報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「半鬼姉妹の都内観光」 4

2022-05-01 20:03:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月29日20:40.天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→愛原のマンション]

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私達を乗せた都営新宿線電車が、菊川駅に到着する。

 愛原:「はい、ここでゴール!」

 私達は電車を降りた。

 愛原:「……と、言いたいところだが、家に着くまではゴールじゃないか。キミ達の場合は、ホテルだな」
 凛:「そうですね」

 電車が轟音と強風を巻き起こしながら発車して行く。

 愛原:「明日の午後、栃木に帰るんだったね?」
 凛:「そうです」
 愛原:「明日はちょこっと都内を歩いてみて、昼食を食べて解散といったところか」
 凛:「……はい」

 改札口を出て、地上に出る。
 ねっとりとした湿気を含んだ風が、私達を包んだ。

 愛原:「何だか降りそうだなぁ……。明日まで持って欲しいけどね」
 高橋:「一応、夜だけ雨らしいっスよ?」
 愛原:「マジか」
 高橋:「これからサーッと降るらしいです」
 愛原:「春雨だな。じゃあ、降られる前に早いとこ帰った方がいい」
 凛:「明日はどうしたらいいですか?」
 愛原:「明日の9時に、この駅前にまた集合しよう」
 凛:「分かりました。明日もよろしくお願いします」
 愛原:「こちらこそ」

 駅前で別れて、上野姉妹は宿泊先のホテルへ。
 私達は、マンションに帰った。

 リサ:「おー、降ってきた降って来た」
 愛原:「間一髪だったな」
 リサ:「あの2人は大丈夫かな?」
 愛原:「寄り道しないでホテルに戻っていれば大丈夫だろ」

 部屋に入ると、ふとリサが言った。

 リサ:「そういえば映画の先輩、どうして一緒にエレベーターに乗らなかったんだろう?断られたわけでも、ケガして動けなくなったわけでもないのに……」
 愛原:「あー、言われてみればな。どうしてなんだろう?」
 高橋:「化け物の自分が、一緒に行ったらメーワクだと思ったんじゃね?」
 愛原:「ちょっとあの映画、分からない所があったな……」

 霧生市のバイオハザードを潜り抜けた側からしてみれば、町が崩壊して行く様は分かる。
 ゾンビが喋るのを不審に思った観客もいたが、これとて、霧生市のバイオハザードを体験してみれば、けして間違っていないということが分かる。
 確かに多くのゾンビは、体が腐って行く苦しさや飢餓感から、呻き声や、獲物に飛びつく叫び声ばかりを上げていたが、喋るゾンビも少なからずいたのは記憶している。
 ただ、それは私達の前に現れなかっただけだ。
 喋れるほどの知能がまだ残っていたからだろう。

 愛原:「同じTウィルスでも、変異しやすい為か、蔓延した時期とタイミングではだいぶ違うらしいな」

 基本的にTウィルスは変異すればするほど、ゾンビ化するタイミングが早くなる。
 霧生市に蔓延したのは、比較的変異した方だという。

 リサ:「私が今撒くと、普通の人間は1時間くらいでゾンビになるだろうね」
 愛原:「早い早い!」

 本当に初期の物は、感染してから実際にゾンビ化するまで1週間くらい掛かったらしい。

 リサ:「しかも、わたしの寄生虫でゾンビも思うがままのラジコン」
 高橋:「それ、どっちかっつーと、プラーガって言わね?」

 虫に寄生されてゾンビ化するというのもあった。
 多分今のリサの能力はそれだ。

 愛原:「プラーガともまた違うんだよな」
 リサ:「そうだねぇ……」

 リサは口をモゴモゴさせた後、口を開いた。
 舌の上には、緑色の芋虫のようなものが一匹。

 リサ:「これだよね?」
 高橋:「さっさと捨てろ、そんなもの!気持ち悪い!」
 リサ:「はい」

 リサはゴクンと飲み込んだ。
 こうやって口から出す以外に、普通に大便と一緒に排泄されることもある。
 ただその場合は殆ど弱体化しており、そのまま下水道に流しても、浄水場で消毒されれば完全に死滅するという。

