[11月11日11時00分 天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]
高橋は警察署の留置場から東京拘置所へ移送され、そこで勾留されることとなった。
そこでは警察ではなく、検察による取り調べが行われ、そこで起訴か不起訴かが決まるのである。
取り調べ中以外は面会ができるので、差し入れ品と共に面会に行ってやった。
高橋「ヘヘ……。先生、どうもすいません……」
愛原「もういいよ。とにかく、弁護士の先生も頑張って下さっているから、オマエはもうキレ散らかしたりするなよ?」
高橋「もちろんです。俺のような起訴前の被告人は、単独室に入れられますから、他の収容者とケンカになることはありませんし、お上に逆らったらアウトなくらいなことも知っています」
高橋は横にいる刑務官をチラッと見ながら言った。
刑務官は、「こっち見んな」とばかりに、目で叱って来た。
愛原「全く。何であんなことしたんだ?」
高橋「先生のことが心配で心配で、居ても立っても居られなくて……」
愛原「二日酔いくらいで大騒ぎしすぎなんだよ、オマエは」
高橋「さ、サーセン。いや、スイマセン……」
愛原「で、次は来週面会に行ってやる。差し入れして欲しい物は?」
高橋「はい。やっぱ、マンガは定番っス」
愛原「だろうな。他には?」
高橋「やっぱ地獄の沙汰も金次第なんで……」
愛原「だろうな」
拘置所内には収容者が利用できる売店があり、現金しか使えない為、現金の差し入れは喜ばれるという。
但し、上限が決まっており、最高額3万円までと決まっているとのこと。
高橋「あと、着替えとかもオナシャス」
愛原「分かってるよ。……まだ時間があるが、他に何かあるか?」
高橋「先生、明日は福島に行かれるんですよね?」
愛原「そうだ。斉藤玲子の実家を訪ねる。そこにまだ、実家があればの話だが……」
高橋「因みに、何時の新幹線で行くおつもりですか?」
愛原「ん?“やまびこ”205号だな。確か、郡山着が9時半頃だ。まあ、あんまり朝早く訪ねるのも失礼だし、世間一般の感覚で、9時台に訪ねるくらいならいいんじゃないかと思ってな」
すると高橋、何故か顔を青ざめた。
高橋「せ、先生……」
愛原「何だ?」
高橋「も、もう1本後の新幹線にしませんか?あ、いや、できれば10時台くらいの方が……」
愛原「なに?どういうことだ?」
高橋「え、えーと……」
刑務官「……?」
立ち会っている刑務官も、高橋の挙動に不審な点を感じたようだ。
もしも疑われた場合、面会の一時中断や強制終了を言い渡されてしまう。
高橋「や、“やまびこ”じゃ混んでるから、“こだま”にしませんか?」
愛原「バカ。東北新幹線に“こだま”は走ってねーよ。“やまびこ”っつっても、各駅停車タイプで、それこそ東海道新幹線の“こだま”と同じタイプだから、混んじゃいねーよ」
高橋「えーと……9時台でも早いような気がしますが……」
愛原「あんまり遅いと、実家の人が出掛けてしまうかもしれんしな」
高橋「そ、そんなこと言わずに……」
愛原「何だ?何が言いたい?はっきりいえ!」
高橋「あ、いや、その……ハッキリ言うとマズいんで……」
刑務官「!?」
刑務官の目が光る。
愛原「新幹線に乗るとマズいのか?」
高橋「いや、新幹線は全然オッケーっス。ただ、その……向こうの家に着くのが、9時くらいじゃマズいかと……」
愛原「だから、何で?」
高橋は何を言っている?
