報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の夕方」 

2022-05-27 20:20:05 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日16:45.天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 JRあおば通駅→ホテルモントレ仙台]

〔「まもなく終点、あおば通、あおば通です。お出口は変わりまして、左側です。仙台市地下鉄南北線、東西線はお乗り換えです。ホーム後方、連絡改札をご利用ください。本日もJR東日本、仙石線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 稲生家の面々とマリアを乗せた電車は、再び市街地の地下を走行していた。
 このトンネルの名前を仙台トンネルという。
 そのままだ。
 ポイント通過の制限速度は時速25キロ。
 かなり厳しい速度制限だが、行き止まりの頭端式の駅なので、そうなっているのだろう。
 それでも、ポイント通過の際はガクンと大きく揺れる。
 キキィキキィと車輪の軋む音もトンネル内に響く。
 電車は1面2線の島式ホームに入線した。

〔「あおば通、あおば通、終点です。ご乗車ありがとうございました」〕

 電車を降りて、エスカレーターに乗る。

 宗一郎:「疲れたな。早いとこホテルに入って休もう」

 改札口を出るが、地上に出ず、地下道を通ってホテルに向かう。
 ホテルは仙台駅前にあるということだが、仙石線の仙台駅からでも、あおば通駅からでも大して距離は変わらない。
 因みに駅構内は鉄ヲタにお任せとばかりか、ここでは勇太が先導役となる。
 地上に出るエレベーターの場所も、お手のものだ。
 地上にエレベーターで上がると、そこはイービーンズ。
 そこから愛宕上杉通りを南方向へ少し進むと……。

 勇太:「おーっ!すっごいホテル!」

 洋風のホテルが現れた。

 宗一郎:「1日目は和風の温泉ホテルだったからね。2日目は一転して、洋風にしてみた」
 勇太:「なるほど……」
 マリア:「ロンドンのホテルみたいですね」
 宗一郎:「思いっ切り凝ってるでしょう」

 中に入る。

 宗一郎:「それじゃあ、フロントに行って来るから待ってて」
 勇太:「行ってらっしゃい」

 内装の雰囲気は、言うなれば洋館。
 ホラー要素を無くした、マリアの屋敷と雰囲気は似ている。

 勇太:「そういえば、屋敷のエントランスホールには、こういうソファとかは置いてないね」
 マリア:「ホールであって、ロビーではないからね。来客だって、普段は無いもの」
 勇太:「それもそうか」

 しばらくして、宗一郎が戻って来た。

 宗一郎:「お待たせ」
 ホテルマン:「それでは、ご案内させて頂きます。お荷物、お預かり致します」

 荷物を部屋まで運んでもらうのに、ホテルマンを頼んだようだ。
 まずは、エレベーターへ。

 勇太:「エレベーターもレトロな雰囲気だ」

 高層ビルのエレベーターでは、基本的に外側に階数表示のインジゲーターは省略されている(非常エレベーターを除く)。
 ホテルモントレでは省略されておらず、ちゃんと階数表示のインジゲーターがあるのだが、何と扇形の針式である(車の速度メーターのように、このエレベーターが何階にいるのか、針で指し示すタイプ)。
 レトロなエレベーターは明治生命館や日本橋高島屋にもあるが、さすがにそこでもインジゲーターが針式ということはない。
 尚、モントレの場合はレトロ調であり、高島屋のように本当に扉が手動だったり、明治生命館のように扉が木製というわけではない。
 エレベーターそのものは最新式のものだ。
 ただ、外装と内装がレトロ調になっているわけだ。
 乗り込んでみて、内側のインジゲーターも横移動の針式。
 天井灯もシャンデリア風である。

 マリア:「師匠が泊まったら、『是非うちの屋敷にも導入を』なんて言いそう」
 勇太:「地下1階、地上3階建てだからいるかねぇ……」

 マリアの屋敷にも、エレベーターそのものは存在している。
 但し、屋敷の構造上、厨房が地下にある為、厨房で作った料理を上げ下げする為のエレベーターだ。
 学校などで給食のワゴンを運ぶエレベーターがあったりするが、あれをもう少し大きくしたタイプである(ぶっちゃけ、日本橋高島屋のエレベーターをコンパクトにした感じ)。