 愛原:「でもまあ、正直な所を言おう。俺もオマエが、あのリサ・トレヴァーみたいな感じだったら、正直連れて行こうかどうか迷ったと思う」
 リサ:「先生?」
 愛原:「この、今の人間みたいな姿をしている時でさえ迷ったくらいなんだ。さすがにいくら味方サイドに付いてくれたとしても、連れて行こうとは思わなかったと思う」
 リサ:「やっぱり見た目かぁ……」
 愛原:「曲がりなりにも人間の姿をしていて、俺達を何だかんだ殺さずに脱出させてくれたからこそ、連れて行ってもいいんじゃないかと思った。もしもあのリサ・トレヴァーが、オマエみたいな姿をしていたら、クレア達も連れて行ったかもしれない」
 リサ:「なるほど……」
 高橋:「映画に出てきた、アシュフォード兄妹というのは?」
 愛原:「レッドフィールド兄妹がその後活躍することになった、とある島での事件のキーパーソン達だよ。もっとも、レッドフィールド兄妹に敵対したことで、2人とも今頃は地獄界にいることだろう」
 リサ:「人間の姿でいるのも、疲れることがある」

 リサはそう言って、第一形態の姿になった。
 額に一本角の生えた鬼姿である。
 もしかしたら、あのリサ・トレヴァーもマスクの下は角が生えていたのかもしれない。

 リサ:「このくらいなら、どう?」
 愛原:「ケース・バイ・ケースだな。その時になってみないと分からんよ」
 リサ:「そうかぁ……」
 愛原:「高橋、風呂沸かしてくれ。明日も出掛けるんだから、さっさと風呂入って寝よう」
 高橋:「うっス」

〔ピッ♪ お湯張りを、します〕

 リサはリビングのソファに横になって、スマホを弄った。
 第一形態になると、どうしても指の爪が長く尖るので(さすがに意識しない限り、フレディの爪のようにはならない)、タップがしにくいらしい。

 愛原:「絵恋さんとLINEか?」
 リサ:「うん。今日のことを報告する」
 愛原:「そうか。今はLINEがあるから、そんなに寂しくないだろう?」
 リサ:「サイトーは、わたしに会いたいって」
 愛原:「沖縄と東京じゃ、なかなかムリだろうな」
 リサ:「だよねぇ……」

 さて、明日は上野姉妹をどこに連れて行ってあげようかな……。
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“私立探偵 愛原学” 「半鬼姉妹の都内観光」 3

2022-05-01 18:02:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月29日18:07.天候:曇 東京都中央区月島 都営地下鉄月島駅→もんじゃ焼き店]

〔つきしま~、月島~。有楽町線は、お乗り換えです〕

 豊島園駅から45分以上掛かって、月島駅に着いた。
 乗り換え無しなのは良いが、硬い席なので、少し腰や尻が痛くなる。
 それでもリサ達は……。

 リサ:「大先輩凄かったよね!リッカーの首を捩じり切るなんて!」
 凛:「そうですね」
 理子:「あの化け物、リッカーって言うんですか?」

 終始、先ほど観た映画の話題で盛り上がっていた。
 リサとしては、自分が受け継いだGウィルスの元を造り出した大先輩の活躍が嬉しかったらしい。
 GウィルスはゾンビウィルスたるTウィルスよりも取り扱いが面倒臭く、しかも一歩どころか、半歩でも間違えると大災害を引き起こす代物なのだが、上手く使うとそれはもう素晴らしいものになる。
 ここにいるリサだけ、どうして食人をせずに済むのかは未だに調査中ではあるが……。
 GウィルスとTウィルスが、上手い具合に取り込めたとしか言いようが無い。

 愛原:「さて、もんじゃストリートはこっちだ」

 地上に出て、もんじゃ焼き店が立ち並ぶ商店街に入った。

 リサ:「もう予約してるの?」
 愛原:「してるよ」

 駅から程近い所に……。

 愛原:「あった、ここだ」

 ガラガラと引き戸を開ける。

 愛原:「こんばんはー」
 店員:「いらっしゃいませ!」
 愛原:「5名で予約していた愛原です」
 店員:「愛原様ですね!こちらへどうぞ!」

 と、1階店舗の奥にあるテーブル席へ案内された。
 鉄板が2つ並んだ8人席である。
 人数が中途半端な為に、4人席では1人余ってしまう。
 そこで、どうしても4人席が2つ繋がった8人席ということになるのだろう。

