報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「旧校舎の2階で」

2021-03-06 19:52:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月2日09:30.天候:晴 東京中央学園上野高校 旧校舎]

 旧校舎1階の壁の向こうは閉鎖された女子トイレだった。
 一体あのトイレで何があったのかは分からない。
 少なくとも地下の階段があったという話と、教室があったという話からして、あのトイレも第2次世界大戦中または戦後に何か問題が発生し、埋められたものと思われる。
 そのトイレには『3階へ行け』というメッセージが書き殴られていた。
 しかしこの旧校舎は2階建てだ。
 3階なんてあるわけが無いのだが、実は屋根裏部屋的な部屋が存在し、何かの仕掛けでそこへ行けるようになっているというのが善場主任の見解だった。
 2階へ上がると、2階は1階より荒れている。
 というか、もともと2階はリニューアルの対象にはなっていない為、元々荒れていたのか、化け物によって荒らされたのかが分からないのだ。
 せいぜいここで行われた工事は耐震補強とアスベスト除去だけであるという。
 ここも一見して、化け物の気配は無かった。
 階段を上がって、最初の教室に入る。
 どういうわけだか、その教室には黒電話が転がっていた。
 リサがそれに近づいて、黒電話を取る。

 リサ:「この電話だ。この電話で“花子さん”は私のケータイに掛けて来たんだ」
 高橋:「線なんて繋がって無ェじゃねーか」
 善場:「……きっと、その“花子さん”とやらは、これでリサのスマホに通話できる異能でも持っているのでしょう」

 リサは電話の受話器を耳に当ててみた。

 リサ:「あれ?……何か聞こえる。もしもし?もしもし?愛原リサです。“花子さん”?」

 リサは電話の向こうから何か聞こえるらしく、何とか交信を試みた。
 その間、栗原さんは制服ブレザーのポケットから数珠を取り出して手に掛ける。

 栗原:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」

 そして合掌して御題目と法華経を唱え始めた。
 すると、床に何かが浮かび上がって来る。
 切れた電話線の先から、まるで床に白いチョークで引いたかのような線であった。

 高橋:「凄ぇ!これが霊能力ってヤツか!?」
 愛原:「90年代のオカルトブームは、もうテレビでは再来しないだろうがな」

 今やインターネットが発達した時代、殆どインチキのオカルト番組ではすぐにネット上で炎上してしまい、テレビ局は二の足を踏んで、もうそのような番組を作らないのだそうだ。
 本当のオカルトは、そもそもテレビでは報道されない。
 この旧校舎がそうであるように。
 目の前にいるJK霊能者がそうであるように。

 栗原:「この線を辿っていけば、少なくとも“花子さん”のいる所に辿り着けます」
 愛原:「よっしゃ!さすが栗原さん!」

 私は大きく頷いて、早速白い線を辿った。
 それは廊下に続いていて、やはりというべきか、女子トイレに繋がっていた。
 “花子さん”は化け物から拠点の女子トイレに避難したのだろうか。
 夜は怪奇現象のオンパレードの旧校舎だが、今は窓から太陽の光が差し込んでいる。
 なので雰囲気的には、ホラーチックなものではない。
 夕方まではノスタルジックに感じるのではないだろうか。
 リサの話では、この旧校舎内で暴れた化け物は、夜が一番元気なのだという。
 ということは、昼間はどこかに隠れて眠っているのかもしれない。

 愛原:「ん?」

 線が少しおかしかった。
 というのは、最終的には女子トイレの中にまで線は続いているのだが、それが途中で消火栓の中を経由しているのだった。
 古めかしい屋内消火栓の中に何かあるのだろうか?
 私は消火栓の扉を開けてみた。

 愛原:「うん?普通の消火栓だな……」

 埃被ったホースやバルブハンドルが入っているだけだった。
 他に怪しいものは無い。
 ホースは昔ながらに、丸く巻いて収納されているタイプだった。

 愛原:「まあ、いいや。女子トイレに行ってみよう」

 女子トイレに行くと……。

 愛原:「うわっ、何だ!?」

 化け物というか、犬のような大きさの黒いピカチュウ……じゃなかった。
 ネズミがいた。

 愛原:「これが化け物か!?」

 私は咄嗟にハンドガンを取り出して、発砲した。

 ネズミの化け物:「キーッ!」
 リサ:「そうかもしれない!もう昼間だから、殆ど力が無いんだ!」

 リサも第1形態に変化して、ネズミの化け物を追う。

 栗原:「はーっ!」

 栗原さんが日本刀を抜いて、そのネズミの化け物を斬り捨てた。

 愛原:「こんなのが“花子さん”すら震え上がらせたという化け物なのか?」
 リサ:「今は昼間だからこの程度で済んだ。きっと夜になれば、もっと巨大化してもっと強くて凶暴になってたんだと思う」
 愛原:「ふーん……。それにしても相変わらずだね、栗原さん?左足が義足でも、踏み込めるものなんだね?」
 栗原:「このネズミのオバケ一匹倒せないと、兄弟の仇を取れませんからね」
 リサ:「“花子さん”、もう大丈夫だよ?ネズミのオバケは倒した」

