報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサと2人の帰宅」

2023-04-24 21:23:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日16時19分 天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私とリサは、無事に菊川駅に着いた。
 電車を降りると、改札階へ上がるエスカレーターへと向かう。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 急行電車が通過するような小さな駅では、各駅停車もすぐに発車する。
 ホームには強風が吹いた。
 エスカレーターや階段にも、その注意を促す表示がしてある。
 リサのさらさらとした髪や、短い制服のスカートがその風に靡いた。

 愛原「高橋もいないことだし、途中で食材買って行こうか?」
 リサ「うん、分かった」

 改札口を出ると、リサはまた私と腕を組んできた。

 愛原「何だか恥ずかしいなぁ……」
 リサ「わたしのお母さんも、こうして……お父さん?……と、腕を組んだのかな?」
 愛原「さあ……。何しろ、50年も前だからなぁ……」

 医療ミスの廉で警察に追われ、ヤクザにも追われていた上野医師。
 そして、白井伝三郎に追われていた斉藤玲子の2人に、腕を組んで歩くほどの余裕があったのかは分からない。
 だが、もしもリサの両親がこの2人なら、少なくとも逃亡生活の最中に子作りできた余裕があったと窺い知ることはできる。
 それも、リサ1人だけではない。
 日本版リサ・トレヴァーとなったリサの姉妹達もいるのだ。

[同日16時35分 東京都江東区森下 ローソンストア100江東森下三丁目店]

 コンビニながら、ミニスーパーの機能も併せ持つローソンストア100が近所にあって助かる。

 愛原「夕食は何かデリバリーを頼むから、明日の朝だな」
 リサ「分かった。他にも何か買っていい?」
 愛原「いいよ」

 私は明日の朝食用の食材を買っていた。
 もっとも、殆ど電子レンジやオーブントースターで完結できてしまうものばかりだが。
 リサはお菓子とジュースでも買うのかと思いきや、もちろんそれもあったのだが、他にも生理用品や化粧水などを所望した。
 うん、女の子だから、当たり前だな。
 それと、リサが関心を寄せていたのが……。

 リサ「鬼ころし……」
 愛原「こらこら!お酒は20歳になってからだぞ?」

 実家で父親が飲んでいた『鬼ころし』とは違う酒造メーカーだが、パック入りの酒でそれが売られていた。
 1匹の赤鬼が千鳥足になっているイラストが描かれていた。

 リサ「わたしの実年齢は50歳以上……」
 愛原「実際の肉体年齢と、新しい戸籍の年齢が基準です!」
 リサ「わたしが飲んだら、どうなるかな……?」
 愛原「そりゃあ、またいつぞやの時みたいに、変化するだろう。今度は、どんな状態になるか分からんのだぞ?だから、飲酒禁止」
 リサ「あのお酒はね。でも、これなら違う効果が出そうな気がする……」
 愛原「違う効果って何だよ?」
 リサ「飲んでみないと分かんないけど、多分、この赤鬼さんみたいになる」
 愛原「てことは、酔い潰れるってことだろ。ダメだよ。まだ17歳なのに」
 リサ「うーん……」

 元々『鬼ころし』というネーミングは、『普段は鬼のように強い巨漢であっても、これを飲めば立ちどころに酔い潰れる』ことから付けられたそうなのだ。
 つまり、本物の鬼かどうかは関係ない。

 リサ「鬼封じの酒……鬼の力を封じる効果……」
 愛原「マンガの読み過ぎだよ。とにかく、今度こそ取り返しのつかない状態に変化したら大変なことになるんだから、絶対に飲まないように。分かった?」
 リサ「……はーい」

 とは言いつつ、私も父親が美味そうに飲んでいたのは思い出した。
 酒造メーカーは違うし、所詮コンビニでパック詰めで売られているくらいだから、そんなに上等な酒ではないのだろうが、私は試しに1パック買ってみることにした。
 200mlなら大した量ではない。
 ちょうど、給食の牛乳パック1個分である。