 店員:「まずはお飲み物から何にしましょう?」
 愛原:「ビールで!」
 高橋:「同じく!」
 リサ:「同じく!」
 凛:「同じ……って、ええっ!?」
 愛原:「コラ、リサ!」
 リサ:「ちっ!」
 高橋:「ちっ、じゃねぇ!」
 愛原:「キミ達はソフトドリンクにしなさい」
 凛:「は、はい。ウーロン茶ください」
 理子:「カルピスで」
 リサ:「……コーラ」
 愛原:「焼き方なんだが……」
 高橋:「俺に任せてください!」
 愛原:「おー、頼むぞ!」

 既に予約と同時にコースも頼んでいる。
 夕食時の為、私達が入ると、どんどん客が入ってくる。
 混む前に予約しといて良かったと思う。
 先に、もんじゃの材料がやってくる。

 高橋:「じゃ、行きますよ!」

 高橋が慣れた様子で、もんじゃ焼きを作る。

 愛原:「さすがだな。まさか、これも少年院とかで?」
 高橋:「以前、ヤーさんの店でバイトした時にやらされたんスよ」
 愛原:「マジかよ。的屋か?」
 高橋:「そんなところです」
 愛原:「食べる時は、この小さい専用ヘラで、鉄板から直接こそぎ取って食べるんだよ」
 リサ:「食べ方だけ知ってるんだ?」
 愛原:「うるさいな」
 高橋:「リサ、余計なこと言うんじゃねぇ。鍋奉行は俺に任せろ」
 愛原:「これ、鉄板だろ。まあ、オマエなら鍋奉行任せても安心だと思うがな」
 高橋:「あざっス!」
 リサ:「それにしても、オリジナル先輩、カッコ良かったなぁ……」

 リサもまたパンフレットを買っていた。

 愛原:「オマエも顔付きのマスク被って、手枷着けてみるか?」
 リサ:「そうだねぇ……。わたしには、これで十分だよ」

 リサは鞄の中から、白い仮面を取り出した。
 目の部分だけが、横に切れ長に開いているだけの仮面だ。

 凛:「天長会の巫女の儀式用のお面ですね」
 愛原:「日本版リサ・トレヴァーのマスクは、それか」

 もんじゃ焼きの他に、お好み焼きや焼きそばもある。
 ビールがついつい進む内容だ。

 リサ:「……バカだよね、あいつら」
 凛:「何がですか?」
 リサ:「こうやっておとなしく言う事聞いていれば、こうやって美味しい物、楽しく食べれたのにさ……」
 凛:「先輩は特別なんですよ」

 恐らくリサは、他の日本版リサ・トレヴァー達の事を言っていたのだろう。
 だが、凛の言う通りである。
 例え人間の言う事を聞いていたって、味覚が人肉しか受け付けなくなるのであれば、確かにどうしようもない部分はある。
 その点、ここにいるリサは普通の食事もできる所が特別なのだと思う。
 私も、こいつは何か特別な感じがしたから、あの自爆する研究施設から連れ出したのだ。

 愛原:「お兄さん、ビールお代わり」
 高橋:「あっ、俺も」
 店員:「はい、ありがとうございます!」

[同日20:23.天候:曇 同地区 もんじゃ焼き店→都営地下鉄月島駅→大江戸線1972A電車先頭車内]

 愛原:「あー、食った飲んだ。ごちそーさん」
 店員:「ありがとうございまーす!」
 愛原:「あ、領収証よろしく」
 店員:「はい!」

 領収証を切ってもらう私。
 これも、ここにいるBOW達の機嫌を取る為の業務だお。
 会計を済ませて領収証をもらい、店の外に出る。

 凛:「先生、御馳走さまでした!」
 理子:「御馳走様でした」
 高橋:「ゴチになりました!」
 リサ:「ごちそうさま」
 愛原:「いや、いいよいいよ。これもキミ達の……卒業祝い……かな?リサは修了祝い?」
 リサ:「それじゃ、今度は入学祝と進級祝いだね!?」
 高橋:「チョーシに乗るんじゃねぇ」
 愛原:「ハハ……。それじゃまあ、行こうか?」
 高橋:「バスじゃないんスか?」
 愛原:「言っただろ?少しでも元を取るって」

