報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「高橋への面会」

2023-04-28 20:24:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月11日11時00分 天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]

 高橋は警察署の留置場から東京拘置所へ移送され、そこで勾留されることとなった。
 そこでは警察ではなく、検察による取り調べが行われ、そこで起訴か不起訴かが決まるのである。
 取り調べ中以外は面会ができるので、差し入れ品と共に面会に行ってやった。

 高橋「ヘヘ……。先生、どうもすいません……」
 愛原「もういいよ。とにかく、弁護士の先生も頑張って下さっているから、オマエはもうキレ散らかしたりするなよ?」
 高橋「もちろんです。俺のような起訴前の被告人は、単独室に入れられますから、他の収容者とケンカになることはありませんし、お上に逆らったらアウトなくらいなことも知っています」

 高橋は横にいる刑務官をチラッと見ながら言った。
 刑務官は、「こっち見んな」とばかりに、目で叱って来た。

 愛原「全く。何であんなことしたんだ?」
 高橋「先生のことが心配で心配で、居ても立っても居られなくて……」
 愛原「二日酔いくらいで大騒ぎしすぎなんだよ、オマエは」
 高橋「さ、サーセン。いや、スイマセン……」
 愛原「で、次は来週面会に行ってやる。差し入れして欲しい物は?」
 高橋「はい。やっぱ、マンガは定番っス」
 愛原「だろうな。他には?」
 高橋「やっぱ地獄の沙汰も金次第なんで……」
 愛原「だろうな」

 拘置所内には収容者が利用できる売店があり、現金しか使えない為、現金の差し入れは喜ばれるという。
 但し、上限が決まっており、最高額3万円までと決まっているとのこと。

 高橋「あと、着替えとかもオナシャス」
 愛原「分かってるよ。……まだ時間があるが、他に何かあるか?」
 高橋「先生、明日は福島に行かれるんですよね?」
 愛原「そうだ。斉藤玲子の実家を訪ねる。そこにまだ、実家があればの話だが……」
 高橋「因みに、何時の新幹線で行くおつもりですか?」
 愛原「ん?“やまびこ”205号だな。確か、郡山着が9時半頃だ。まあ、あんまり朝早く訪ねるのも失礼だし、世間一般の感覚で、9時台に訪ねるくらいならいいんじゃないかと思ってな」

 すると高橋、何故か顔を青ざめた。

 高橋「せ、先生……」
 愛原「何だ?」
 高橋「も、もう1本後の新幹線にしませんか?あ、いや、できれば10時台くらいの方が……」
 愛原「なに?どういうことだ?」
 高橋「え、えーと……」
 刑務官「……?」

 立ち会っている刑務官も、高橋の挙動に不審な点を感じたようだ。
 もしも疑われた場合、面会の一時中断や強制終了を言い渡されてしまう。

 高橋「や、“やまびこ”じゃ混んでるから、“こだま”にしませんか?」
 愛原「バカ。東北新幹線に“こだま”は走ってねーよ。“やまびこ”っつっても、各駅停車タイプで、それこそ東海道新幹線の“こだま”と同じタイプだから、混んじゃいねーよ」
 高橋「えーと……9時台でも早いような気がしますが……」
 愛原「あんまり遅いと、実家の人が出掛けてしまうかもしれんしな」
 高橋「そ、そんなこと言わずに……」
 愛原「何だ?何が言いたい?はっきりいえ!」
 高橋「あ、いや、その……ハッキリ言うとマズいんで……」
 刑務官「!?」

 刑務官の目が光る。

 愛原「新幹線に乗るとマズいのか?」
 高橋「いや、新幹線は全然オッケーっス。ただ、その……向こうの家に着くのが、9時くらいじゃマズいかと……」
 愛原「だから、何で?」

 高橋は何を言っている?
 幸い、面会中止が言い渡されることはなかったが、善場主任には報告しておこうと思った。
 面会が終了し、拘置所を出て、私は善場主任にに電話を掛けた。
 そして、高橋が言っていたことを伝えた。

