報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「さぁさようこそ♪いらっしゃい♪昼の浅草♪大賑わい♪」

2021-03-09 19:56:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日10:30.天候:曇 東京都台東区駒形 都営地下鉄浅草駅→台東区花川戸 東武鉄道浅草駅]

〔2番線の電車は、普通、印旛日本医大行きです。あさくさ~、浅草~〕

 私達を乗せた都営地下鉄電車が浅草駅に到着する。
 コロナ禍でなければ、もっと観光客などで賑わう駅なのだろうが、今は普通の週末といった感じ。
 都内だから賑わっているというだけであって、浅草だから賑わっているという感じはしない。
 ほら、何となく分かるだろう?
 関西でも、例えば京都市は大都市だから賑わっているが、その中で特に観光地最寄りの駅はそれだからこその賑わいというのがある。
 しかし、そういうのが無い。
 ただ単に人口が多いからその分、駅の人も多いだけといった感じ。
 今の浅草駅はそんな感じだった。
 そう思うのは観光客が少なく、地元民の方が多いからだろう。
 そういう私達だって、都内脱出組だ。
 しかも、これから観光地に行こうってわけではない。
 カーブの途中にあるホームに降り立つと、東武浅草駅に向かった。
 ただ、都営地下鉄の浅草駅は東武浅草駅からは若干離れている。
 東京メトロ銀座線を挟んで北側に東武浅草駅が存在し、南側に都営地下鉄浅草駅があるといった感じ。
 TX浅草駅は【お察しください】。

 愛原:「雨が降って無くて良かったな。ここ最近、天気が悪い日とかあったから」
 高橋:「そうっスね。傘差すのが面倒っスね」

 そんなことを話しながら、浅草松屋の中にある東武浅草駅に向かう。
 元々は三越や高島屋辺りを誘致したかったらしいが実現せず、松屋が入居することになり、今に至る(もしも三越の入居が実現したら、東京メトロ浅草線の三越前駅、日本橋駅、そして浅草駅を制覇したことになっただろうに……)。

 愛原:「さあ、着いた。松屋」
 高橋:「先生、デパートに買い物に来たんじゃないっスよ」
 愛原:「分かってる。あくまでも東武浅草駅は松屋の3階に入居しているという体なんだ」

 リニューアル前までは普通のビルの外観といった感じだったが、リニューアル後は昭和初期の開業当時の雰囲気を出している。
 アール・デコ建築となり、時計台も復活している。
 私が記憶している限り、都内で時計台があるのはこの浅草松屋と銀座の和光ビル、それと新宿NSビルくらいである(但し、こちらはビル内の吹き抜けの中に存在する)。
 そんなビルの1階は東武浅草駅の入口でもある。
 改札階へ向かうエスカレーターと階段の前に、善場主任と栗原蓮華さんがいた。

 善場:「おはようございます」
 愛原:「おはようございます」

 善場主任は相変わらずのスーツ姿の上にコートを羽織っているが、栗原さんは制服姿だった。
 キャリーバッグの中に私服は持って来ているが、これが道着よりもむしろ戦闘服なのだそうだ。
 まあ、剣道着は竹刀を使うだろうが、BOW相手には真剣を使うからな。
 ぶっちゃけ、剣道着よりも動き易いだろう。

 善場:「自動改札機を通るので、キップは1人ずつ持ちましょう」
 愛原:「ありがとうございます」

 やはりというべきか、私と高橋とリサで一塊になるように指定されていた。

 善場:「それでは参りましょう」

 善場主任の先導で、私達はエスカレーターを昇った。
 そしてまずは自動改札口を通って、コンコースに入った。
 特急に乗るには、そこから更に特急ホームに入る為、有人改札口を通らなくてはならない。
 しかしその前に、その特急改札口の手前左方向に行くと売店がある。
 かつては快速や区間快速、臨時列車が発車した5番線に向かう通路上だ。
 しかし今は快速や区間快速は廃止され、臨時列車も、あの“スノーパル”や“尾瀬夜行”でさえ5番線を使用しない為、今は富士宮駅の1番線の如く殆ど廃止ホームとなってしまった。

 愛原:「すいません。リサが駅弁食べたがって……」
 善場:「いいですよ。リサは食べ盛りですからね」
 栗原:「え?」

 何の疑いも無く駅弁を手に取った栗原さん。

 善場:「あ、ごめんなさい。育ち盛りがもう1人いましたね。失礼しました」

 もっとも、リサが手にしたのは『すき焼重』であり、栗原さんが手に取ったのは『松花堂弁当』だったが。
 私と高橋はのり弁を手にした。
 善場主任はロースカツサンド。

 愛原:「サンドイッチだけでいいんですか?」
 善場:「ええ。私は朝食が遅かったので」
 愛原:「そうでしたか」
 善場:「あと、他にも飲み物とかを購入しておいた方がいいですよ。今、特急列車の車内販売は全面休止中ですから」
 愛原:「それもそうですね」