 すると、奥から2番目の個室のドアが少しだけ開いた。
 そこから“花子さん”が出て来ることは無かったが、リサの方から行った。
 そこに“花子さん”はいなかったが、その代わり壁に血文字のような文字で、『ありがとう』とだけ書かれていた。

 愛原:「血文字でお礼言われてもなぁ……」
 リサ:「昼間だから“は花子さん”も出て来れないのかもね」
 愛原:「で、チョークの線はどこだ?」
 善場:「……そこ!」

 善場主任は一番奥の個室を指さした。
 私が隣の個室のドアを開けると、何と線は便器の中に続いていた。

 愛原:「はあ?!」

 汲み取り式トイレの中というと……。
 マグライトで照らしても、さっぱり中が見えなかった。

 善場:「これは汲み取り式トイレでしょう?ということは、この先にあるのは便槽とか汚水槽とかじゃないですか?」
 愛原:「それもそうですね」

 私達は便槽を探すことにした。
 ところがだ。
 旧校舎を出て便槽に向かおうとすると、既にそこに警察がいた。

 善場:「すいません。【政府機関名】の善場と申しますが、何かありましたか?」

 善場主任はデイライトの身分証ではなく、本当の政府機関の身分証を警察官に見せながら言った。

 警察官:「はい。捜査の課程で、この建物の便槽にも遺体が遺棄されているという疑いが出ましたので……」
 愛原:「ええっ!?」

 何ちゅう学園だ。
 新校舎には宿直室の下、旧校舎は旧校舎で便槽の中とは……。
 ……もしかして、あのトイレが封鎖された理由って、この便槽と何か関係があるのかも……?
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“私立探偵 愛原学” 「旧校舎の捜索」

2021-03-06 16:08:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月2日09:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 善場主任の予告通り、学校法人東京中央学園が家宅捜索を受けた。
 表向きは高等部新校舎の宿直室床下で見つかった白骨死体の数々に、ここで勤めていた教師が関わっていたことに関する容疑だ。
 しかしその警察機関と一緒に、善場主任の所属する機関も合同で参加していた。
 しかも善場主任達は、表向きの捜査内容(黒木源三の罪の数々)については警察に任せ、私達は旧校舎に向かっていた。
 今回は善場主任の依頼で来ている。
 警察と違い、善場主任の機関は必要とあらば民間人を捜査に参加させるなど、自由度の高い組織であるらしい。
 もちろん、そのことについては、何を今さらってところだが。
 その為、今回の善場主任の立場は隠れ蓑としてのNPO法人デイライトの職員ではなく、正式に所属している政府機関の職員としてである。

 善場:「リサ。あれから“トイレの花子さん”とやらからの電話は?」
 リサ:「無い」

 あの壁が崩れ、その中にいた『異形のモノ』が暴れ回ったということだが、旧校舎の外観としては特に何も変わっていない。

 部下A:「主任、鍵を持って来ました」
 善場:「よし。早速開けて」
 部下A:「はっ」

 善場主任の部下の黒スーツの男が、旧校舎1階正面玄関のドアの鍵を開ける。
 ドアを開けると、そこは異様な光景に包まれていた。

 愛原:「確かに荒らされてるな……」

 1階だけは教育資料館としてリニューアルされているのだが、まるでここに暴徒が乱入したかのように荒らされていた。
 不思議と窓ガラスだけは割られておらず、それ以外のガラスは割られてしまっている。

 リサ:「2階を見て行っていい?あの……“花子さん”が心配」
 善場:「あいにくだけど、壁の方を捜索する方が先よ」
 栗原蓮華:「凄い霊気だ。ここだけきれいになってて、少しだけ緩和されたはずなのに……」

 今回の捜査には栗原蓮華さんも参加している。
 手にはあの日本刀を持っていた。
 昨日は高等部の卒業式だったが、その前に旧校舎に侵入を試みようとしたヴェルトロのメンバーと思しき男が“花子さん”に焼身自殺させられてしまい、卒業式は急きょリモートで行われることになったそうだ。
 即ち、卒業生は各々の教室に入り、教室のテレビモニタを見る。
 校長や来賓などは放送室に入り、そこでカメラに映って、モニタ越しに挨拶を行う。
 保護者達は体育館に集まり、そこで大型スクリーンによるリモート卒業式の様子を観るというものだ。
 在校生達は放送室や音楽室に集まって、送辞を読んだり、卒業生を送り出す歌を歌ったらしい。
 分散して三密対策というわけだ。
 その翌日、捜査機関からの家宅捜索である。
 今頃警察は職員室や校長室、事務室などを捜索していることだろう。

