報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の昼」 2

2022-05-26 20:54:09 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日11:59.天候:晴 宮城県塩竃市海岸通 JR本塩釜駅→マリンゲート塩釜]

〔「まもなく本塩釜、本塩釜です。お出口は、左側です」〕

 電車は高架線を走行している。
 本塩釜駅は塩竃市の中心駅であり、市役所の最寄り駅にもなっている。
 東北本線にも塩釜駅はあるが、こちらは山側にあり、市街地からは離れている。
 2面2線の対向式ホームに電車は入線した。
 ホームの佇まいは、何となく武蔵野線のそれに似てなくもない。
 しかし、仙石線には貨物列車は通っていない。
 仙台近郊の町の中心駅なので、けして寂しいわけではないのだが、静かな駅ではある。
 立ち番の駅員はいないし、発車ベルが流れるわけでもない。

 勇太:「父さん、大丈夫なの?」
 宗一郎:「何とかな……」

 電車を降りて、改札口に向かう。
 ホームが短いこと(6両編成分ある?)以外は、まるで首都圏にある駅のようである。
 自動改札機も、首都圏にあるものと全く同じである。
 そこをSuicaで通過する。
 マリンゲート口から駅の外に出て、遊覧船が発着しているマリンゲート塩釜に向かう。
 途中にイオンタウンがあるので、その前の歩道を通って行くのがポイント。

 宗一郎:「何だか腹が減ってきたな……」
 勇太:「ちょうどお昼時だからね」
 佳子:「それに、朝はロクに食べなかったでしょう?」
 宗一郎:「そうだな。遊覧船に乗る前に、お昼でも食べよう」

 マリンゲート塩釜に到着する。
 ただ単に遊覧船の発着場だけではなく、飲食店もあるし、何とハローワークもあったりする。

 勇太:「何を食べるの?」
 宗一郎:「いきなり重い物を食べるのはアレだから、蕎麦くらいにしておくか」
 勇太:「確かに軽いね」

 建物の中に入ると、大漁旗やマグロのオブジェが観光客を出迎えてくれる。
 先に遊覧船の窓口に行って、乗船券を購入する。

 宗一郎:「次の出航時間は13時?それじゃ、その便で。グリーン大人4名で」

 窓口の上には電光掲示の時刻表がある。
 まるで、駅の発車標だ。
 時刻と運航される船名、そして何バースから出るのかの案内。

 乗船券を購入すると、宗一郎は元気になったのか、

 宗一郎:「じゃあ、次は腹ごしらえしておこう」

 と、同じ建物内の飲食店に向かった。
 フードコート形式の蕎麦店である。

 マリア:「とり天うどん……とり南ばんうどん……?」
 勇太:「天ぷらのことだね。鶏肉の天ぷらのこと」
 マリア:「天ぷらか!」
 宗一郎:「私は蕎麦にしよう」
 勇太:「竈○炭○郎みたいに、山かけうどんは……無いか」
 マリア:「こら」
 勇太:「とり天そばで」
 マリア:「じゃあ、私も」
 佳子:「マグロワンタンそば頂くわ」
 宗一郎:「私もそれにしよう。まあ、昼は軽く蕎麦だけど、松島に着いたら、もっと色々な物が食べれるよ。笹かまぼことかね」
 勇太:「あ、そうか。作り立ての熱いかまぼこが食べれるんだった」
 宗一郎:「そういうこと」

[同日13:00.天候:晴 同市内 塩釜マリンゲート→丸文松島汽船“第三芭蕉丸”船内]

 出航時間になり、勇太達は船上にいた。
 遊覧船の中では定員300人の大型船で、三層構造になっている。
 1階は2等室、2階はグリーン室、3階が1等室になっていた。
 上に行くほど眺望に優れているからだろう。
 しかし、海面を進む迫力が良いというのであれば、1階席で良いだろう。
 宗一郎は2階席を購入したようである。
 名称は恐らくJRのグリーン車から取ったものだろう。
 座席自体は特に豪華というわけでもないのだが、1階席より空いているのは確かだ。
 せっかくなので、最前部の展望席に行ってみる。

 勇太:「これだけ見ると、名鉄のパノラマスーパーみたい」
 マリア:「冥鉄?」
 勇太:「いや、冥界鉄道公社の冥鉄じゃなく、名古屋鉄道の名鉄」
 マリア:「日本語は難しいね」
 勇太:「そ、そうだね」