幸い、面会中止が言い渡されることはなかったが、善場主任には報告しておこうと思った。
面会が終了し、拘置所を出て、私は善場主任にに電話を掛けた。
そして、高橋が言っていたことを伝えた。
愛原「あいつ、何か知ってるんですかね?」
善場「恐らく、何か知っているのでしょう。それも、高橋助手が勾留されている暴走行為とは全く別のことです。それがバレると、高橋助手は実刑を受ける恐れがあるので、喋りたくないのでしょう」
愛原「だったら、私にも内緒にすればいいのに……」
善場「明日の午前9時頃、福島県郡山市内で何かが起きる。そして、その『何か』に愛原所長が巻き込まれる恐れがある。だから、その時間帯をずらしてほしいと、高橋助手は言いたかったのでしょうね」
愛原「あいつ、何でそんなことを知ってるんでしょう?」
善場「……高橋助手は、クルド人の暴走族を教唆して、暴走行為を行ったわけですよね?」
愛原「そうらしいですな」
クルド人達に取っては、『強要』されたと思っているだろう。
だが、警察や検察は、あくまでも高橋を『教唆犯』と見ているようだ。
善場「……ヴェルトロには、クルド人も多く含まれていたと言います」
愛原「は?」
善場「これは内密にして頂きたいのですが、高橋助手が『教唆』したクルド人達、どうもBSAAが引き渡しを要求しているようです」
愛原「ええっ!?」
善場「もちろんBSAAから、詳しい情報がこちらにもたらされたわけではありません。ただ私は、立場上、ヴェルトロにはクルド人も多く含まれていたことは知っていましたので、BSAAが動いたという話を聞いた時、何故かヴェルトロの文字が頭に浮かびました」
そ、そういえば、2005年頃に崩壊した宗教テロ組織、ヴェルトロの残党が日本国内に潜伏しているという話もあるんだっけ。
日本アンブレラの社長、五十嵐が埼玉県川口市に住居を構えていたのも、ヴェルトロの残党であるクルド人を受け入れる為であったと言われている。
愛原「高橋がそんなクルド人達の車に乗り込んだのは、偶然だったのでしょうか?」
善場「分かりませんが、少なくとも高橋助手にとっては、警察や検察に知られたくない内容なのかもしれませんね?」
高橋、オマエ、一体……?
愛原「私は、どうしましょう?」
善場「高橋助手は、新幹線は大丈夫だと言ったのですよね?」
愛原「ええ、まあ……」
善場「取りあえずは、予定通りの新幹線をご利用ください。そして、斉藤玲子の実家には、少し時間をずらして向かってください。それで何も無ければ、それで良しということにしましょう」
愛原「分かりました」
本当に大丈夫なのだろうか?
高橋は警察署の留置場から東京拘置所へ移送され、そこで勾留されることとなった。
そこでは警察ではなく、検察による取り調べが行われ、そこで起訴か不起訴かが決まるのである。
取り調べ中以外は面会ができるので、差し入れ品と共に面会に行ってやった。
高橋「ヘヘ……。先生、どうもすいません……」
愛原「もういいよ。とにかく、弁護士の先生も頑張って下さっているから、オマエはもうキレ散らかしたりするなよ?」
高橋「もちろんです。俺のような起訴前の被告人は、単独室に入れられますから、他の収容者とケンカになることはありませんし、お上に逆らったらアウトなくらいなことも知っています」
高橋は横にいる刑務官をチラッと見ながら言った。
刑務官は、「こっち見んな」とばかりに、目で叱って来た。
愛原「全く。何であんなことしたんだ?」
高橋「先生のことが心配で心配で、居ても立っても居られなくて……」
愛原「二日酔いくらいで大騒ぎしすぎなんだよ、オマエは」
高橋「さ、サーセン。いや、スイマセン……」
愛原「で、次は来週面会に行ってやる。差し入れして欲しい物は?」
高橋「はい。やっぱ、マンガは定番っス」
愛原「だろうな。他には?」
高橋「やっぱ地獄の沙汰も金次第なんで……」
愛原「だろうな」
拘置所内には収容者が利用できる売店があり、現金しか使えない為、現金の差し入れは喜ばれるという。
但し、上限が決まっており、最高額3万円までと決まっているとのこと。
高橋「あと、着替えとかもオナシャス」
愛原「分かってるよ。……まだ時間があるが、他に何かあるか?」
高橋「先生、明日は福島に行かれるんですよね?」
