報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「2人きりの夜」

2023-04-25 21:01:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日19時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 

 ピザが届くまでの間、私はリサの服などを洗濯した。
 夜から雨が降るというので、洗濯物は部屋干しにする。
 リサは先に風呂に入っていた。

 愛原「どうもお世話さま」
 配達員「ありがとうございましたー!」

 ピザは時間通りに届いた。
 玄関を開けると、湿った空気を感じたので、雨が降り出してくるのも時間の問題らしい。

 リサ「おーっ!ピザ届いた!」

 全裸にバスタオルだけ巻いたリサが、脱衣所から湯気を立てて顔を出した。
 そのまま出てきそうだったので……。

 愛原「テーブルの上に用意しておくから、ちゃんと服着てこい!」
 リサ「本日ネイキッド・デー」
 愛原「アホか!」
 リサ「ラスボスクラスのBOWは、服着てないよ?」
 愛原「それはBSAAやテラセイブに射殺される前提だからな?それに、オリジナルのリサ・トレヴァーは最期まで服着ていたそうじゃないか」
 リサ「それもそうだね」

 リサは納得して、再び脱衣所に入っていった。
 アメリカのオリジナルのリサ・トレヴァーを引き合いに出すと、体内のGウィルスが反応するのか、素直に言う事を聞く。
 Gウィルスの始祖を作り出したのは、リサ・トレヴァーだからだ。

 リサ「お待たせ」

 リサは服を着てきたが、体操服にブルマだった。
 緑と紺のブルマは洗濯中な上、準学校指定体操着としての緑ブルマはもう1着あるのだが、明日も体育があるということで、さすがに今は穿かないようだ。
 よって、今はエンジ色のブルマを穿いている。
 白いTシャツ型の体操服には、大きく『リサ・トレヴァー』と書かれたゼッケンが付いていた。

 愛原「オマエなぁ……。まあ、いいや」
 リサ「ちゃんと服着たからいいでしょ?それも、先生の好きなヤツ」
 愛原「読者が誤解するからやめなさい」
 リサ「ジュース出すねー?先生は『鬼ころし』?」
 愛原「ああ」

 私はコンビニで買った、学校給食の牛乳パックのような形の日本酒を飲むことにした。
 リサが以前誤飲したものとは違う銘柄であり、リサも酒には懲りたはずなのだが、何故かこの『鬼ころし』だけは関心を寄せていた。
 私がまるで本当に牛乳を飲むかのように、ストローを突き刺す。

 リサ「本当に牛乳みたい」
 愛原「なあ?」

 しかし飲んでみると、間違いなく日本酒だった。
 アルコール度数15度の辛口。
 違う酒造メーカーとはいえ、恐らく似たような味であろう同じ名前の酒を、実家の父親は美味そうに飲んでいた。

 愛原「うわっ!これ、効くなぁ……!」
 リサ「……『鬼の力は封じ、人間の力は増大する、正に鬼退治の妙酒』」
 愛原「どこのマンガだ?“鬼滅の刃”か?“うる星やつら”か?」
 リサ「演劇部の台本。この前の文化祭でやってた」
 愛原「演劇部か。あれは観に行かなかったなぁ……」
 リサ「わたしも出演を求められたけど、練習とかメンド臭そうだから断った」
 愛原「いいラスボスの役だろうなぁ……」
 リサ「『桃太郎と夜叉姫』。わたしに、『是非とも夜叉姫の役を!』なんて言われたけど……」
 愛原「いいじゃん!イメージと合ってそうだよ!」

 リサは口を開いて、牙を剥き出しにした。
 それで、Lサイズのピザにガブリ付く。

 リサ「嫌だ。先生以外の男とイチャラブなんて」
 愛原「どうせ演技だろう?ていうか、そういうストーリーなんだ?」
 リサ「何でも、実際の桃太郎の続編がモチーフらしいよ?」
 愛原「桃太郎の続編……。『桃太郎元服絵巻』か。確か、桃太郎に退治された鬼達が、奪われた宝物とメンツを取り返す為に、ボスである赤鬼の娘を人間に化けさせ、桃太郎の所に送り込むという話だな」

 基本的には三人称視点での物語になっているが、桃太郎側の一人称視点、鬼側の一人称視点に変えてみると、だいぶイメージが変わるという。

 リサ「それが夜叉姫」
 愛原「桃鉄とかにもいたなぁ……。うん。桃鉄(桃太郎電鉄)だとよく分かんないけど、桃伝(桃太郎伝説)の方だと、夜叉姫は閻魔大王の娘という設定だったな」
 リサ「そう、それ!」
 愛原「何だ。どっちかっていうと、桃伝シリーズがモチーフか」
 リサ「イザとなったら、サイコロ振って決めるとか、移動が汽車とかっていうシーンもあったらしいよ」
 愛原「桃鉄も入ってんじゃん!」

 桃太郎『電鉄』なのに、移動の基本はSLという矛盾。

 リサ「ね?何か面白くなさそうでしょ?」
 愛原「う、うーん……。まあ、ちょっとカオスティックなストーリーになりそうだ」
 リサ「作者に脚本してもらえばいいんだよ」
 愛原「作者だと、列車のシーンだけで1話が終わるからダメだ」
 リサ「ねー、先生。それより、わたしにも一口ちょうだい」
 愛原「ダメだ。あと3年待て」

 リサは『鬼ころし』を所望した。

 愛原「ネーミングが鬼から見れば最悪なのに、よく飲む気になるな?」
 リサ「なんかね、こういうお酒は特別って感じがするんだよ」
 愛原「そうなのか?」
 リサ「というわけで、お願い!おねがーい!」

 リサが私の隣にやってきて、おねだりしてきた。
 これが普通の飲み物なら喜んであげるところだが、さすがは酒はダメだ。

 愛原「だから、酒はダメだって」
 リサ「えーっ!?」
 愛原「3年経ったら、飲ませてやるから」
 リサ「そんなぁ……!」

 それにしても、ビールも私と一緒に飲みたがるフシはあるが、すぐに諦めてしまう。
 しかし、この『鬼ころし』だけは、随分と食い下がってきた。

 愛原「どうして、そんなに飲みたいんだ?」
 リサ「『鬼ころし』は、特別なような気がするの」
 愛原「でも、普通の酒だって」
 リサ「この赤鬼さんが千鳥足になるくらいなんだよ?わたしを酔わせてヤるチャンスだよ?」

 リサはパックに描かれている赤鬼を指さした。
 リサの指先は鬼らしく、全ての爪が長く伸びている。
 こんなので思いっきり引っ掻かれたら、肉は裂け、血が噴き出すであろう。

 愛原「鬼にそんなことやったら、1発で衆合地獄行きだろうが」

 八大地獄の1つ。
 酒や女で悪さをした者が落ちる地獄。
 基本的にどの地獄も鬼達に責められることに変わりは無いのだが、衆合地獄においてのみ、美しい女の鬼が責めてくれるそうである。

 愛原「鬼は辛い物が好きで、酒も好きだそうだ。リサ、オマエ、本当に鬼に……」
 リサ「……うん。そうかもね」

 リサはピザには、タバスコソースを思いっきり掛けて食べている。
 しかし、全く動じることはない。
 いつの間にかリサの頭には2本の角が生え、両耳も長く尖っていた。

 リサ「……もう、人間には戻れないのかもしれない……」
 愛原「そ、そんなことはないさ。そんなことは……」

 とはいうものの、確信を持って答えることができない私だった。
コメント
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