報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「イオンモール川口前川」

2022-05-17 20:17:11 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月2日16:30.天候:曇 埼玉県川口市前川 イオンモール川口前川2F・JTB]

 路線バスでイオンモールに向かった稲生親子とマリアは、そこの2階にあるJTBに向かった。
 カウンターで親子がスタッフと対面している間、マリアは店内にあるパンフレットを見ていた。

 マリア:(リゾートウェディングかぁ……)

 稲生勇太とのリゾート挙式に、胸がドキドキするマリアだったが……。

 ベルフェゴール:「主、申し訳ないが、あなたは日本国内避難命令がまだ解除されていないので、海外挙式は無理だと思われるが……」
 マリア:「くっ……!」

 隣に立つ契約悪魔が、そっと耳打ちしてくる。
 シルクハットに片眼鏡、タキシードにステッキといった、ベタな英国紳士の法則のコスプレをしているが、この姿は周囲の普通の人間には見えない。

 マリア:「ならば、せめてハネムーンを……」
 アスモデウス:「だから海外はダメだって言ってんじゃん」

 今度は勇太の契約悪魔(に今年度決定はしたものの、まだ肝心の勇太が正式昇格していない為に、まだ契約を結べていない宙ぶらりん)のアスモデウスも突っ込んで来た。

 アスモデウス:「てか、いつになったら契約してくれんの?」
 マリア:「私に言うな。師匠に言え。師匠の契約相手、レヴィアタンに連絡は取れないのか?……ん?」
 アスモデウス:「取れるよ」
 ベルフェゴール:「同じ“7つの大罪グループ”だからね」
 マリア:「そうだよ!師匠の悪魔に居場所聞けば良かったんじゃん!!」

 マリアが大声を出したものだから……。

 スタッフ:「あ、あの、お連れ様、大丈夫でしょうか?」
 勇太:「マリアさん!他の人には(悪魔の姿は)見えないんだから気を付けて!」
 マリア:「あっ……!」

 マリア、恥ずかしさのあまり、白い肌が見る見るうちに赤くなっていく。

 マリア:「S-Sorry...ゴメンナサイ……」
 勇太:「彼女、イギリスから来てまだ日が浅いので、日本の旅行会社のパンフレットの素晴らしさに感動しているんですよ」

 勇太は咄嗟に誤魔化した。

 スタッフ:「そ、そうでしたか。ありがとうございます。まもなく、宿泊券の方が御用意できますので、もう少々お待ちください」
 稲生佳子:「勇太。ここはいいから、あなたはマリアちゃんの所に行ってあげて」
 勇太:「う、うん」

 勇太は席を立つと、マリアの所に向かった。

 勇太:「どうしたの、マリア?」
 マリア:「師匠の居場所は、契約悪魔のレヴィアタンに聞けば良かったことに今さら気づいた」
 勇太:「そ、そうか。でも、僕やマリアさんが聞いて教えてくれるかな?」
 マリア:「そ、それもそうか……」
 ベルフェゴール:「それならボクが聞いてきてあげよう」
 勇太:「それは助かる!」
 マリア:「簡単に聴けるのか?」
 ベルフェゴール:「こう見えてもボクは、魔界ではメフィストも電話一本で呼び出せるんだよ?平気平気」
 勇太:「それは凄い!」
 マリア:(電話一本で呼び出される悪魔界のスーパースター、メフィストって一体……)
 ベルフェゴール:「ところが、悪魔は人間界ではケータイが持てないのだよ」
 勇太:「じゃあ、僕のを貸すよ」

 勇太は自分のスマホを取り出した。

 ベルフェゴール:「ダメだ。僕の指、爪が長くてスマホでは上手く押せない。それは悪魔全般に言えることだがね」
 マリア:「ちょっと待った。それじゃあ一部の悪魔が、獲物となる人間や敵対相手によくやる『呪いの電話』はどうやって掛けてるんだ?」
 ベルフェゴール:「あれは公衆電話から掛けてるんだよ」
 勇太:「はあ!?」
 マリア:「Huh!?」
 ベルフェゴール:「というわけで、このモールの公衆電話がどこか教えてくれたまえ。そこからレヴィアタンに問い合わせてあげよう」
 勇太:「た、確か1階のエントランスにあったはずだ。バスを降りて、このモールに入った所」
 マリア:「あそこか……」
 ベルフェゴール:「そこまで案内してくれれば、あとはボクが何とかしよう」
 勇太:「分かった」

 ちょうどそのタイミングで……。

 スタッフ:「ありがとうございました」
 佳子:「どうもお世話さま」

 どうやら、引換券を宿泊券に換えることができたようだ。

 佳子:「それじゃ、行きましょうか」
 勇太:「母さん、まだ夕食の時間じゃないよね?ちょっと行きたい所あるんだけど、いいかな?」
 佳子:「あら。それじゃ、18時に例のレストランで待ち合わせましょうか」
 勇太:「多分、そこまで時間掛からないと思うけど……」

 とにかく勇太とマリアは、佳子と別れて公衆電話に向かった。

 勇太:「あった!あそこ!」

 そして、バス停に一番近い出入口で公衆電話を見つけた。

 ベルフェゴール:「うむ!あとはボクに任せてくれ!」

 だが、ベルフェゴールが電話の受話器を取ると……。

 子供:「ママー、電話の受話器が勝手に浮いてるよ?」
 母親:「見ちゃダメよ」
 勇太:「や、ヤバイ!悪魔は他の人には見えないんだった!」
 マリア:「しょうがない。勇太が代わりに持って!」
 勇太:「は、はい!」
 ベルフェゴール:「あと、100円玉も入れてくれんかね?」
 勇太:「はいはい」
 ベルフェゴール:「ウム。あとはボクに任せなさい」

 カチカチカチと金属のボタンを押す音が聞こえるが、さすがにそこまでは怪しむ他の客はいなかったもようである。

 ベルフェゴール:「はーろー」
 勇太:「気軽なノリだな!」

 そしてしばらく、悪魔同士の通話は続いた。
 100円玉1枚で足りるのだろうかと思ったが、何故か追加投入の合図は鳴らなかった。

 ベルフェゴール:「ウム。場所は分かった」
 勇太:「ホントか!?」

 電話を切ると、先ほどの100円玉が戻って来た。
 結局は無料だったのだ。

 ベルフェゴール:「北緯と東経で言うからヨロシク」
 勇太:「はあ?!」
 マリア:「何故に?」

 それでも北緯と東経をメモする。
 それで勇太はグーグルマップで検索した。
 そこから導き出された場所は……。

 勇太:「キエフスキー駅?」
 マリア:「知らない。勇太、知ってる?」
 勇太:「名前からして、ウクライナのキーウに行く鉄道線の駅って感じだね」

 東京にはいくつかターミナル駅があるのと同様、モスクワ市内には9つのターミナル駅がある。
 キエフスキー駅は、そのうちの1つである。

 勇太:「ウクライナに行こうとしてるのかな?でも、今は戦争中で鉄道が全く動いていないっていうイメージだけど……」
 マリア:「とにかく、いずれにせよ、師匠がモスクワにいるのは間違いないってことだな」
 勇太:「そのようです」

 何をしているのかは分からないが、イリーナの安否が確認できただけで、この2人の弟子は満足だったようである。
コメント (1)
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