2両が701系で、前2両がE721系だったら、そっちに移動してから買ってもらうという形にしたね」

 尚、リサがいる場合、中間車に乗ることは基本できない。
 そしてリサも戻ってきて、リサも正答を言ったのであった。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤玲子を追え」

2023-04-01 18:15:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月5日08時45分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]

 愛原「リサにそっくり!」

 私と高橋が見つけた集合写真は、他のクラスのと比べて、やや異色だった。
 斉藤玲子だけ、顔写真だけが左上に掲載されているだけだったのだ。
 それも去ることながら、顔がリサによく似ていた。
 母娘と言われれば、物凄く納得できるくらいに。
 やはり上野医師と斉藤玲子の間に、リサが生まれたのだろうか。
 上野医師……まだ、JCだった斉藤玲子に?

 高橋「これはガチっぽそうっスね」
 愛原学「う、うん」
 母親「あら?」

 すると一緒にアルバムを見ていた母親が、あることに気づいた。

 母親「このクラス、涼子の所じゃない」
 学「知り合い?」
 母親「このアルバムを貸してくれた、私の後輩よ」
 学「ええっ!?」

 母親はこの中学校では吹奏楽部に所属していた。
 吹奏楽部は文化部の中でも、体制は運動部に近いという。
 その為、先輩・後輩の上下関係も、他の文化部と比べると締まっている雰囲気はあった。
 それが今でも交流がある理由にもなっているのだろう。

 学「母さんの後輩って?」
 母親「このコね。門伝涼子って言うの」
 学「その門伝さんに、この斉藤玲子について聞けないかな?」
 母親「じゃあ、私から聞いてみるわ。どっちみち、このアルバムは返さないといけないしね」
 学「ありがとう!」
 高橋「先生、住所を!」
 学「おー、そうだった!」

 私は住所録を調べてみた。
 市立の中学校だから、皆して同じ区である。
 門伝涼子さんも、住所からして若林区役所の近くが実家のようだ。
 ところが、だ。

 学「何だこれ!?」

 斉藤玲子だけが違った。
 彼女だけ市外だった。
 市外どころか……。

 学「岩手県西磐井郡平泉町……」
 高橋「岩手っスか!?」
 学「こんな遠くから通ってたの!?」
 母親「ええ?そんなはずないけどねぇ……」

 さすがの母親もびっくりしていた。

 母親「ただ、中には本籍地を書いていたり、卒業と同時に引っ越すコもいたから、この斉藤さんってコもそうだったのかもしれないわね。これは引っ越し先または、本籍地なのかもしれないわよ?」
 学「そうかぁ……」

 私はてっきり斉藤玲子も区内に実家があって、そこからこの中学校に通っていたものだと思っていた。
 いや、在学中はそうだったのだろう。
 とはいうものの、クラスの集合写真の撮影日にいなかったというのが何とも……。
 もちろん、それは斉藤玲子だけではない。
 他のクラスにも、やむにやまれぬ事情で集合写真が撮れなかった生徒もいることはいる。
 だが、さすがに住所が岩手県というのは、この斉藤玲子だけだった。

 高橋「ど、どうします?」
 学「まずはこの住所に何があるのか調べてみよう」

 私は自分のノートPCを取り出した。
 幸いこの家にはWi-Fiが飛んでいるから、それでネットに繋ぐことができる。
 それでグーグルマップにアクセスし、住所を入力した。
 すると……。

 学「そうか!平泉といったら、毛越寺とか中尊寺で有名な所か」
 母親「昔、家族旅行で行ったことあるでしょ?」
 学「そ、そうだったっけ?」
 母親「このコったら、泊まった民宿にお化けが出るとか何とか騒いで、寝かしつけるの大変だったのよぉ?」
 高橋「ほおほお!?先生のお母さん、その話、もっと詳しくいいっスか!?」
 リサ「わたしもわたしも!」

 ダイニングにいたリサがも飛んできた。
 既に鬼形態に戻っており、長く尖った耳をピンと立てていた。
 鬼だけに、地獄耳なのだろう。

 学「母さん、やめてくれ!もう30年以上も前の話だろ!?」
 高橋「どこの民宿っスか?俺も泊まって、先生の軌跡を追います!」
 リサ「わたしも!」
 学「俺達が追ってるのは、上野医師と斉藤玲子の軌跡だろうが!」
 母親「どこだったかしらねぇ……。あの時はあんまりお金が無くて、高い旅館とか泊まれなかったからねぇ……」
 学「何だか、不気味に古い宿に泊まった記憶が蘇ってきたよ。もうちょっと予算掛けてくれても良かっただろうに……」

 私は文句を言った。

 学「えーと……あの住所だと……あれ、食堂がある?『さいき食堂』?ふーん……斉藤玲子の実家は食堂だったのか?」
 母親「さいき?……もしかしたら、そういう名前だったかも?」
 学「そうなの?グーグルマップには、『食堂』って書いてあるけど……」
 母親「私の記憶違いかしらねぇ……」
 学「俺も行ったことがあるのなら、行けば思い出すかもしれないな。早速、行ってみよう」
 母親「車使う?」
 学「あー、そうだなぁ……」

 だが、目を逸らす高橋。

 学「今回は電車とバスで行くわ」
 母親「そうなの?」
 学「うん。どっかの誰かさんが免停食らいやがったからさ」
 高橋「さ、サーセン……」

[同日09時15分 天候:晴 同区白萩町 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]

 

 私達は門伝氏のことを母親に任せ、まずは地下鉄の薬師堂駅に向かった。
 基本、この駅では東西両方向の電車が同時入線・同時発車する。

〔1番線・2番線に、電車が参ります〕

 地下鉄の地下ホームということもあり、電車が接近してくる大きな音や強い風が吹いてはくるものの、東京の地下鉄と比べて大した感じがしないのは、編成が短く、また、この辺りは線形も悪いので、高速度で入線することがないからだろう。
 実際、入線してくるのは小型車両の4両編成である。

〔1番線・2番線の電車が、発車します〕

 電車に乗り込むと、棒線駅では停車時間も短く、すぐに発車する。
 尚、小さな駅でもホームドアはしっかり存在している。

〔次は連坊、連坊。仙台一高前です〕

 私はドアの前に立つと、スマホを開いて乗り換え案内を見ていた。
 確信も無く現地に向かうのだから、新幹線ではなく、在来線で行くことにした。
 新幹線でさえコロナ禍による減便で、特に仙台以北はスッカスカのダイヤである。
 元からスカスカの在来線においては、特に減便はされていないが、それでも本数は少ないので、予め時刻を調べておく必要はあった。
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