 昔は航行しながらウミネコへの餌付け体験もあったそうだが、糞害がひどくなったので中止されてしまった。
 尚、2階には船尾部分に甲板があり、そこに出て潮風を浴びながらクルーズを楽しむこともできる。

 マリア:「この船は外洋に出たりしないよね?」
 勇太:「しないよ。あくまで、塩釜湾から松島湾に向かうだけだから」

 湾から湾を航行するだけであり、太平洋フェリーや商船三井フェリーのように外洋に出ることは無い。

 勇太:「それがどうしたの?」
 マリア:「いや、師匠が『日本国内から出るな』って話をふと思い出してね」
 勇太:「バリバリ日本国内だから大丈夫でしょう」

 広い意味では排他的経済水域内までOKのはずなのだが、狭い意味となると、さすがにギリギリ狙いはマズいだろうか。
 国内航行のフェリーまでなら、ギリOKと思われる。

 勇太:「竹島や尖閣諸島、北方領土も本来は日本の領土なんだけど?」
 マリア:「“魔の者”がどこまで手が伸ばせるかだね。私は本州には手が出せないんじゃないかって思ってる」
 勇太:「そうなの?」
 マリア:「だって考えてもみてよ。いくら眷属とはいえ、“魔の者”の手先は北海道で暗躍したんだよ?」
 勇太:「あっ、そうか!」

 本物の“魔の者”は警戒して日本領土までは入って来れないが、しかし眷属ならOKということか。
 そしてその眷属達ですら、本州には入れなかった。
 揺さぶりを掛ける為、東日本大震災を起こしてみたり、コロナウィルスをばら撒いてみたが、全く動じることはなかった。

 勇太:「本州には入ってこれないってどういうことなんだろう?」
 マリア:「そりゃあ、師匠がそこに屋敷を構えたからだろう」

 とマリアは言ったが、勇太は違うと思った。

 勇太:(大石寺があるからじゃないのか?“魔の者”って、実は第六天魔王のことじゃ?)

 もちろん、勇太の想像である。

 マリア:「ちょっと、デッキに出て見ない?」
 勇太:「行く」

 2人は船尾甲板に出た。
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“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の昼」

2022-05-26 16:04:39 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日10:30.天候:晴 宮城県仙台市太白区秋保町湯元 ホテル瑞鳳→送迎バス車内]

 宿泊客用の送迎バスは2便出ている。
 初便はホテル8時半発だったが、宗一郎ダウンの為、2便の10時半発にした。
 頭痛薬やら胃腸薬やら飲んで、どうにか歩けるくらいにまでは回復したが……。

 運転手:「おはようございます。お荷物、お預かりします」
 佳子:「よろしくお願いします」

 往路で乗ったのと同じ中型観光バスが、正面入口の車寄せに横付けされていた。
 荷物室に荷物を預け、それからバスに乗り込む。
 復路の便は、往路よりも乗客は少なかった。
 恐らく、初便の需要の方が大きいのだろう。
 宗一郎は後ろの席に誰も乗っていないことを確認すると……。

 宗一郎:「もう少し休むから、着いたら起こしてくれ」

 と、座席のリクライニングを倒れるだけ倒し、窓のカーテンを閉めた。

 マリア:「うちの師匠みたいですね」
 佳子:「ホント、心配掛けちゃってゴメンねぇ……」
 マリア:「いえ……」

 バスはスタッフ一同の見送りを受けながらホテルを出発した。
 見送り用の横断幕に英文が記載されていたのは、マリアを意識してのことか。

 マリア:「着いたら、どうするの?」

 バスが県道に出てから、勇太の隣に座るマリアが言った。

 勇太:「あくまでも、父さんが通常状態だったらの話として……。仙石線に乗り換えて、塩釜に行くよ。そこから、遊覧船に乗ってみるんだって。ほら、僕達、ずっと山の中に住んでるから、こういう時に海を見ておこうってことでね」
 マリア:「なるほど。それはいいアイディアだ」
 勇太:「だいぶ前、威吹と一緒に乗った松島の遊覧船があったでしょ?」
 マリア:「そんなこともあったなぁ……。冥鉄バスで山奥に行った帰りに乗ったアレか」
 勇太:「そうそう!あれの親戚だと思えばいい」
 佳子:「そうか。勇太達は、もう遊覧船に乗ったのよね?」
 勇太:「その時乗ったのは、松島湾を一周して戻るヤツだったと思う。塩釜からは乗り降りしてないよ」
 佳子:「良かった。それじゃ、ルートが被ることは無いのね」
 勇太:「と、思うよ」