 ジュースくらいならホームの自販機でも購入できる。
 何しろ、ここから会津田島まで片道3時間以上の旅だ。
 しかも、霧生市はここから更に車で1時間という距離にある。
 ぶっちゃけどこに位置する町だ。

 係員:「ありがとうございます」

 特急改札口にいる女性係員に特急券を見せ、これで晴れて特急列車の乗客となれる。
 既に4番線ホームには、3両編成の電車を2台繋いだ6両編成が停車していた。
 500系リバティと呼ばれる車両である。
 先頭車の1号車が指定されていたが、何しろこの駅は有効長が1番線を除いて6両編成しか無く、その先端部分は大きく湾曲している。
 東武浅草駅の名物の1つである。
 その為、湾曲している部分は電車の乗降ドアとホームとの間の隙間が半端無く、停車中は渡り板が設置されるほどである。
 発車直前には係員達によって、渡り板が外される。
 前方車両の駆け込み乗車は、もう1つの意味で命懸けなので非推奨である。
 失敗したら線路に転落すること請け合い。
 1号車に向かう最中、3番線ホームに15という数字の看板があるが、これは制限速度の標識。
 浅草駅を出発した電車は、90度の直角カーブ(本当の直角ではもちろん無いのだが、そう形容しても良いくらい)を曲がることになるので、厳しい速度制限が課せられているのである。

 愛原:「えーと……ここだな」

 1号車に乗り込み、指定されている座席を見つける。
 新型車両ということもあって清潔であり明るく、シートピッチも新幹線の普通車並みに広いのだが、従来の車両にはあった窓下のテーブルが無くなっている。
 代わりに背面テーブルが設置されているし、ひじ掛け収納タイプのテーブルも存在する。
 向かい合わせにした時に必要な窓下のテーブルが無くなったのは痛いかな。
 なので向かい合わせにした私達はひじ掛け下のテーブルと、窓の桟の部分に飲み物や弁当を置き、善場主任と栗原さんは背面テーブルを使用することになる。

 愛原:「もう食べるのか、リサ?」
 リサ:「うん!」

 リサはウーロン茶のペットボトルを開け、駅弁の蓋を開けた。
 周りを見ると、栗原さんも駅弁に箸を付けている。
 ま、10代は食欲旺盛な方がいい。
 元気に育ってほしい。

 高橋:「先生はビール買わなかったんスね」
 愛原:「まあ、遊びに行くわけじゃないからな」

 私はそう言って、緑茶のペットボトルの蓋を開け、駅弁の蓋を開けた。
 そして、11時ちょうど発の特急“リバティ会津”117号は、後部に東武日光行きの“リバティけごん”17号を併結して東武浅草駅を定刻通りに発車した。
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“私立探偵 愛原学” 「三度、霧生市へ」

2021-03-09 15:19:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日10:11.天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから霧生市に向かうことになっている。
 『1番』と決着を付ける為である。
 廃墟の町となっている霧生市なら、思う存分戦えるだろうということだ。
 ……のは表向きで、BSAAも出動させて何としてでも『1番』を倒そうという思惑が善場主任達にはあるようだ。
 都内では昨夜、ラブホテルで男性の変死体が見つかったらしい。
 男性が援助交際の常習者で、彼の持っていたスマホには『1番』と思しき少女が写っていたからだ。
 それは聖クラリス女学院の制服を着ていたから、尚更間違いないようである。

〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが短い8両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。……〕

 土曜日で平日よりは空いていたが、チラホラ学生の姿は見受けられた。
 在校生達は、まだ学校へ行かなくてはならないのだろう。
 リサは私服姿であった。
 電車がトンネルの向こうからやってきて、リサの黒い髪を靡かせる。

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。京王線内、区間急行となります。きくかわ~、菊川~〕

 私達は都営の車両に乗り込んだ。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 菊川駅にもホームドアができて久しい。
 電車のドアだけでなく、ホームドアも閉まってから発車するので、車両のドアが閉まってから走り出すまでに少しブランクがある。
 最後尾に乗っているので、車掌が発車合図のブザーを押す音が聞こえてくる。
 関西だとチンチンと路面電車みたいなベルが鳴ることが多いらしいが、関東だと専らブザーだ。
 それからエアーの抜ける音がして、電車が走り出した。

〔「この電車は京王線直通、各駅停車、名無し……失礼しました。橋本行きです。京王線内は区間急行となります。次は森下、森下。大江戸線はお乗り換えです。お出口は、右側です」〕

 リサはドアの前に立つと、ドアの窓ガラスに自分の顔を近づけた。
 時折力を解放しては、瞳の色を赤く光らせる。
 『1番』と戦う為の準備体操だろうか。
 今度こそリサ・トレヴァーの因縁は終わりにしたいものだ。
 本種は人間に危害を加えることの無い『0番』と『2番』だけでいい。
 番号が『13番』以降の亜種(『1番』『2番』以外は失敗作とはいえ、『12番』までが本種とされる)もいるようだが、それはリサの敵ではないことは分かった。
 尚、『12番』は今の『0番』である善場主任のことなので、実質的に日本版リサ・トレヴァーの本種は『11番』までということになる。

