報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「深夜の帰宅と、翌日の仕事」

2023-04-20 17:01:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日23時12分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東北新幹線9250B列車1号車内→JR東京駅]

 東北新幹線最速列車“はやぶさ”は、深夜の都心を走行していた。
 車窓にはそんな都心の夜景が広がっている。
 しかしリサはそれを楽しむ余裕は無く、むしろ座席にもたれてウトウトしていた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 深夜帯に入っていることもあり、自動放送による乗換案内は省略されてしまっている。
 実際、もう東海道新幹線は東京駅発の列車は無い。

〔「到着ホーム20番線。お出口は、左側です。JR各在来線にお乗り換えのお客様、最終列車の時間にご注意ください。……」〕

 愛原「リサ、そろそろ降りるぞ」
 リサ「ん……」

 リサは眠い目を擦った。
 窓の外に目をやると、リサの目が変わっている。
 白目が赤黒く、黒目が白の三白眼だ。
 しかしそれは一瞬で、また元の目に戻る。
 牙は戻らないが、角は引っ込めることができる。
 私は網棚に置いた荷物を下ろした。
 降りる準備をしているうちに、列車はホームに進入した。

〔ドアが開きます〕

 停車するとドアチャイムではなく、自動アナウンスが流れてドアが開く。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。20番線の電車は、回送電車です。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください」〕

 私とリサは、東京駅にホームに降り立った。

 愛原「やっと帰ってきたな」
 リサ「無事に帰れて良かった」
 愛原「そうだな。もう夜も遅いし、タクシーで帰るか」
 リサ「うん」

 リサはマスク越しに大欠伸をした。

 愛原「疲れたな。早く帰って寝よう」
 リサ「うん」

 新幹線改札口を出て、今度は八重洲南口の在来線改札口を出る。
 日曜日の夜ということもあり、そこの高速バス乗り場から出る夜行バスの乗客達が賑わっていた。
 私達はそれを尻目に、タクシー乗り場に向かう。
 そして、タクシー乗り場に止まっていたタクシーに乗り込んだ。

[同日23時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 帰宅してからリサには、すぐ寝る準備をさせた。

 リサ「夜、眠くなるだけ、まだ人間に近い感じがしていいね」

 と、リサは言った。
 私がどういうことかと聞くと、

 リサ「だって、完全に人間を辞めてる『鬼』って、昼は外に出られないでしょ?」

 とのことだ。

 リサ「昼に活動できなくなったら、わたしも終わりだよ……」

 そう言いながら、洗面所に向かった。
 私は何とも言えなかった。

 愛原「明日は善場主任の所に報告に行かないとな……」

 午前中は報告書をまとめ、午後、報告に行く予定である。
 もしかしたら、そこでまた新たな仕事の依頼を受けられるかもしれない。

 リサ「先生……」

 リサは丸首Tシャツ型の体操服に、臙脂色のブルマに着替えていた。
 学校指定のものではなく、リサが私の気を引く為に購入したものである。
 ただ、エンジ色のブルマは、来年の絵のモデルの衣装として購入したと聞いている。

 リサ「おやすみ」
 愛原「ああ、寝坊するなよ?」
 リサ「先生も気をつけて」
 愛原「お互いにな」
 リサ「おやすみ」

 リサは自分の部屋に戻って行った。
 私も、そろそろ寝るとしよう。

[11月7日14時00分 天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 翌日の午後になり、私は新橋のデイライト事務所に行き、善場主任を訪ねた。
 元々デイライトという名前は『日光』から取っており、アンブレラを潰す為に設立されたからである。
 アンブレラとは雨傘のことであるが、社是として、『病気の雨から世界の人々を守る傘でありたい』というのがあったが、実際は生物兵器を陰で売り捌く悪の製薬企業であった。
 そこで、『日の光が差すほどの好天であれば、雨傘なんか要らないよね?』というタップリの嫌味が込められている。
 もっとも、そんなデイライトに対し、逮捕された日本法人の五十嵐社長は、『日本の夏はどんなに好天であっても、ゲリラ豪雨が降るのだ!』と、裁判で反論している。

 善場「愛原所長、お疲れ様です。今回もありがとうございました」

 事務所内にある応接会議室に通された私は、そこで善場主任と面会した。

 愛原「恐れ入ります。昨日送った新聞記事のコピーは届きましたでしょうか?」

 私は報告書を提出した。

 善場「はい、拝見しました。あそこで白井の名前が出てくるとは、思いもしませんでした」
 愛原「私もです」

 今まで白井伝三郎の兄2人、伝一郎氏や伝二郎氏にも話を聞きに行ったことはあったが、仙台の家のことは全く出てこなかった。
 2人とも開業医や歯科医師を務める医療従事者であったが、いずれも伝三郎とは疎遠であった為、詳しい話を聞くことができなかった。
 3兄弟で医療三師になるはずが、薬剤師になるはずだった末弟が、まさかのマッドサイエンティストになってしまった為。

