報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道士2人旅」 2

2022-05-29 21:00:34 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日16:30.天候:晴 宮城県仙台市泉区紫山 宮城県図書館3F]

 

 閉館時間30分前、勇太のスマホが震える。
 一応、30分前に震えるようにタイマーをセットしたのだ。
 図書館内なので、アラームは鳴動させず、バイブだけ作動するように設定している。

 勇太:(もうこんな時間か。確かに、読書に集中すると時間が経つのが早いなァ……)

 勇太は読んでいた本を閉じて、それを本棚に戻す。
 マリアを呼びに行く前に、先にトイレに行っておこうと思った。
 因みにこの広い図書館で、どうやってマリアを探すのかというと……。

 勇太:(これで……)

 トイレを済ませた後、勇太はスマホのアプリを立ち上げた。
 魔道士の持つ水晶玉からは、微弱な電波が発せられていることを知った勇太は、それで居場所検索に使えないかと思った。
 試しにアプリを作ってみたら、これが大成功。
 水晶玉要らずとなってしまった。
 だが、この技術力もまた、勇太のマスター昇格に寄与したことは間違いない。

 勇太:「いたいた。マリア、そろそろ行くよ」

 勇太は後ろからマリアの肩をポンと叩いた。

 マリア:「おっ?!……あー、ビックリした」
 勇太:「ご、ゴメン」

 マリアが読んでいたのは、洋裁に関するものだった。
 人形作りの知識を深めていたのだろうか。

 マリア:「もうそんな時間か……」

 マリアも名残惜しそうだ。

 マリア:「ちょっと、トイレ行ってきていい?」
 勇太:「いいよ」

 トイレに行くのも忘れるほど、読書に集中していたというわけだ。
 それは勇太も同じであったが。

[同日17:00.天候:晴 同区内 宮城県図書館前バス停→宮城交通バス車内]

 

 1つ手前のバス停が始発ということもあり、バスは定刻通りにやってきた。
 休日だからか、1つ手前の大学前から乗っている乗客は数えるほどしかいなかった。
 勇太とマリアはバスに乗り込むと、2人席に腰かけた。

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスは閉館時間に合わせて乗車した乗客達を乗せ、出発した。

〔ピンポーン♪ 次は寺岡六丁目・泉アウトレット、寺岡六丁目・泉アウトレットでございます。仙台ロイヤルパークホテルへおいでの方は、こちらが御便利です。次は、寺岡六丁目・泉アウトレットでございます〕

 マリア:「勇太、このバスを降りた後、時間ある?」
 勇太:「うん。少しあるけど……」
 マリア:「そうか。実は、本を買いたい」
 勇太:「買いたい本があるの?」
 マリア:「そう。さっき図書館で色々読んでて、これは是非手元に置いておきたいものがあった。古い本ではないから、多分本屋でも売ってると思う」
 勇太:「そうなんだ。じゃあ、大きい本屋の方がいいかな」
 マリア:「是非ともよろしく」

 勇太はスマホで、仙台駅周辺の大型書店を検索した。

[同日17:45.天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 仙台駅前(仙台駅西口)→丸善仙台アエル店]

 バスは市街地周辺の道路混雑に巻き込まれたせいで、定刻より遅着してしまった。
 まあ、路線バスなら仕方ないところではある。
 バスを降りた2人は、近くの大型書店へ向かった。
 実は仙台駅周辺の大型書店は何軒かある。
 勇太がそれを検索し、マリアが水晶玉で占った。
 なるべく自分が欲しい本が揃っている本屋を絞り込んだ結果、1軒の本屋がヒットした。
 そこへ向かう。

 マリア:「あった!これだ!これが欲しかったんだ」

 マリアが手にしたのは、手芸に関する本だった。
 それも、人形に着せる服に特化したものだった。
 これは確か、マリアが図書館で最後に読んでいた本である。

 勇太:「大丈夫?お金足りる?」

 なかなかに厚い本だったので、値段もいい所するだろうと思った。

 マリア:「カードが使えるなら大丈夫」

 マリアは自分のアメックスのグリーンカードを取り出した。

 勇太:「それは大丈夫だよ」
 マリア:「ちょっと買ってくるね」
 勇太:「うん」
 マリア:「勇太はいいの?」
 勇太:「うん、僕はいいかな」

 マリアがレジに行っている間、勇太は夕食をどこで食べるか検索した。

 勇太:(そもそも、マリアが何を食べたいかにもよるか……)

 あいにくとこのアエルでは、飲食店はカフェしかない。

 マリア:「お待たせ。行こう」

 マリアは買った本を手に、意気揚々と戻って来た。

 勇太:「うん。夕食は何がいい?」
 マリア:「うーん……。最後に、また牛タン食べて帰る?」
 勇太:「仙台最後の夕食だからね、そうしようか」

 2人は仙台駅構内に入り、3階の牛タン通りに向かった。

[同日19:00.天候:雨 JR仙台駅・牛タン通り→東北新幹線ホーム]

 前回は牛タン定食を食べたので、趣向を変えて牛タンシチューや牛タンカレーを頼んでみた。

 勇太:「確かに、あれもなかなか食べれないよね」
 マリア:「いや、全く」

 因みにこういった牛タン店では、土産物の販売を行っている店舗もある。

 勇太:「僕達だけ食べるのは申し訳ないから、先生にも買って行ってあげようか」
 マリア:「いくら冷凍でも、いつ師匠が帰って来るか分からないからなぁ……」
 勇太:「いや、牛タンそのそものじゃないよ」
 マリア:「Huh?」

 勇太が選んだのは、レトルトの牛タンカレー、牛タンシチュー、そしてテールスープだった。
 レトルトパウチされたものなら、日持ちもする。

 勇太:「いや、ホント、これの賞味期限が切れる前に帰って来て頂きたいなぁ……」
 マリア:「師匠のことだから、ヒョッコリ帰って来そうな感じはするけどね」

 食事を終え、イリーナへの手土産も購入した後、2人は新幹線ホームに向かった。
コメント
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