 愛原:「あっ、壁が壊れてる!」

 例の壁のあった場所に行くと、確かに壁が崩れていた。
 その奥には空間があった。
 それを最初に覗き込むのは、善場主任の部下2人。
 手持ちのマグライトを使って、壁の奥を照らす。

 部下B:「主任!これは違いますよ!?」
 善場:「何が?」
 部下A:「情報ではこの奥に教室があるとのことでしたが……」
 善場:「この学校の教員、坂上修一教諭からの情報です」
 愛原:「それとも黒木の情報通り、地下への階段がありましたか?」
 部下B:「違います!トイレがあるんです!」
 愛原:「はあ!?」
 善場:「えっ?」
 リサ:「……あっ!」

 リサは何かに気づいて、天井を見上げた。
 天井には木製の天井板があるだけだったが、私もリサの気づいた内容に気づいた。

 愛原:「そうだそうだ。この辺り、2階のトイレの真下ですよ。“花子さん”が巣くう女子トイレの真下」

 普通、水回りは同じ位置に集約することが多い。
 その方が水道管などを短くすることができるので、工事費用やメンテが楽になるからだ。
 にも関わらず、この学校のトイレは2階は男女1つ、1階は男女2つあった。
 1つは職員・来客用トイレ、もう1つが生徒用トイレだ。
 ここには生徒用トイレがあったのだろうが、何故かもう1つ突き当りの階段の手前にトイレがあった。
 何でこんな面倒な造りになっていたのか。
 それは、元々あったトイレを塞いだ為と言えよう。
 何らかの理由でこのトイレを封鎖し、代わりに新しいトイレを造ったのだ。

 愛原:「全然違いますな!?」
 善場:「坂上教諭からも話を聞く必要があるようですね」
 高橋:「てか、先生……凄ェ臭いッスよ。何スかね……この臭い……」
 愛原:「汲み取り式トイレの臭いの他、ここに潜んでいたという化け物の臭いか?しかし、さっきから全然遭遇しないがな」
 栗原:「でも、私には少し見えます。恐らく、ここに潜んでいたという化け物に殺されたであろう、他の化け物の累々たる死体が」

 さすがは栗原さんは霊感が強いようだ。
 ていうかさ……俺達も気づこうよ。
 この壁のすぐ隣は男子トイレなんだよ。
 ということは、ここに女子トイレがあったってことじゃん。
 女子トイレだけ階段の前にあるっておかしくね?

 愛原:「リサ、化け物の気配は?」
 リサ:「今のところ無い」

 2日前の夜、この校舎内を暴れ回ったという化け物は今どこにいるだろうか?

 愛原:「ああ。確かに2階の女子トイレと同じ構造だ」

 とはいえ、この中は荒れ果てていた。
 5つある個室のドアや仕切りは壊されている。
 真っ暗なのは、窓が板で完全に遮蔽されているからだ。
 ここまでして、学園側は何を隠したかったのだろうか?
 この中には防空壕付きの教室、あるいは地下への階段があったという話を聞いていただけに、トイレだったというのは意外だ。
 すると、このことに関する話もまた別の内容ってことになるのではないか?

 リサ:「『3階へ行け』?どういうこと???」

 リサは“花子さん”を意識してか、奥から2番目の個室だった場所に真っ先に行って見た。
 するとそこには赤黒い文字で、リサが読み上げた落書きが大きくされていた。

 愛原:「3階?この校舎は2階建てだろうが。3階なんて無いぞ?」
 栗原:「よく怖い話で、いつもは2階建ての建物が、ある条件を満たすと3階が現れるなんてのがありますけどね。で、その3階に上がると2度と戻って来られないとか……」
 愛原:「まあ、“ベタな怪談の法則”ではあるかな……。ある条件か……」

 旧アンブレラ……いや、白井伝三郎は、どうやら日本国内のホラーを科学的に再現しようとしていたのかもしれない。
 “トイレの花子さん”や鬼女をモデルに造り出した生物兵器、日本版リサ・トレヴァーとか。
 妖怪“逆さ女”を具現化したリッカーの亜種、サスペンデッドとか。
 今、栗原さんが言った怖い話だって、旧アンブレラの施設にはありそうなものだ。
 例えばクランクを見つけ出して、それを挿し込み、グルグル回るすと天井から隠し階段が下りて来るとかな。

 善場:「2階を捜索してみましょう。もしかしたら、3階があるのかもしれません」
 愛原:「そうですね」
 善場:「3階というか、屋根裏部屋かもしれませんが」

 リサの話だと、“花子さん”は2階の教室に逃げた後、消息を絶ったらしい。
 このトイレに潜んでいた化け物も、2階まで追いかけて来たということだから、むしろ2階の方が危険かもしれない。
 私達はトイレ跡から出ると、2階への階段を目指した。
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