 ホテルマン:「こちらでございます」

 客室フロアでエレベーターを降り、客室に案内される。

 勇太:「おっ、広い!」

 広いのは当たり前。
 4人泊まれる、つまりベッドが4つ置いてあるファミリータイプだからである。

 勇太:「えっ、マリアも一緒なの!?」
 宗一郎:「そう!Welcome to the family,daughter!」
 マリア:「T-Thank you...dad...」
 佳子:「ちょっと、何言ってるのよ。マリアちゃん、顔真っ赤じゃない!」
 勇太:「『ようこそ家族へ、娘よ』???」
 宗一郎:「直訳するな。『キミも家族だ』と言ったんだ」
 勇太:「それ、アメリカ英語じゃないの?」
 宗一郎:「でも、通じてる。マリアさん、意味が分かるね?」
 マリア:「Yes...」
 宗一郎:「ありがとう」

 宗一郎はホテルマンから荷物を受け取った。
 ホテルマンが退出すると……。

 宗一郎:「それじゃ、スパに行こうか」
 勇太:「今から行くの!?」
 宗一郎:「疲れを癒やしてから、夕食の方がいいだろう。何しろ……昼は松島でだいぶ食べたから、今現在腹は空いてない」
 勇太:「あー、それもそうだね」
 マリア:「Ah...」

 マリア、チラッと佳子を見る。
 怒りのあまり、ヤケ食いするという一面を垣間見たマリアだった。

 佳子:「誰のせいだと思ってるのよ」

 思わず温泉ホテルのように、浴衣に着替えてから……というようなことをやりかかった勇太だが、ここはあくまでスパ設備があるだけのこと。
 よって、私服で行かなくてはならない。

 宗一郎:「宿泊者限定の割引券をもらったんだから、使わない手は無い」

 注意したいのは、温泉ホテルのように、宿泊客は何度でも無料で入浴できるわけではなく、1回ごとに入浴料が掛かることである。

 勇太:「そりゃそうだけど……。夕食は?」
 宗一郎:「このホテルのレストランだよ。和食でいいね?」
 勇太:「僕はいいけど……」
 マリア:「はい。私も大丈夫です」
 宗一郎:「じゃあ、決まりだ。行こう」
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“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の昼」 3

2022-05-27 15:37:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日13:50.天候:晴 宮城県宮城郡松島町 観光船発着場]

 稲生家の面々とマリアを乗せた遊覧船は、無事に松島の船着き場に到着した。

 勇太:「着いた着いた」
 宗一郎:「ここで、少し観光ができるな」
 勇太:「因みに、泊まりはどこなの?」
 宗一郎:「何か、ここに泊まりたくなったなぁ……」
 勇太:「え?」
 宗一郎:「よし。観光案内所に行ってみて、良さそうなホテルがあったら泊まってみよう」
 佳子:「ゴールデンウィーク中なんだから、どこも満室なんじゃないの?」
 宗一郎:「分からんぞ。まだコロナ禍だから、そこまで客足は戻っていないかもしれない」

 稲生家の面々は観光案内所も入っている、松島海岸レストハウスに入った。
 船着き場に隣接している所で、遊覧船の松島側におけるチケット販売所でもある。
 そこに観光案内所もある。

 美人スタッフ:「こんにちはー。何をお探しですか?」
 宗一郎:「キミの心の宿に泊まりたいんだが?」(;゚∀゚)=3
 佳子:「ちょっとカメラ止めろ
 マリア:(;゚Д゚)

 ※只今、佳子が宗一郎を【ぴー】しております。しばらくお待ちください。

[同日14:30.天候:晴 同県松島町内 各店舗]

 宗一郎の軽はずみな行動並びに言動により、松島町内での宿泊は却下され、当初予定通りの仙台市内のホテルでの宿泊となった。

 佳子:「今回の旅行は温泉でゆったりするのが目的なんだから、余計なことはしないでいいのよ」
 マリア:「さ、さようで……。(師匠より怖い……)」

 マリアも禁忌とされた魔法を勝手に使ったことで、往復ビンタを食らったことがある。
 普段は目を細めて飄々としているイリーナも、この時はカッと目を見開いて叱責した。

 マリア:(怒らせたら、往復ビンタじゃ済まない……)
 宗一郎:「笹かまぼこ、焼きあがりました」
 佳子:「さっさとお醤油つけて頂きます」

 町内には笹かまぼこ店もあって、中には焼くのを体験できる所もあるのだが、そこで佳子は宗一郎に人数分作らせた。

 勇太:「い、いただきまーす」
 佳子:「焼き立ては美味しいわねぇ」
 マリア:(勇太ママの圧力が凄すぎて、喉を通りにくい……)

