報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「雪の降る街を」 2

2021-03-14 20:10:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日15:00.天候:曇 福島県南会津郡南会津町 ダイワリンクホテル会津田島]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 この町は福島県でも豪雪地帯に相当する南会津郡に位置する。
 雪が少なく、温暖な浜通りと比べても、同じ福島県なのかと疑ってしまうほどの気候の違いだ。
 除雪はされているものの、踏み締めなければならない雪道を私達は歩いた。
 寒いからか、栗原さんは制服のスカートなので、その下にストッキングを穿いていた(駅のトイレで穿いてきた)。
 雪自体は今は降っていないものの、空はどんよりと曇り、いつまた雪が降ってきてもおかしくない。
 道行く車の中には、スモールランプやフォグランプを点灯して走行するものもあった。
 時折風が吹くと、積もった雪が舞い上がって視界が妨げられるからである。
 途中、踏切を渡る際に警報機が鳴って遮断機が下りた。
 通過していった列車は、上りの特急列車だった。
 私達が乗って来た下り列車の折り返しと思われる。
 歩道を歩いて、ようやくホテルに到着する。
 ホテルの中は別世界のように暖房が効いて温かった。

 スタッフ:「いらっしゃいませ」
 善場:「それではちょっと行ってきますので、待っててください」
 愛原:「お願いします」

 善場主任はフロントに向かって行った。
 そこで女性スタッフと、会話を交わしている。
 ホテルは2階建てで、ロビーの中に階段がある。
 エレベーターは無い。
 しばらくして、主任が戻って来る。
 手にはカードキーが3枚あった。

 善場:「部屋割りはツインが2部屋、シングルが1部屋です」
 栗原:「私がシングルに泊まります」

 栗原さんが先に申し出た。

 愛原:「栗原さん、いいのかい?」
 栗原:「ええ。勤行しなきゃいけないので」
 愛原:「ゴンギョウ……?」
 善場:「18時になったら、またこのロビーに集まりましょう。それでいいですか?」
 愛原:「分かりました」

 私達はカードキーを手に2階への階段を上がった。

 愛原:「2回目だな」

 部屋に入り、ドア横のカードキーボックスにカードキーを挿し込むと部屋の照明が点いた。
 ビジネスホテルにはよくあるタイプである。
 これがキータイプであっても、タグを挿し込んで電源の入り切りをするというシステムに変わりは無い。
 ビジネスホテルの中には照明が電球タイプや間接照明しか無い薄暗いタイプの部屋があったりするが、こちらはちゃんと丸い天井灯が煌々と点灯するタイプだった。
 明るくてアットホームな雰囲気である。

 高橋:「先生、どっちのベッドで寝ますか?」

 ツインルームなので、当然室内にはベッドが2つある。
 通常のシングルベッドより広く、セミダブルくらいの広さはありそうだ。

 愛原:「そうだな……。お前、タバコ吸いに行くだろ?だったらドアに近い方がいいだろ。俺が窓側で寝るから、お前はドア側な」
 高橋:「分かりました」

 寝る場所が決まると、私は早速そのベッドに腰かけた。

 高橋:「じゃあ早速、ちょっと一服してきます」
 愛原:「ああ。行ってこい」

 このホテルは全室禁煙の代わりに、1階に喫煙室がある。
 高橋はタバコを手に、そこへに向かった。
 レースのカーテンを開けると、ホテルの出入口に面した通りが見える。
 この町はあまり高い建物は建っておらず、しかもこのホテルの周りなんか特にそういうこともあって、意外と遠くまで見通せた。
 この前泊まった時は、国道バイパスを高橋のような兄ちゃん達が乗っていたと思われる、ちょっとヤンチャな車が爆音を立てて通過したものだが、さすがに冬は休業だろう。
 だが、私がこのベッドを選択したことは、後に凶となるのであった。

[同日18:00.天候:雪 同町内 同ホテル→麺や 焚く蔵]

 時間になって私達が1階のロビーに行くと、既に善場主任達は待っていた。

 愛原:「お待たせしました」
 善場:「いえ。時間通りですね。行きましょう」

 栗原さんは制服から私服に着替えている。
 上は相変わらずコートを着ているが、下はスラックスを穿いているのが分かった。
 何か、制服よりも私服の方が動き易いような気がするのだが……。
 それでも、麻袋に包んだ刀を持ってくることは忘れていない。
 小雪の舞う中ホテルを出て、目当てのラーメン店に向かう。