[同日17時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私とリサはマンションへは帰らず、事務所へ立ち寄ることにした。

 愛原「ピザを予約注文しておいた。リサはLサイズのミートピザでいいな?」
 リサ「ん!」
 愛原「育ち盛りだから沢山食べるのはいいが、今のオマエはそのエネルギーが『鬼の力』に消費されるからな……」
 リサ「お腹空くからね。それに、たまに電撃を放たないと、エネルギーが余って漏電しちゃう」
 愛原「どうするんだ!?」
 リサ「そういう時は、屋上に行くの」
 愛原「屋上?」
 リサ「そう。屋上には避雷針があるから、それに電撃を放つの」
 愛原「なるほど。人工的に落雷させるわけか」
 リサ「そう。そうするとね、結構スッキリするから」
 愛原「ストレス解消か」

 リサは事務所内を掃除してくれた。
 しかし、狭い事務所とはいえ、1人で掃除するのは大変だろう。
 それはリサも思ったらしく……。

 リサ「明日、『魔王軍』のメンバー何人か連れて来て、掃除手伝ってもらう。先生、バイト代よろしく」
 愛原「ああ、分かった。どうせ明日は、高橋も帰って来るしな」
 リサ「でも、お兄ちゃんは病み上がりだし」
 愛原「まあ、そうだな。明日は無理はしないようにさせないと……」

[同日18時00分 天候:曇 同地区内 愛原のマンション]

 事務所を閉めて、私とリサはマンションに帰宅した。

 愛原「風が出てきたな……」
 リサ「今夜は大気の状態が不安定になるんだって」
 愛原「そうなのか」

 じゃあ、雨が降るかもしれないな。
 リサは相変わらず、私と腕を組んでくる。

 愛原「それにしてもリサ、変化前よりもスカートが短くないか?」
 リサ「『魔王軍』のメンバーがそうしてるだけだよ」
 愛原「『魔王様』として止めないのか?」
 リサ「理由が無いから」
 愛原「でも、校則違反じゃないのか?」
 リサ「ここまでギリギリ違反じゃない」
 愛原「そうなのか!」
 リサ「それに……」
 愛原「それに?」
 リサ「ヨドバシから、『この方が愛原先生も喜ばれるよ』って言われたから」
 愛原「おいおいw」

 私はそんな風に見られているのか。
 いや、それとも、オシャレな淀橋さんが私をダシにしているだけか?

 愛原「まあ、俺の口からは何とも言わん。それに、スカートの下はブルマだろ?」
 リサ「見る?」

 リサはスカートの裾を掴むと、少し持ち上げる仕草をした。

 愛原「いや、いいよ!こんな、マンションの外で……」
 リサ「じゃあ、入ったらね」

 玄関から部屋に入ると、リサは一気にスカートを捲り上げた。
 しかし、その下は学校指定の黒いスパッツであった。

 愛原「あれ!?」
 リサ「ははっw、ゴメンねぇ!ガッカリさせちゃって!」
 愛原「い、いや、してないよ!」
 リサ「トイレ掃除の時に濡らしちゃって、それで着替えたの。だから、乾かしておくね」

 リサは鞄の中から、緑色のブルマを取り出した。

 愛原「トイレ掃除で、何で濡らしたの?」
 リサ「アホが1人、ホースの水勢い良く流しやがって、それでブルマが濡れたの」
 愛原「パンツは?」
 リサ「それも濡れたから、生理用のを持って来ておいて良かった」
 愛原「まさか、制裁を……」

 するとリサ、ニヤッと笑った。
 マスクを外しているので、口元から牙が覗く。

 リサ「『老廃物』と『血液』の提供で許してやったよ」

 リサは右の掌から、触手を出して言った。
 変化後も、そこから触手を出す所は変わらない。
コメント
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