 尚、マリアにとって、将来は姑になるかもしれない相手である。

 勇太:「あちっ、あちあち!」
 宗一郎:「勇太、慌てて食べるな。熱いぞ」
 勇太:「う、うん」

 勇太は水を飲んだ。

 佳子:「あー、そうそう、マリアちゃん」
 マリア:「な、何でしょうか?」
 佳子:「もしも勇太が他の女の子に目や手を向けるようなことがあったら、遠慮なく懲らしめていいからね?」
 マリア:「あ、はい。それはもう……」
 勇太:「ブーッ!」

 勇太、口に運んだ水を噴き出した。

 宗一郎:「勇太、女ってのは大なり小なりメンド臭い生き物なんだ。お互い、御愁傷様な」
 勇太:「は、はあ……」
 佳子:「ちょっと、あなた」
 宗一郎:「はいっ!」
 佳子:「これの次は牡蠣が食べたいわ」
 宗一郎:「あ、はい!ただいま!」
 勇太:「ふ、フフ………。僕はマリア一筋だから、大丈夫……」
 マリア:「差し当たり、LINEでのエレーナの友達登録は削除しておけよ?」
 勇太:「ギクッ!」
 マリア:「それと、ルーシーとリリィもだ」
 勇太:「な、何でそれを……」
 宗一郎:「勇太。女ってのは、男のスマホのロックを何故か解除して中を見る生き物なんだ」
 佳子:「あなた、牡蠣のお店は!?」
 宗一郎:「も、もうちょっとで検索できますぅ……」

 この後、牡蠣の店や観光スポットを巡り巡った稲生家の面々だった。
 全て宗一郎の金で。

[同日16:05.天候:晴 同町内 JR松島海岸駅→仙石線1682S列車先頭車内]

 松島での観光を終えた勇太達は、宿泊先の仙台市内へ戻るべく、最寄りの松島海岸駅に行った。
 本数にはバラつきがあるものの、時間帯によっては当駅始発の電車がある。

〔「ご案内致します。この電車は仙石線上り、16時5分発、各駅停車の仙台方面あおば通行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 往路と同じ元山手線と埼京線の電車を寄せ集めた4両編成の電車が、副線ホームに停車していた。
 ドアの窓が小さいことから、勇太は自分達の乗車車両が元山手線だと分かった。
 その当時の頃からの物であろう、グリーンのモケットのシートに腰かける。

〔「お待たせ致しました。16時5分発、仙石線上り、各駅停車の仙台方面あおば通行き、まもなく発車致します」〕

 遠くから車掌の笛の音が微かに聞こえる。
 そして、首都圏の物よりはソフトな耳障りのドアチャイムと共に乗降ドアが閉まる。
 ドアエンジンのエアーで開閉するドアも、今や珍しくなった。
 電車はゆっくりと走り出す。
 東塩釜以東は単線となるので、本線に入る為にポイントを通過するからだ。

〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は16時5分発、仙石線上り、各駅停車の仙台方面あおば通行きです。途中、本塩釜には16時16分、多賀城には16時21分、仙台には16時43分、終点あおば通には16時45分の到着です。電車は、4両編成での運転です。お手洗いは、1番後ろにございます。次は陸前浜田、陸前浜田です」〕

 勇太:「あーあ……。色々回ったなぁ……」
 マリア:「足が疲れた……」
 佳子:「また温泉付きのホテルに泊まるから、温泉で疲れを落としましょう」
 勇太:「はーい」

 尚、宗一郎は土産物の荷物持ちをやらされていた。

 宗一郎:「荷物は土産物店から送れば良いのではないかね?」
 佳子:「あら?どなたにどれを送るか仕分けしないといけないんだから、ホテルからでいいじゃない。ホテルからでも送れるんだから」
 勇太:「それは確かに」

 電車は西へと進む。
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