[同日11:15.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅東口→仙石線乗り場]

 バスは市中心部の混雑に巻き込まれたものの、無事故で仙台駅東口バスプールに到着した。

 運転手:「到着です。ありがとうございました」

 バスを降りて、預けた荷物を受け取る。

 勇太:「父さん、大丈夫?」
 宗一郎:「うーん……まあ、少し良くなった感はあるが……。おかしいな。こんなに酒が弱かったかなぁ……」
 佳子:「歳を取ったんでしょう。もう、若くはないんだから、ムリはダメよ」
 宗一郎:「面目ない……」

 往路はエレベーターを利用したが、復路ではエスカレーターを利用する。
 それでペデストリアンデッキの2階に上がり、駅舎には入らないで、また下の歩道に下りた。
 その時もエスカレーターを使う。

 歩道を北の方に歩くと、東西自由地下通路の入口がある。
 これは地下を走る仙石線乗り場との共用である。
 エレベーターがあったので、それに乗って地下へ向かった。

 勇太:「電車は20分おきか。川越線の川越から西みたい」

 JR線のうち、仙石線だけは地下を通っている。
 当然、SuicaやPasmoが使える。

 佳子:「ほら、ベンチに座って休んでて」
 宗一郎:「すまない……」

 宗一郎は電車が来るまでの間、ベンチに座った。

[同日11:29.天候:晴 JR仙台駅・仙石線ホーム→仙石線1131S列車最後尾車内]

〔ピンポーン♪ まもなく10番線に、列車が参ります。危ないですから、黄色い線の内側まで下がって、お待ちください〕

 接近放送が地下ホームに鳴り響き、また、風も吹いて来た。

 勇太:「そろそろ来るよ」

 マリアの金髪が風に靡く。
 トンネルの向こうから、強風と轟音を立てて4両編成の電車が入線してきた。
 隣のあおば通駅においては、先頭車寄りに地下鉄との連絡通路がある為、そこは乗客が多い。
 なので、そこから一番離れた最後尾の方が空いている。
 接近放送は簡易的なもので、行き先が案内されることはない。
 仙石東北ラインが開通したことにより、仙石線内の電車は全て各駅停車のみとなった。
 電車がホームに停車すると、首都圏においては、車内での運行情報チャイムとして鳴るものと酷似した音色のドアチャイムが鳴る。
 半自動ドア機能搭載であるが、コロナ対策による換気促進の為か、自動ドアとなっていた。
 205系3100番代と呼ばれる車両。
 元は山手線や埼京線を走行していた中古車を、仙石線用に改造したものである。
 鉄ヲタはドアの窓の形状を見るだけで、元山手線か埼京線かを当てることができる。
 内装はそんなに変わっておらず、緑色の座席のモケットなどは首都圏で走行していたものと同じである。
 そんな座席に腰かけた。

 勇太:「バケット形状じゃない座席に座るのも久しぶりだ」

 他のホームでは発車メロディだが、仙石線ホームだけは発車ベルである。
 これは、仙石線ホームだけ停車時間が短く、発車メロディを流せないのかもしれない。
 また、発車ベルの後で、何か自動放送が流れるわけでもなく、車掌が笛を吹いてドアを閉めるだけだ。
 仙石線の高城町駅から西は205系のみで運転されているが、それでもホームドアは無い。
 地方ローカル線では、設置費用が捻出できないのか。
 電車が走り出すと、コロナ対策で開けられた窓から黴臭い風が入って来る。

〔「本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。仙石線、各駅停車の高城町行きです。次は榴ヶ岡、榴ヶ岡です」〕

 自動放送は導入されていないので、車内放送は車掌による肉声。

 マリア:「こういう地下を走っている間は、とても海に向かう電車だとは思えないな」
 勇太:「まあね。だからこそ、着いた時のギャップが面白いんだろうね」

 仙石線の下り方向先頭車には、クロスシートを備えた車両がある。
 クロスシートとロングシートとを切り替えできるタイプなのだが、ボックスシートを備えた仙石東北ラインが開通したことにより、今ではロングシートに固定されてしまっている。
 トイレもその車両にある。
 しかし、勇太としては座席定員が少ない上に混雑している先頭車よりも、空いている最後尾の方が良かった。
 尚、シートモケットが緑色のせいか、マリアの契約悪魔、ベルフェゴールもしれっと離れた席に着席しているが、誰も気にしない。
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