 愛原「あいつ、何か知ってるんですかね?」
 善場「恐らく、何か知っているのでしょう。それも、高橋助手が勾留されている暴走行為とは全く別のことです。それがバレると、高橋助手は実刑を受ける恐れがあるので、喋りたくないのでしょう」
 愛原「だったら、私にも内緒にすればいいのに……」
 善場「明日の午前9時頃、福島県郡山市内で何かが起きる。そして、その『何か』に愛原所長が巻き込まれる恐れがある。だから、その時間帯をずらしてほしいと、高橋助手は言いたかったのでしょうね」
 愛原「あいつ、何でそんなことを知ってるんでしょう?」
 善場「……高橋助手は、クルド人の暴走族を教唆して、暴走行為を行ったわけですよね?」
 愛原「そうらしいですな」

 クルド人達に取っては、『強要』されたと思っているだろう。
 だが、警察や検察は、あくまでも高橋を『教唆犯』と見ているようだ。

 善場「……ヴェルトロには、クルド人も多く含まれていたと言います」
 愛原「は?」
 善場「これは内密にして頂きたいのですが、高橋助手が『教唆』したクルド人達、どうもBSAAが引き渡しを要求しているようです」
 愛原「ええっ!?」
 善場「もちろんBSAAから、詳しい情報がこちらにもたらされたわけではありません。ただ私は、立場上、ヴェルトロにはクルド人も多く含まれていたことは知っていましたので、BSAAが動いたという話を聞いた時、何故かヴェルトロの文字が頭に浮かびました」

 そ、そういえば、2005年頃に崩壊した宗教テロ組織、ヴェルトロの残党が日本国内に潜伏しているという話もあるんだっけ。
 日本アンブレラの社長、五十嵐が埼玉県川口市に住居を構えていたのも、ヴェルトロの残党であるクルド人を受け入れる為であったと言われている。

 愛原「高橋がそんなクルド人達の車に乗り込んだのは、偶然だったのでしょうか?」
 善場「分かりませんが、少なくとも高橋助手にとっては、警察や検察に知られたくない内容なのかもしれませんね?」

 高橋、オマエ、一体……?

 愛原「私は、どうしましょう?」
 善場「高橋助手は、新幹線は大丈夫だと言ったのですよね?」
 愛原「ええ、まあ……」
 善場「取りあえずは、予定通りの新幹線をご利用ください。そして、斉藤玲子の実家には、少し時間をずらして向かってください。それで何も無ければ、それで良しということにしましょう」
 愛原「分かりました」

 本当に大丈夫なのだろうか?
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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の暴走」

2023-04-28 16:54:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月8日15時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 夢だ。
 あれはきっと悪い夢だ。
 二日酔いだったものだから、きっと頭がおかしくなってしまったんだ。
 こういう時は、さっさと寝るに限る。
 そして次に目が覚めた時、私は現実に引き戻された。
 枕元に置いたスマホが着信音を鳴らす。
 目覚ましのアラームではない。
 電話着信だ。
 私がスマホを手に取り、画面を見ると、見たことの無い番号だった。
 が、しかし、末尾4桁の数字が『0110』になっている。
 これは警察署の番号である。
 私は急いで、電話に出た。

 愛原「も、もしもし?」
 警察官「もしもし。愛原さんのケータイでよろしいですか?」
 愛原「あ、はい。そうですが……」
 警察官「愛原学さんですね?」
 愛原「あ、はい。そうです……」

 私は上半身を起こした。
 中途半端に眠っていたせいか、まだ頭はボーッとしているが、しかし完全に酒は抜けたらしく、二日酔いの症状は無い。

 警察官「警視庁本所警察署交通課の白石と申します。こんにちは」
 愛原「あ、はい。どうも……こんにちは……」
 警察官「確認したいことがあるのですが、今お電話宜しいでしょうか?」
 愛原「あ、はい。大丈夫です……」
 警察官改め白石「被疑者の高橋正義を逮捕して取り調べをしておりまして、愛原学さんの所の事務所に雇用されていると証言しましたので、その確認のお電話です」
 愛原「あ、はい。確かに、高橋正義はうちの従業員です。あの……どんな容疑なのでしょうか?」
 白石「埼玉県からクルド人の運転する暴走車に乗り込み、菊川1丁目の自宅マンションまで暴走運転をさせた、要は教唆犯ですね」
 愛原「主犯ではないのですか?」
 白石「今のところ、車は本人のものではありませんし、本人が運転していた事実も今のところ確認できておりません。ただ、後部座席に同乗していたというところまでは確認しています」
 愛原「何で彼はそんなことを?ていうか、何で埼玉???」
 白石「それを今、取り調べしている最中です。愛原さんに心当たりはありますか?」
 愛原「いや、全くありません。彼は今日は、仙台から新幹線で東京まで戻って来るはずでした。それがどうして埼玉なのか、さっぱり分かりません」
 白石「もし良かったら、署まで来て頂いてもよろしいですか?」
 愛原「あ、はい。分かりました。すぐに伺います。はい」