 善場:「天気予報によると、また夜は雪のようなので、これ以上積もらないかどうか心配です」
 高橋:「積もるに決まってんだろ。豪雪地帯ナメんじゃねぇ」

 さすが高橋。
 高橋もまた新潟県下越地方という豪雪地帯出身なので、それならではの言葉である。

 愛原:「善場主任、BSAAを呼んでいるのは、もしかして車で行けない場合の保険ですか?」
 善場:「さすが愛原所長。お見通しですね。いざとなったら、BSAAのヘリコプターで行こうかと」
 愛原:「いいアイディアですね。うん、いいアイディアだ」
 高橋:「だったら最初からヘリで行った方が良くね?」
 愛原:「高橋。よく考えろ、“ベタなバイオハザードシリーズの法則”を。カプコン製のヘリって、大抵どうなるんだっけ?」
 高橋:「……あっ!確かにそうですね!サーセンっした」
 リサ:「ネメシスのヤツ、『カプコン製のヘリは墜とし甲斐がある』って言ってた」
 愛原:「つーかむしろネメシスの場合、それが仕事みたいなもんだからな」

 私達はそんなことを話しながら目当てのラーメン店に入った。
 夕食時ということもあって席が空くまで少し待たされたが、回転の良いラーメン店ということもあって、思ったより早くテーブル席に着くことができた。
 そして何より感動的だったのは、緊急事態宣言の対象外地域である為、20時で閉店する時短営業が行われていないということだった。

 愛原:「何か、こういう所に来ると、ビール飲みたくなるなぁ……」
 善場:「明日に影響が出ない範囲でなら、自己責任でお願いします」
 愛原:「じゃ、じゃあ一杯だけ……」
 高橋:「お供します!」
 リサ:「お供します」
 愛原:「リサはあと5年待ちなさい!」
 リサ:「えーっ!」
 栗原:「鬼は酒好きって本当だねぇ……」
 愛原:「ソフトドリンクならいいよ。栗原さんも」
 栗原:「ありがとうございます。私はウーロン茶で」
 リサ:「オレンジジュース」

 結局、善場主任もハイボール頼んでたから、一杯くらいは飲みたかったのだろう。
 私はいつものように醤油チャーシュー麺を注文し、そこに味玉をトッピングしたが、やはりリサが大食いであった。
 どうしても肉を食べたいリサは、私と同じ物(但し、味玉のトッピングは無し)にプラス唐揚げ5個を注文したのだから。
 その割にはそんなに体は大きくないのに、食べたものはどこに行くのだろうかと思う。
 それはやはり形態変化の際と、変化した後の怪力を使う時に消費されるのだそうだ。
 だからそれを維持する為、BOWは高い栄養価を得る手段として食人をするのだと善場主任は言った。
 それをあえてリサは人間と同じ食事をする為に、ロリ体型体が小さいのだという。
 それでも人間離れした変化や怪力を放ってくれるのだから、体型の小ささは大してハンデにはならないと思う。
 そういえば明らかに食人をしていた『6番』の吉田美亜はムッチリとした体つきだったが、そういうことだったのか。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「雪の降る街を」

2021-03-14 15:52:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日14:08.天候:曇 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道会津田島駅]

〔♪♪♪♪。「長らくの御乗車お疲れさまでした。まもなく終点、会津田島、会津田島に到着致します。2番線に入ります。お出口は、右側です。お降りの際、お忘れ物の無いよう、よくお確かめください。会津田島からのお乗り換えを御案内致します。会津線下り、湯野上温泉、芦ノ牧温泉、西若松方面、快速“リレー”117号、会津若松行きは3番線から14時19分の発車です。……」〕

 列車が北上する度に、車窓には雪景色が広がった。
 もう3月だというのに、凄い雪だ。
 でも、当たり前だろう。
 今はコロナ禍で運休しているが、東武線唯一の夜行列車にしてスキーツアー列車の“スノーパル”は3月下旬まで運転されるのだから。
 夜行列車そのものは運休しても、代わりに早朝出発の特急“リバティ会津”を売り出しているらしい。
 早朝に出発しても、スキー場に着くのは昼頃になるだろう。
 そこで夕方くらいまで滑り、再びバスと列車で帰るという行程のようだ。
 コロナ禍でJRでは“サンライズエクスプレス”以外の夜行列車が全て廃止されてしまったが、もしかして、この“スノーパル”も?なんて思ってしまう。

 善場:「そろそろ着きますので、降りる準備をしてください」
 愛原:「はい」

 車窓は時々、吹雪で外が見えなくなることがあるが、恐らくそれは列車が走行中に舞い上げた雪煙だろう。
 JR北海道は雪に悩まされ、その除雪費用は会社の経営を圧迫するほどらしいが、首都圏なら間違いなく運休するであろう大雪の中を、雪煙を濛々と上げ、ドラゴンの咆哮のような警笛を鳴らして突き進んでいく様は旅情を掻き立てられるのだそうだ(作者の経験)。
 席を立って荷棚から荷物を下ろしていると、列車は最後の踏切を通過した。
 場内信号の先にある踏切なので、ここを過ぎると、もう駅構内である。

〔「ご乗車ありがとうございました。会津田島、会津田島、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。会津田島から先、会津若松方面にお乗り換えのお客様は、3番線に停車中の快速“リレー”117号をご利用ください。……」〕