 愛原「問題は、どこで桧枝岐村の話が出たかなんですよね……」
 善場「それはまだ、今後の調査ということになりますね」
 愛原「私の予想では、斉藤玲子の実家……福島県郡山市の方で、何か桧枝岐村と繋がるものがあったのではないかと思っております」
 善場「素晴らしい推理です。……私共の方でも、独自に調査してみました」
 愛原「えっ、そうなんですか?」
 善場「もちろん、愛原所長方を信用していないというわけではありませんので、そこは誤解なさらないでください。ただ、私にも微かな記憶がありまして……」
 愛原「えっ?」
 善場「私の祖父もまた、福島県出身でして……。もっとも、桧枝岐村とは何の関係もありません。福島県も広いですしね。祖父はいわき市に住んでいましたから」
 愛原「それは初耳ですね。いわき市というと、福島県沿岸部の町です。震災の被害とかは、大丈夫でしたか?」
 善場「はい。いわき市も広いのですよ。で、祖父の家は内陸の方にありまして……。その……愛原所長は、磐越東線の小川郷駅は御存知ですか?」
 愛原「聞いたことがあります。もちろん、乗り降りしたことはありませんが。磐越東線もまた福島県のJR線では屈指のローカル線で、全線走り通す列車は、1日に数本しか無いような路線ですね」
 善場「さすがは愛原所長です。その祖父なのですが、今から50年ほど前、所用で郡山市に行った帰り、磐越東線の車内で急病を起こしまして……」
 愛原「あらま!」
 善場「所長は御存知かもしれませんが、あの路線は途中に大きな駅はありません」
 愛原「小野新町駅くらいですかねぇ……」

 もっとも、あくまで磐越東線内の途中駅では最も大きい駅というだけだ。
 有人駅で上下線離合の設備があるだけに過ぎない。

 善場「よくドラマとかである『お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか!?』レベルですよ」
 愛原「そんなに!?」
 善場「その時、ちょうど運良く医師が乗り合わせており、その医師が救命措置をしてくれたおかげで助かったそうです」
 愛原「そ、その医師って……?」
 善場「名前は名乗っておりませんでしたが、『中学生くらいの娘を連れていた』と言ってましたから……」
 愛原「うあー……」

 恐らく、上野医師と斉藤玲子だろう。
 まさか、善場主任とも繋がっていたとは……。

 愛原「すると、上野医師と斉藤玲子は、磐越東線経由でいわきに行ったと?」
 善場「もしも若かりし頃の祖父を助けてくれたのがそうだとしたら、そうなります」
 愛原「平泉からだと、常磐線経由の方が早いのに?」
 善場「そう、ですね……。郡山を経由する、何か理由があったのかもしれません」

 やはり、郡山の家を調査する必要がありそうだと思った。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「2人の帰京」

2023-04-20 12:57:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日21時15分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅→東北新幹線9250B列車1号車内]

 私とリサは夕食後、実家の風呂に入浴させてもらい、それから父親の車で仙台駅まで送ってもらった。

 父親「はい、着いたよ」
 愛原学「うん、ありがとう。高橋のこと、よろしくね」
 父親「ああ。こっちは任せてくれ」
 リサ「お世話になりました」
 学「リサ、フード被れ。角が出てるぞ」
 リサ「おっと」

 夏は帽子、それ以外の季節はパーカーのフードを被って角を隠す。
 但し、髪を長く伸ばして、巻き上げることにより、隠す方法も検討中とのこと。
 私とリサは車から降りると、仙台駅西口に入った。

 愛原学「キップは渡しておくよ。窓側でいいな?」
 リサ「うん。ありがとう」

 エスカレーターでまずは2階へと上がり、それからまたエスカレーターで3階へと上がる。
 それから、在来線改札口にある自動改札機と比べて、一回り大きな新幹線改札口の自動改札機を通過した。

 リサ「車内販売ある?」
 愛原「いや、“はやぶさ”でも、仙台始発だと無いだろうな」
 リサ「それじゃ、ここで買ってく」
 愛原「そうか」

 改札内コンコースにあるNewDaysに立ち寄り、リサは飲み物とお菓子を購入した。
 私もコーヒーを買って、新幹線ホームに向かった。

〔14番線に停車中の電車は、21時38分発、“はやぶさ”250号、東京行きです。この電車は、大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車です。……〕

 先頭の1号車は、車両の形状のせいで定員が少ない。
 反対側の10号車はそこをグランクラスにすることで、売り上げを確保する狙いがあったようだが、さすがに1号車までもがそのようなことはできなかったようだ。
 そこに乗り込んで、指定された2人席に座った。
 進行方向右側である。

〔「ご案内致します。この電車は21時38分発、“はやぶさ”250号、東京行きです。全車両指定席で、自由席はございません。また、仙台を出ますと、次は大宮に止まります。停車駅に、ご注意ください。……」〕