 高橋!?
 やっぱり夢じゃなかったーっ!
 私は電話を切ると、急いで出発の準備をした。
 そして、リサにもLINEを送った。
 本所警察署の最寄り駅である錦糸町駅まで来てほしいと。
 そして、更に善場主任にもメールを送った。

[同日17時00分 天候:曇 東京都墨田区横川 警視庁本所警察署]

 私は警察署に行って、担当警察官と話した。
 どうやら高橋が乗った新幹線が、大宮駅で車両故障の為、運転見合わせをしてしまったらしい。
 そこで今度は、宇都宮線に乗り換えたわけだが、今度はその電車が浦和駅で人身事故を起こしてしまった。
 ブチギレた高橋は、駅の外に出ると、たまたま川口だか蕨だかから遊びに来ていた暴走族の車を見つけた。
 元暴走族の高橋は、昔取った杵柄とやらで、その暴走族車をヒッチハイクしようとしたが、今や川口や蕨の暴走族の殆どは不良外国人である。
 特に、クルド人が多い。
 日本語が通じないことに完全にブチギレた高橋は、そのクルド人をボコボコにした上、無理やり都内まで運転させたという。
 高橋も身長180cmある高身長だが、クルド人達も概して大柄だ。
 2人乗っていたらしいのだが、それを1人でボコした高橋も大概だ。
 とにかく、元々暴走族みたいな連中に、超特急で東京まで運転させたらどうなるか?
 火を見るより明らかだろう。
 信号無視は元より、スピード違反やら何やらで累積が【お察しください】。
 不幸中の幸いは、人身事故も物損事故も起こしていないことであるが……。
 逮捕されたクルド人達は、殆ど顔中血だらけだったという。
 よくそんな状態で運転できたものだと、警察官達も呆れていた。
 クルド人達は病院送り。
 今現在取り調べを受けているのは、高橋だけだということだ。

 白石「そのクルド人達も不法滞在の疑いがあるので、埼玉県警とも連携を取ることになりそうです」

 とのことだった。

 愛原「不良外国人達を捕まえたということで、表彰は……?」
 白石「されるわけないでしょ!」

 ついでに私も怒られた。
 因みに取り調べ中は、面会はできないという。
 とにかく、弁護士に相談しないと……。
 全くもう!

 リサ「あ、先生。どうだった?」
 愛原「高橋らしいことをしてくれたもんだ」

 リサは1階のロビーで待っていた。

 リサ「どうするの?」
 愛原「当番弁護士に依頼するしかないだろう。もっとも高橋のヤツ、既に頼んでいたそうだけどな」
 リサ「そうなの!」
 愛原「あいつの逮捕歴は1回や2回じゃないから、当番弁護士制度のことは知っているみたいだ」

 逮捕されてから警察官に依頼すると、警察官は当番弁護士を呼んでくれる。

 リサ「ふーん……」
 愛原「但し、接見は1回だけだから、あとは国選弁護人か私選弁護人かにしないと……」
 リサ「弁護士さんに頼むと、料金高いんだってね」
 愛原「そうなんだよ」

 国選弁護人であれば原則無料、或いは低額で済む。
 が、自分で弁護士は選べない。
 一方、私選弁護人であれば、いつでも弁護士に頼めるが、その代わり料金が高くなりがちだという。
 もっとも、当番弁護士が信頼できそうであれば、そのままその当番弁護士に依頼しても良いようだ(私選弁護人として)。
 高橋は、どのようにしたのやら……。

 愛原「とにかく、飯食ってから帰ろう。今日のところは、ここまでだ」
 リサ「分かった」

 何とか不起訴に持っていけないかなぁ……。
 幸い、暴走行為による被害者はいないようだから……。
 となると、やっぱり弁護士に依頼しないといけないわけだ。
 幸い弁護士事務所によっては、24時間相談を受け付けている所もある。
 夕食を取ってから、改めて考えることにしよう。
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