報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの卒業式の後」

2021-03-22 21:00:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月15日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 リサの卒業式は多少のハプニングはあったものの、何とか無事に終わった。

 愛原:「高橋、今日はリサの卒業祝いだ。一番デッカいステーキ焼いてやれよ?」
 高橋:「分かってますよ。ちょうどライフで、いい肉買えたんで」
 愛原:「当のリサはどうした?」
 高橋:「部屋ん中にいますよ。まだ、制服着てます」
 愛原:「卒業式は今日だったが、正式には今月一杯まで中学生なんだがな」
 高橋:「そうなんスか?」
 愛原:「そうだよ。だから、公共交通の運賃。子供運賃が大人運賃に切り替わるのは、3月31日を過ぎてからだ。小学6年生は例え今日が卒業式であったとしても、今月一杯は子供運賃でOKなんだ」
 高橋:「それは知らなかったっス」
 愛原:「高橋、小学6年生と中学1年生の間は何してた?」
 高橋:「多分、鑑別所に出入りしてたような気がします」
 愛原:「……あ、そう。筋金入りだねぇ……」
 高橋:「あざっス」
 愛原:「いや、褒めてねーよ」
 高橋:「中学生の殆どはネンショーだったもんで」

 少年院のこと。

 高橋:「あ、でも、ちゃんとケーキは3等分できましたからね?」
 愛原:「お前が10代の頃から、そういう心理テストはあったのか」
 高橋:「車が好きだったんで、『ベンツマークがそれじゃん!』ってすぐに気づきましたから」
 愛原:「ベンツマークを覚えていて、それをパッと思い出せたんだから、特に頭や心に異常は無かったということだな」
 高橋:「あざっス!」

 まあ、今の高橋を見ていれば、頭や心を病んで事件を起こしたというわけではないということはすぐに分かる。
 問題なのは……。

 愛原:「パール氏は違うだろうなぁ……」
 高橋:「違いますね。因みに、女子少年院でも同じ問題は出されるらしいんですよ」
 愛原:「ほお、そうなのか。で、パール氏は何て答えたって?」
 高橋:「『1人殺せば簡単に2等分、2人殺せばそもそも分割する必要無いですよね?』だそうです……」
 愛原:「……怖いねぇ」
 高橋:「ええ。さすがに教官から、『真面目に答えろ!薄笑いするな!』って怒られたらしいですけど……」
 愛原:「某有名鬼退治マンガに登場してたら、パール氏は鬼側かもな」
 高橋:「……ですね」

 それでも証拠不十分で連続殺人犯としては立件できず、しかも1人の殺人の時も情状酌量を認められて減刑されたらしいが……。

 リサ:「何を話しているの?」

 その時、リサが部屋から出て来た。
 まだ、中学校の制服を着ている。
 もうこれからは、この制服を着て学校に行くことはない。
 が、高校に関してもブレザーがシングルからダブルになるだけで、特に全体的なイメージが変わるわけではないのだが。
 もう1つ、中学校の制服と違う所がある。
 それは中学校では名札があった。
 但し、校外で犯罪に巻き込まれないよう、着用はあくまで校内に限るという条件付きだが。
 高校ではそれが無くなり、代わりに階級章が付く。
 具体的にはブレザーの左側の二の腕の外側に、1年生なら星が1つ、2年生なら星が2つ、3年生なら星が3つの小さなワッペンを着ける。
 あとは左胸ポケットの上にも同じ物を着ける。
 こうして、学年がすぐに分かるようにしているらしい。
 ワッペンはマジックテープ式である。

 愛原:「ああ、いや、ちょっと少年院の話を……」
 リサ:「? お腹空いた」
 愛原:「もうちょっとでできるみたいだ。リサ、皿を並べるの、手伝ってくれ」
 リサ:「分かった。それとサイトーが、卒業旅行どこがいいかだって」
 愛原:「ああ、そうだな。斉藤社長と話してみたんだ。この前、仕事以外での泊まり旅行と行ったら八丈島に行っただろ?」
 リサ:「そうだね」
 愛原:「つまり、海だ。コロナ禍のせいで海水浴はできなかったが、でも海に行ったということにはなる」
 リサ:「まあね」
 愛原:「だから今度は山に行こうと思う。どうかな?」
 リサ:「いいと思う。山と言えば温泉だね。先生の趣味?」
 愛原:「いや、まあ、それはどうでもいいんだ。お前と斉藤さんの卒業旅行なんだからな」
 リサ:「それで、場所はどこ?」
 愛原:「静岡だ。この前も行ったけど、バイオハザードに巻き込まれて大変なことになっただろ?それをもう一度やり直そうって話だ」
 リサ:「あそこの焼きそばは美味しかった」
 愛原:「富士宮焼きそばか。そうだろう」
 リサ:「あとは富士ミルクランドのジェラートとか、まかいの牧場の牛と羊がすごく美味しそう……」
 愛原:「食う以外の思い出無いんかい」
 リサ:「確かにもう一度食べてみたい物は多い。全部回り切れるかな……」
 愛原:「取りあえず、現地までは電車で行くが、そこから先は高橋がレンタカーを運転してくれるだろう。なあ?高橋」
 高橋:「あ、はい。お任せください」

 こうして、夕食ができた。
 因みに私のスマホには、栗原蓮華さんからのメールがあった。
 そこには、『3月20日はお彼岸で静岡まで行くんです。良かったら、途中まで行きませんか?』と。
 JKからの誘いを断るのは、罰が当たるな、うん。
 これが、私が行き先を決めた、まあ決め手である。

 愛原:「それじゃ、早速食べよう」
 リサ:「うわぁ、大きい!」
 高橋:「先生の大慈大悲で、300gだ。レアが好みだったな」
 リサ:「血が滴るくらいが美味しいの」

 リサは思わず第0形態ながら、口にだけは牙を生やして言った。

 愛原:「野菜や果物もしっかり食えよ」
 高橋:「行き先は静岡ですか」
 愛原:「緊急事態宣言が21日まで延長になったことだし、そんな遠くへは行けないだろうと思ってさ。それに、『1番』を倒して危険なリサ・トレヴァーがいなくなった今、もうバイオハザードに巻き込まれる心配は無いだろうと思ってさ」
 高橋:「だといいっスね。泊まりはまたあの……温泉施設っスか?」
 愛原:「いや、斉藤社長の紹介で、ちゃんとした旅館だよ。和室で大浴場付きの。何でも駅近にありながら、富士山がよく見えるんだって」
 高橋:「ガチの観光って感じですね」
 愛原:「そうだろうそうだろう」
 高橋:「でもだったら、もうここから車で行った方が良くないっスか?俺、首都高や中央高速だけじゃなく、東名なんかも随分と走り込みましたんで……」
 愛原:「俺は新幹線と電車に乗りたいんだ……!」( ;∀;)
 リサ:「お兄ちゃん、空気読んで!」(# ゚Д゚)
 高橋:「さ、サーセンっした!」Σ(゚Д゚)

 私の泣きにリサが怒りの第1形態(鬼娘)への変化。
 額の上に1本角が生え、両耳が長く尖り、口には牙が覗き、瞳の色は赤くなる。
 両手の爪も長く鋭く伸びた。
 そして、高橋がびっくりして謝罪したのだった。
コメント (1)
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