愛原「そうだ。斉藤玲子の実家を訪ねる。そこにまだ、実家があればの話だが……」
高橋「因みに、何時の新幹線で行くおつもりですか?」
愛原「ん?“やまびこ”205号だな。確か、郡山着が9時半頃だ。まあ、あんまり朝早く訪ねるのも失礼だし、世間一般の感覚で、9時台に訪ねるくらいならいいんじゃないかと思ってな」
すると高橋、何故か顔を青ざめた。
高橋「せ、先生……」
愛原「何だ?」
高橋「も、もう1本後の新幹線にしませんか?あ、いや、できれば10時台くらいの方が……」
愛原「なに?どういうことだ?」
高橋「え、えーと……」
刑務官「……?」
立ち会っている刑務官も、高橋の挙動に不審な点を感じたようだ。
もしも疑われた場合、面会の一時中断や強制終了を言い渡されてしまう。
高橋「や、“やまびこ”じゃ混んでるから、“こだま”にしませんか?」
愛原「バカ。東北新幹線に“こだま”は走ってねーよ。“やまびこ”っつっても、各駅停車タイプで、それこそ東海道新幹線の“こだま”と同じタイプだから、混んじゃいねーよ」
高橋「えーと……9時台でも早いような気がしますが……」
愛原「あんまり遅いと、実家の人が出掛けてしまうかもしれんしな」
高橋「そ、そんなこと言わずに……」
愛原「何だ?何が言いたい?はっきりいえ!」
高橋「あ、いや、その……ハッキリ言うとマズいんで……」
刑務官「!?」
刑務官の目が光る。
愛原「新幹線に乗るとマズいのか?」
高橋「いや、新幹線は全然オッケーっス。ただ、その……向こうの家に着くのが、9時くらいじゃマズいかと……」
愛原「だから、何で?」
高橋は何を言っている?
幸い、面会中止が言い渡されることはなかったが、善場主任には報告しておこうと思った。
面会が終了し、拘置所を出て、私は善場主任にに電話を掛けた。
そして、高橋が言っていたことを伝えた。
愛原「あいつ、何か知ってるんですかね?」
善場「恐らく、何か知っているのでしょう。それも、高橋助手が勾留されている暴走行為とは全く別のことです。それがバレると、高橋助手は実刑を受ける恐れがあるので、喋りたくないのでしょう」
愛原「だったら、私にも内緒にすればいいのに……」
善場「明日の午前9時頃、福島県郡山市内で何かが起きる。そして、その『何か』に愛原所長が巻き込まれる恐れがある。だから、その時間帯をずらしてほしいと、高橋助手は言いたかったのでしょうね」
愛原「あいつ、何でそんなことを知ってるんでしょう?」
善場「……高橋助手は、クルド人の暴走族を教唆して、暴走行為を行ったわけですよね?」
愛原「そうらしいですな」
クルド人達に取っては、『強要』されたと思っているだろう。
だが、警察や検察は、あくまでも高橋を『教唆犯』と見ているようだ。
善場「……ヴェルトロには、クルド人も多く含まれていたと言います」
愛原「は?」
善場「これは内密にして頂きたいのですが、高橋助手が『教唆』したクルド人達、どうもBSAAが引き渡しを要求しているようです」
愛原「ええっ!?」
善場「もちろんBSAAから、詳しい情報がこちらにもたらされたわけではありません。ただ私は、立場上、ヴェルトロにはクルド人も多く含まれていたことは知っていましたので、BSAAが動いたという話を聞いた時、何故かヴェルトロの文字が頭に浮かびました」
そ、そういえば、2005年頃に崩壊した宗教テロ組織、ヴェルトロの残党が日本国内に潜伏しているという話もあるんだっけ。
日本アンブレラの社長、五十嵐が埼玉県川口市に住居を構えていたのも、ヴェルトロの残党であるクルド人を受け入れる為であったと言われている。
愛原「高橋がそんなクルド人達の車に乗り込んだのは、偶然だったのでしょうか?」
善場「分かりませんが、少なくとも高橋助手にとっては、警察や検察に知られたくない内容なのかもしれませんね?」
高橋、オマエ、一体……?
愛原「私は、どうしましょう?」
善場「高橋助手は、新幹線は大丈夫だと言ったのですよね?」
愛原「ええ、まあ……」
善場「取りあえずは、予定通りの新幹線をご利用ください。そして、斉藤玲子の実家には、少し時間をずらして向かってください。それで何も無ければ、それで良しということにしましょう」
愛原「分かりました」
本当に大丈夫なのだろうか?