 私は東京フリーきっぷが登録されたSuicaを見せて言った。

 高橋:「それもそうですね」

 帰宅ラッシュで賑わう月島駅に、再び戻る。

 愛原:「さっきの行き先の電車に乗れば、森下に行ける。そこから新宿線に一駅乗れば、 菊川だ」
 高橋:「さすがですね」

〔まもなく1番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 ホームに辿り着くと、ちょうど電車が来る頃だった。

〔つきしま~、月島~。有楽町線は、お乗り換えです〕

 私達は電車に乗り込んだ。
 今度は若干、乗客が多かった。
 若干である。
 座席が殆ど埋まって、立ち客が数人いるくらい。
 この辺は、あまり混まないのかもしれない。
 有楽町線は混んでいるだろうが。
 乗り込むと、反対側のドアの前に立ったり、ドア横の手すりに掴まったり、吊り革に掴まったりした。
 私はというと、乗務員室扉の前に立って、前方を見ることにした。
 短い発車メロディの後で、ホームドアと車両のドアが閉まる。
 そして、電車が動きだした。

〔次は門前仲町、門前仲町。東西線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 リサも私の前にピョコっと立って、前方を眺める。

 リサ:「何だか、ネメシス君が前から突っ込んで来そう」
 愛原:「やめろよ?オマエが言うと、何か本当に起こりそうな気がする」
 リサ:「エヘヘ……」

 タイラントを手懐け、ネメシスからは違う意味でストーキングされるリサ。
 あの映画にはどちらも登場しなかったが、それでもリサ・トレヴァーを登場させたのは英断だったと思う。
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“私立探偵 愛原学” 「半鬼姉妹の都内観光」 2

2022-05-01 11:44:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月29日14:50.天候:晴 東京都練馬区練馬 ユナイテッド・シネマとしまえん]

 都営大江戸線の豊島園駅で降りた私達は、そこからすぐの所にあるシネマコンプレックスに向かった。
 閉園したとしまえん遊園地に近接した施設である。
 元々は豊島園駅前のバス折り返し場であった所らしい。

 リサ:「バイオハザード!?」
 愛原:「そう。あのラクーンシティ崩壊の様子をモチーフにした映画だ。しかも何とそこに、あのリサ・トレヴァーが登場するらしいぞ?」
 リサ:「オリジナルの大先輩!?何それスゴイ!映画に出るの!?」
 愛原:「もちろん本物じゃなくて、役者さんだがな。だけど、フィクションとはいえ映画に出るなんて凄いだろうな」
 リサ:「でもBSAAから見れば、敵なんだよね?イヤだなぁ、ボコボコにされるの……」
 愛原:「いや、ラクーンシティがあった頃はBSAAなんて影も形も無いよ。あれは、アンブレラが潰れた時にできた組織だから」
 リサ:「そうなんだ」
 愛原:「BSAAの重鎮であるクリス・レッドフィールド氏や、アメリカ大統領直轄エージェントのレオン・ケネディ氏がまだヒラ警官だった頃の話だ」
 上野凛:「先輩!あそこで予告編やってますよ!?もしかしたら、先輩の大先輩が出てくるかも!?」
 リサ:「いや、わたしは予告編は観ない。何の先入観もナシで、大先輩の活躍を見てみたい」

 ネタバレは大嫌いなリサである。
 ところが……。

 高橋:「先生!さっきそこで予告編ガン観しまして、ついでにパンフレット買っちゃいましたー!見てくださーい!」

 高橋のヤツ、嬉々としてパンフレットを開きながら走って来た。

 リサ:「この外道ッ!!」
 高橋:「わあっ!?」

 リサ、何といきなり背中から触手を出して、高橋の両手を閉じさせる。

 愛原:「リサ、やめろ!」
 リサ:「あ……」

 リサ、シュルッと触手を引っ込める。
 幸い、一瞬のことだったので、見られてない……か?