 高橋:「先生。善場の姉ちゃん達とは、浅草駅で?」
 愛原:「そうだ。善場主任が栗原さんを連れて来てくれるみたいだな」
 高橋:「敵討ちに参加させるわけですか」
 愛原:「そうだろうな。『1番』がどれだけ強いのか知らんが、最後の首は栗原さんに取らせてあげよう。リサもそれでいいか?」
 リサ:「私はどっちでもいいよ。でも、鬼狩りの先輩が殺られるようなことがあったら、私が殺るけど」

 栗原さんは東京中央学園上野高校の生徒。
 そしてそれは、来月からリサが通う所でもあるから、栗原さんはリサの先輩ということになる。
 斉藤絵恋さんも同じか。

[同日10:16~10:25.天候:不明 東京都中央区日本橋横山町 都営地下鉄馬喰横山駅→中央区東日本橋 都営地下鉄東日本橋駅]

〔「まもなく馬喰横山、馬喰横山。お出口、変わりまして左側です。JR総武快速線ご利用のお客様は前方の乗り換え階段を、都営浅草線ご利用のお客様は中ほどまたは後ろの階段・エスカレーターをご利用ください。尚、神保町、市ヶ谷、新宿より笹塚までお急ぎのお客様、当駅で後から参ります急行電車にお乗り換えできます。急行、笹塚行きは降りたホームから18分の発車です」〕

 乗り換え駅に接近する。
 駅名こそ違うものの、浅草方面に行く都営浅草線の東日本橋駅への乗り換え駅である。
 双方、乗り換え改札口は通らなくてはならないものの、地上に出ず乗り換えることができる。

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。京王線内、区間急行となります。ばくろよこやま~、馬喰横山~。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです〕

 私達は電車を降りた。
 乗り換え路線が2つあるせいか、ここでの乗降客は比較的多い。
 急行電車が停車するのも頷ける。
 但し、待避線があるわけではないので、ここでは各駅停車は慌ただしく発車する。
 そして、次の岩本町駅にある待避線に入るというわけだ。
 岩本町駅も周辺にはJRの駅や東京メトロの駅もあるにはあるのだが、地下道などで直結していない上、他の都営地下鉄線は近くに無い為か、急行停車駅には指定されなかった。
 エスカレーターを昇って、都営浅草線乗り場に向かう。
 ここでは浅草線の方が先に開通した為、そちらがより浅い部分に線路が通っている。

 

 乗り換え改札口は画像の通り右側だが、実はSuicaやPasmoで乗るならどちらの改札口でもいいという……。
 到着した浅草線の東日本橋駅も、2面2線の対向式ホームだった。

〔まもなく2番線に、普通、印旛日本医大行きが到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください〕

 都営浅草線には様々な鉄道会社の車両が来るからか、ホームドアが設置されていない。
 やってきた電車は、フロント部分にイチョウのマークが付いた都営地下鉄の車両だった。
 新型車両が入ったということだが、来たのは旧型の方。

〔2番線の電車は、普通、印旛日本医大行きです。ひがしにほんばし~、東日本橋~。都営新宿線、JR総武快速線はお乗り換えです〕

 電車内に入ると、先ほどの都営新宿線よりもキャリーバッグを持つ乗客が多いのは、羽田空港から来た電車だからだろうか。
 私達も他人のことは言えないが、緊急事態宣言(笑)って感じだな。
 都営地下鉄では標準的な短い発車メロディがホームに響いた。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 ピンポーンピンポーンと都営大江戸線の車両みたいに、チャイムが2回鳴ってドアが閉まる。
 ホームドアが無い分、発車までのブランクが小さいように思えるが、こちらもツーマン運転なので、車掌からの発車合図のブザーが鳴るまでのブランクはある。

〔次は浅草橋、浅草橋。お出口は、右側です。JR総武線各駅停車は、中ほどの階段をご利用ください〕
〔The next station is Asakusabashi.A16.The doors are right side will open.Please change here for the JR Sobu line,local trains.〕

 愛原:「だいぶ前は地下鉄に乗ってて『1番』に襲われたわけだけども、今回は大丈夫そうだな?」
 リサ:「そうだね。でも、まだ油断はできないよ」
 愛原:「まあ、そうだな。霧生市と見せかけて、実はここでなんてことも有り得る」
 リサ:「うん。それと、向こうが主張してこない限りは私もヤツの居場所を悟ることができない」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「それは逆に、私が今の姿のままだと、向こうも分からないということでもあるけど」

 第0形態は完璧に人間に化けている状態だ。
 よほど詳しい者や本人がボロを出さない限りは、正体がバレることはない。

 リサ:「お昼挟んで向かうんでしょ?駅弁食べたいな」
 愛原:「ああ、いいよ。でも、時間調整でティータイムくらいは現地でするらしいぞ?電車がダイヤ通りに着けばだけど」
 リサ:「それはそれで。甘い物は別腹」
 愛原:「はは、そうか。まあ、人を食らうよりは遥かにマシだ」
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