 座席に座ると、リサはテーブルを出して、そこに飲み物やお菓子を置いた。

 愛原「あっ、待って、リサ」
 リサ「ん?」
 愛原「スマホ、充電させてくれ」

 普通車だと、充電コンセントは窓の下にしか無い。
 必然的に窓側席の特権的な位置にある。

 リサ「いいよ」

 私は充電器を出すと、それでリサの足元にあるコンセントに差した。

 リサ「ねえ、先生。こっち見て」
 愛原「何だ?」

 するとリサ、わざと足を開いた。
 黒いスカートの中が、目の前に現れる。
 そこには、白いショーツがあった。
 紺色のブルマを穿いていたはずだが、入浴する時に脱いで、穿かなかったようである。

 愛原「こら、はしたないぞ!」
 リサ「先生になら、いいからね」
 愛原「何でブルマ穿かなかったんだ?」
 リサ「どうせ家に着いたら脱ぐし」
 愛原「大丈夫だろうな?ちゃんと持って来ただろうな?」
 リサ「大丈夫だよ。どうして?」
 愛原「子供の頃、母方の従姉が夏休みとかに遊びに来たことがある。俺よりもズボラな性格で、よくそこら中に脱いだ服をそのままにするもんだから、伯母さんによく怒られてたんだ」
 リサ「ほおほお。それでそれで?」
 愛原「使用済みのパンツやら、ブルマやらね。伯母さんでも回収しきれずに、そのまま帰ってしまったことがある」
 リサ「そして先生は、それをパクッてヌキヌキ……」
 愛原「するかい!……したかったけど」
 リサ「あ、したかったんだw」
 愛原「そろそろ女の子に興味を持つ年頃に、そんなことやられてみー?そういうことだから。オマエも気を付けろよ?今更だけど。何せ東京中央学園は、男女共学だからな」
 リサ「先生の子供の頃の思い出、わたしが再現してあげる!」
 愛原「せんでいい。ちゃんと脱いだ服は片付けるように」

[同日21時34分 天候:晴 JR東北新幹線9250B列車1号車内]

〔14番線から、“はやぶさ”250号、東京行きが発車致します。次は、大宮に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 リサと話をしているうちに、発車の時刻になり、ホームから微かに発車メロディが聞こえてきた。
 地元の管弦楽団『仙台フィルハーモニー』の生演奏を録音したもので、“青葉城恋唄”を発車メロディ用にアレンジしたものである。
 そして、甲高い客扱い終了合図のブザーが響いてきたかと思うと、ドアが閉まる音がする。
 仙台駅にはホームドアが無い為、車両のドアが閉まり切ると、列車が走り出した。
 上り副線ホームに停車していた為、本線に出る為にポイントを渡る。
 その時にガクンと列車が大きく揺れた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“はやぶさ”号、東京行きです。次は、大宮に止まります。……〕

 まだ、仙台市内においてはそんなにスピードは出さない。
 カーブが続くからだろう。
 仙台市内を出て、隣の名取市内に入る頃には加速を始める。

 愛原「あんまり男をからかうんじゃないぞ?」
 リサ「もちろん、先生以外にはこんなことしないよ。それより、もっと先生の昔の思い出聞かせて?」
 愛原「分かった分かった。母方の従姉はズボラなこともあって、あんまり可愛げは無かったんだけど、父方の従姉は逆でね。当時悪ガキだった俺は、イタズラでそんな従姉のスカートめくりをしたことがある」
 リサ「で、何色のパンツ穿いてた?わたしが再現してあげるよ」
 愛原「いや、パンツは見えなかった。何せ、ブルマを穿いてたんだからな」
 リサ「ああ、そう。何色?」
 愛原「緑。母方の従姉は紺色のブルマだったが、父方の従姉は緑のブルマだったよ」
 リサ「緑なら、東京中央学園と同じだね」
 愛原「そうだな」
 リサ「……あ、先生。他の女にはそんなことしちゃダメだよ?浮気と見なして電撃だからね?」
 愛原「今更そんなことするかい!犯罪だっつの!」

 まだ小学生の悪ガキが、身内にやっているから怒られるだけで済むのである。

 愛原「それより、高橋が心配だ」
 リサ「今更ゾンビ化はしないでしょ」
 愛原「そういうことじゃない!」

 熱が上がったりしないかが心配だと言ってるのに……。

 リサ「先生のブルマの思い出は分かった。あとはスク水の思い出とかは?」
 愛原「いや、それは無い。確かに小中学校では旧式スク水だったが、高校では競泳水着だったな。それは東京中央学園も同じだろ?」
 リサ「そうなんだけど、わたしがスク水着たら、『魔王軍』が真似するようになったね」

 体操服が緑なら、学校指定の水着も緑なのだが、通常は競泳水着タイプであった。
 それがリサが、旧型のスク水を着たら……。
 さすがは『魔王様』である。
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