 愛原:「オマエ、正体がバレたら大変なことになるぞ!?」
 リサ:「ご、ゴメンナサイ……」
 愛原:「高橋もオマエ、パンフって、そんなもん先に買うもんじゃないだろう?それってネタバレの宝庫だろうが!」
 高橋:「いや、俺、ネタバレ全然オッケーなんで。これから観る映画も、早速ウィキに上がってたんで、それで予習しました」

 そういえばこいつ、絶対にまとめサイトを見てから映画を観るタイプなんだった。

 リサ:「ぶー……」
 愛原:「まあまあ、機嫌直せって。ほら、これでポップコーンや飲み物買ってきていいから」
 リサ:「おー!」

 それにしても、こういう映画館で売ってるポップコーンって、やたらカップがデカいような……。
 しかもこいつら、お昼に寿司食べ放題したくせに、まだデカいサイズのポップコーンを食おうとしやがる。
 Tウィルス感染者が、平気で人食いするのも分かるような気がする。
 だからこそ容赦なく、射殺して良いことになっているのだが。
 そして私達は、座席に座る。
 定刻通りに上映が開始された。

[同日17:00.天候:曇 同地区内 同施設]

 それから約2時間の上映時間を経て……。

 高橋:「アンブレラ……ぶっ潰す!」
 愛原:「いや、もう潰れてるって」
 リサ:「オリジナル先輩、カッコイイ……」
 凛:「凄いですね!あの化け物を手枷が着いたままで、首を捩じり切るなんて!」

 ゲームではボスキャラのリサ・トレヴァーが、まさかの味方サイド!
 だが、たまたまクレアが幼少期に一瞬でも交流を持ってくれたおかげで、リサ・トレヴァー的には友達扱いになり、それが味方サイドになった理由でもあったのだろう。
 あれが敵サイドだったら、素手でリッカーの首を捩じり切るような相手だ。
 更に死人が出ていたことだろう。

 高橋:「俺ちょっとトイレっス」
 愛原:「俺も行こう」

 私と高橋で退場前にトイレに行く。

 高橋:「先生、さっきの映画、ガチバナなんスかね?」
 愛原:「いや、あれはガチバナをモチーフにしたフィクションだろう。実際のリサ・トレヴァーは、洋館の自爆に巻き込まれて死亡したことになってるし」
 高橋:「最後にまさかのエイダ・ウォン。一瞬、アネゴが映画に出てると思いましたよ」
 愛原:「アジア系女優だからな、そりゃあ……」

 トイレから出ると、まだ同じくトイレに行っている少女3人は戻って来ていなかった。

 愛原:「女の子はトイレの時間が掛かるからなぁ……」
 高橋:「まあ、そうっスね。夕飯はどうしますか?」
 愛原:「このまま都営大江戸線に乗るから……。そうだ。月島でもんじゃでも食べるか」
 高橋:「いいっスね!」

 都営大江戸線なら、月島にも行けることを思い出した私だった。

[同日17:20.天候:晴 同地区内 都営地下鉄豊島園駅→大江戸線1710A電車先頭車内]

〔まもなく1番線に、六本木、大門経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 リサ:「夕食はもんじゃ!?」
 愛原:「そうだよ。せっかくこのコ達が栃木から来たんだからな。そういう東京名物を食べておきたいじゃないか」
 リサ:「もんじゃだけで、お腹いっぱいになるかなぁ……」
 愛原:「お好み焼きもあるぞ」
 リサ:「おー!」

 そこへ電車がやってくる。
 夕方ラッシュの始まっている時間帯であるが、逆に都心に向かう方は空いていた。

〔としまえん、豊島園。西武線は、お乗り換えです〕

 私達は空いている先頭車に乗り込み、再び硬い座席へ腰かけた。
 短い発車メロディの後で、ホームドアと電車のドアが閉まる。
 大江戸線は8両編成であるが、ワンマン運転である。
 1両辺りが15~16メートルくらいしか無いので、フル規格だと実質的に6両編成くらいになるだろうか。
 いわゆる、都市型ワンマンというヤツである。

〔次は練馬、練馬。西武池袋線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 この辺りは西部豊島園線との並走区間である。
 もっとも、池袋に行くのなら、豊島園駅始発の池袋行きに乗った方が便利かもしれない。
 ただ、本線系統の池袋線よりは本数が少ないので、タイミングを合わせる必要があるが。

 愛原:「さーて、今からどの店にするか決めるか」

 私は早速、車内のWi-Fiに繋いで、ネットで店探しを始めた。
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