 3両編成の先頭車から降りた私達は、首都圏とは明らかに違う寒気の歓迎を受けた。
 ここはもう東北地方なのだということを思い知らされる。
 跨線橋や構内踏切を挟んで、反対側にあるホームでは、2両編成の気動車がディーゼルエンジンのアイドリング音を立てて停車していた。
 あれがこの特急列車に接続するリレー快速であろう。
 電化区間はこの駅まで。
 ここから先は、非電化区間となる。
 地方の三セクで、路線が1つしか無いのに、電化区間と非電化区間両方持っている鉄道会社はなかなか珍しいのではないかと思う。
 因みに会津鉄道の電化区間の乗務を受け持つのは、電車の運転免許を持つ野岩鉄道の社員で、会津鉄道から南の区間に乗り入れる気動車は、その運転免許を持つ会津鉄道の社員が担当するのだそうだ。
 こうすることで、人件費を圧縮しているのだろう。

 駅員:「ありがとうございました」

 乗客の半分くらいは3番線に向かって行ったが、私達を含むもう半分は改札口に向かう。
 1番線と2番線からなら、直に改札口に出入りできる。
 改札口は自動化されていないので、ブースの中に駅員が立っていて、キップは駅員に渡すシステムである。
 ブースには、そこに立つ駅員を囲むようにアクリル製の囲いがしてあるが、コロナ対策ではなく、寒さ対策であろう。
 寒さ対策に設置したパーテーションが、結果的にコロナ対策にも繋がったというわけだ。

 愛原:「主任、今日の宿泊先は……?」
 善場:「初めてこの町に来た時に泊まったホテルです。あの……さっきの踏切を渡った所にある……」
 愛原:「ああ。あの新しいホテルですか。そりゃあ良かった。ということは、夕食はあのラーメン屋かな?」
 善場:「私は構いませんけど、皆さんは?」
 高橋:「俺は先生の御意向に従います」
 リサ:「激しく同意、略して禿同」
 栗原:「やっぱり寒い時期にはラーメンですかね」
 善場:「分かりました。では、そうしましょう。途中にコンビニもありますしね。でも、その前に……」

 善場主任は駅舎の外には出ず、駅舎2階のレストランに向かった。

 善場:「ホテルのチェック・インは15時からですので、休憩も兼ねて、ここで時間潰しさせて頂きます」
 愛原:「あ、なるほど。そうだったのか」
 善場:「ついでに、今後の予定について話させて頂こうかと」
 愛原:「分かりました」

 レストランに入ると、お昼時を過ぎているからか、店内は空いていた。
 テーブル席に座り、私達がコーヒーやら紅茶やらをチョイスする中、リサは……。

 リサ:「ハンバーグ定食」
 愛原:「をい」
 リサ:「じゃあ、カツカレー」
 愛原:「コラ」
 リサ:「じゃあ、ソースカツ丼」
 愛原:「食い過ぎだっつの」
 栗原:「本気で言ってるの?」
 リサ:「うん。ガチ」
 栗原:「……その食欲、人に向けなければいいけどね」
 善場:「愛原所長がいる限り、それは大丈夫でしょう。リサ、食事は夕食まで我慢しなさい。スイーツは頼んでいいから」
 リサ:「……はぁーい」

 リサはケーキセットを注文した。
 因みにケーキはモンブランである。
 そういえば昔、同じ読みのAV女優がいてだなぁ……。

 善場:「それでは今後の予定について、お話しさせて頂きます」

 注文した物が来てから、善場主任が口を開いた。
 因みにケーキを頼んだのは、リサだけではなく、栗原さんもだった。
 鬼斬りと鬼の形をしたBOWの間柄とはいえ、実は気が合うんじゃないのかと思う。
 ま、栗原さんが頼んだのはレーズンケーキだったが。

 善場:「今日のところは、これからホテルにチェックインして、体の疲れを癒やしてください。夕食は愛原所長の御意向と皆様の同意により、この前行ったラーメン店にします。翌日は朝7時半に出発します」
 愛原:「おおっ、早いですな」
 善場:「なるべく午前中には霧生市に入りたいと思っていますので。ホテルの朝食時間は朝6時半からということですので、朝食を食べてから出発ということになるかと思います」
 愛原:「分かりました。やはり霧生市には車で?」
 善場:「はい。明日、私の部下が迎えに来ますので」
 愛原:「なるほど。BSAAにも連絡済みですね?」
 善場:「もちろんです。しかし、BSAAが来るのは最低限の人数です」
 愛原:「えっ?」
 善場:「大々的に出動すると、『1番』にまた逃亡される恐れがあります」
 リサ:「されると思うね。『1番』、卑怯だし、臆病だからすぐに逃げると思う」
 善場:「そういうことです。今回は、栗原さんに花を持たせたいと思っているのです。兄弟を食い殺され、御自身は左足を食い千切られた過去を持ちますから」
 栗原:「必ず、あの首を刎ねてやる」
 リサ:「私も手伝う。……手伝います」
 栗原:「うん」
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