報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼娘と2人旅」

2023-04-29 21:04:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月12日06時45分 天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→新宿線661K電車先頭車内]

 高橋は拘置所に収監されたままなので、福島県への調査は私とリサだけで行くことにした。
 まずは東京駅に向かう為、最寄りの菊川駅に向かった。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 愛原「高橋の新幹線チケット、無駄にしたよ」
 リサ「払い戻ししたんでしょ?」
 愛原「その手数料は取られたんだよ」
 リサ「あー……」
 愛原「その手数料は、さすがのデイライトさんも出してくれないし……」
 リサ「だよねぇ……」

 列車番号の末尾のアルファベットがKということもあり、京王線から乗り入れていた京王電車が入線してきた。
 旧型の車両である。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 平日の同じ時間よりは空いているだろうが、ローズピンクの座席が空いているということはなく、私達は反対側のドアの前に立つ。
 恐らく、後ろの車両は空いているだろう。
 しかし、今回はあえて混んでいる先頭車に乗り込んだ。
 その理由は、東京駅への乗り換えが、この車両の方が便利だからである。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 ホームドアと共に、電車のドアも閉まる。
 2打点チャイムが2回鳴るタイプで、JR東海の普通列車と同じチャイムである。
 運転席から発車合図のブザーの音が聞こえると、ガチャッと運転士がハンドルを操作する音が聞こえた。
 そして、エアーの抜ける音がすると、電車が動き出した。
 明るいホームから、暗いトンネルの中へと入る。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 自動放送は都営の車両と共通。
 リサは制服ではなく、私服を着ていた。
 デニムのショートパンツに、上は黒いTシャツ。
 そして、その上からはグレーのフード付きパーカーを着ていた。
 今はそのフードを被っている。
 角や尖った耳を隠すのに、フードは打ってつけなのだ。
 さすがに真夏だとそういう上着は着れないので、代わりにキャップを被って角を隠している。
 意識して角を引っ込めることはできるのだが、ふとした拍子に戻ってしまう恐れがある為、常に被っておいた方が無難だということになった。
 デニムのショートパンツやミニスカートを穿くのは……太ももを見せたい年頃なのだろう。
 制服のスカートも短くなっているし。
 それと、もう1つ理由があった。
 それは、斉藤玲子のこと。
 平泉の食堂の大女将が、玲子が上野医師と共に出て行く最後の姿を見ていた。
 その時、斉藤玲子はデニムのパンツを穿いていたという。
 当時は『ジーパン』と言ったか。
 リサのように太ももが見えるほどのショートタイプではなかったようだが、それを聞いたことで、リサも真似したようである。

[同日07時32分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 都営新宿線は馬喰横山駅で降りた。
 そして、そのまま電車の進行方向に向かって歩くと、下に下りる階段がある。
 そこを下りると、JRとの乗換改札口があり、そこを通ると、すぐにJR総武快速線乗り場である。
 それで東京行きの電車に乗り換え、私達は東京駅に無事到着した。
 尚、キップは新幹線特急券と乗車券が1枚になったタイプではない。
 『東京都区内→郡山』の乗車券を先に使用することになる。
 東京都区内とは、東京23区内のJRの駅なら、どこからでも乗り降りして良いという乗車券だ。
 新幹線に乗るのは東京駅からだが、そこに向かうのに、馬喰町駅は堂々たる東京都区内なので、ここでその乗車券が使用できるというわけである。
 そして、東京駅地下総武線・横須賀線ホームに到着。
 京葉線ホームほどではないが、地下深い場所にあるということもあり、ここから新幹線ホームへ向かうのに、少し時間が掛かる。
 もちろん、余裕を持って家を出たので、特に慌てる必要は無い。
 それに……リサが駅弁を所望しているので。
 リサに限らないことだが、どうも鬼というのは、常に空腹でいるようだ。
 その極みが餓鬼なのだろう。

 リサ「先生、駅弁は?」
 愛原「新幹線ホームでも売ってるよ」
 リサ「やった!」

 在来線コンコースにも、大きな駅弁売り場はあるが、ホーム上の売店でも販売されている。
 リサが欲しがったのは、やはり肉系統であった。
 で、私は幕の内弁当にする。
 あとは、お茶とかジュースとか……。

〔まもなく22番線に、7時44分発、“やまびこ”205号、仙台行きが、17両編成で参ります。この電車は、各駅に停車します。グランクラスは、10号車。グリーン車は、9号車、11号車。自由席は1号車から3号車と、12号車から17号車です。尚、全車両禁煙です。……〕

 駅弁や飲み物を購入してホームに戻ると、ちょうど列車が入線してくるところだった。
 私達が持っているのは、自由席のキップ。
 だから、自由席まで行かないといけない。
 高橋がいる場合は、3人席狙いなので、必然的に東北新幹線の車両に乗ることになるが、今日はリサと2人なので、せっかくだから秋田新幹線の車両に乗ってみることにした。
 リサと一緒の場合、先頭の17号車に乗らなくてはならない。
 長大編成の先頭車両だから、新幹線ホームもかなり端の方であった。
 日本橋口が近いくらいだ。
 各駅停車の仙台止まりで、これだけの長大編成。
 そして、端の車両ともあれば、乗車口に並んでいる先客は、数えるほどしかいなかった。
 しかも、平日なら上り列車の折り返しなのであるが、土休日ダイヤにおいては、回送列車として入線する。
 その為、すぐに乗車することができた。
 山形新幹線の車両もそうだが、秋田新幹線の車両も在来線規格である為、車両の幅が狭い。
 その為、普通車でも2人席しかないのだが、車両とホームの間が広く空いてしまうことになる。
 そこで、ホームに停車中はドアの下から、ステップがせり上げる構造になっているのである。
 私とリサはそのステップを踏んで、車内に入った。
 そして、進行方向左側の座席に座る。
 併結相手の東北新幹線E5系同様、普通車にもピローが付いている座席だが、シートピッチはやや狭い。
 狭いといっても、旧型車両と同程度であるが。
 少なくとも、E5系や東海道新幹線の普通車よりは狭い。
 3人席を嫌がってこっちの車両を狙う乗客もいるようだが、しかしシートピッチの狭さを嫌う客は敬遠するらしく、結局は乗客の好みということになる。
 尚、グリーン車にあってはどちらも広さは変わらない。
 E5系がモケットシート、秋田新幹線のE6系が一部革製のモケットで、肘掛けが木製という違いである。

 リサ「よいっしょっと」

 窓側に座ったリサは、座席のテーブルを出すと、そこに駅弁と飲み物を置いた。

 リサ「いただきまーす!」

 そして、発車の時刻を待たずして、駅弁の蓋を開けたのだった。
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